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2019年に詠んだ短歌まとめ

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(短歌一年目) 六錠が夜に溶けない六畳の国の王さま奴隷みたいだ
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短歌を始めて一年目、2019年の自選30首

2019年に詠んだ約150首から、30首を悩みながら自分で選びました。僕は今年から短歌を始めました。ぴかぴかの一年生。

上にあるのが古い歌(はじめたばかり)で、一番下が新しい歌(さいきんの)となっています。どう変化しているのでしょうか。

1~10首
肖像画暖炉にくべて君は去る結い髪の背を追えぬ霜月

二十四時ベンチのとなり柳の木許すみたいに揺れてるかぜに

通学路駆けて駆けて駆けて開けてクーラ

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短歌「ランプの精じゃない」 9首

短歌「ランプの精じゃない」 9首

「あの白衣、くるしい人がくるしいと言えない世界の構成員よ」

呆れたよ三つの願いを叶えてもまだ足りないと恨むだなんて

ころしてこ ろしてころして ころしたら 狂気が与党で正常である

いつもいつも殺して食って生きてきて無罪だなんて無罪だなんて

銀色のシートの一錠押し出して食い止めている夜空の沈下

人と人 結局合わないものなので殴り合うのが平常運転

そうじゃないひとをわたしはさがしてる睨んだ

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短歌連作「あの子のアカウントが消えた」 10首

短歌連作「あの子のアカウントが消えた」 10首

あのひとのアカウントただ消えてった このお弁当ただ冷えてった

受信箱ちらばる君の断片を手がかりにしてどこへも行けない

病床のふたりが交わすDMは秘密基地への夏のトンネル

一人暮らすきみの作ったおはなしの姉の姿はいつも哀しげ

その部屋のあいことばならクライユメひたひたのやみ混ざりたくなる

闇ゆえに繰り返される朝日から匿われてた変わらなくていい

うかんでる途絶えたままのやり取りがきゅうりの

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短歌「正義VSオレ」 8首

短歌「正義VSオレ」 8首

この国に徴兵制はないけれど運動会と飲み会がある

うちゅう人みたいなひとに捕まってうちゅう法にて裁かれている

他人をね尊重は出来ないってねあなた自分も他人なんだよ

正しきが正しく選り分け正しい世界 何故なのだろう何も無いのは

鏡見るたびに私が違っててただ私だけ知らない顔だ

施錠とか何度も確認ああそうかここはそれほど危険な場所か

五年ぶり地元の友の顔を見た 泳ぎ方まだ覚えてたのか

それも

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短歌 SNS 5首

短歌 SNS 5首

四人いて仮に談笑したとして気になるスマホでもみんなそう

インスタに君が自撮りを上げるなら僕は↓B裏面を行く

呼び捨てにすればいいってもんじゃないなれなれしいとなかよしは別

「強制」と強制力のない人の叫ぶ言葉がトレンドになる

誰彼も目を奪われてる対岸へ泳げないから穴掘ってます

短歌「術士の休日」 5首

短歌「術士の休日」 5首

公園の柵乗り越えた隅っこへ実は入れるオープンワールド

何歌い何が歌かはおれが決めるひとりカラオケ独立国家

サウナ室肉体を連れたたましいが皆一様に炎へ向かう

休日は夜行バスとか乗らずともページめくればいるかホテルへ

このマンガ引きのカットで人物のかおいろ薄くなってるみたい

短歌連作「木枯らし」 11首

短歌連作「木枯らし」 11首

救われた人々集う祝宴に入れるわけなく見ずに退室

救われた人々覆う悩みにすら手が届かずに見ずに退室

親不孝誰かの不興とは別に言わせてもらう私の不幸

あなたにも聞こえたのかもしれないねだからといって話していない

知らないよ僕に言っても仕方ない君と世界の窓口じゃない

あの夏の宿題未だ終わらずに居残りのまま通勤をする

自分じゃない人に擬態し上手い奴から救われる青春の擬似

君に似た人を探せば探

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短歌連作「うどん屋へ」 7首

短歌連作「うどん屋へ」 7首

玄関をくぐる前なら家モード歩き出せれば歩けるモードへ

黒服と白シャツ纏うからだ達凸凹(でこぼこ)隠し一つの車両

すれ違うグレーパーカー面影があの日に繋がりあおるアクエリ

交差点流れ圧し込む人の波きっと異国の岸から来てる

室外機錆びた自転車睦まじく囁き合うの秋の路地裏

うどん屋のねぎを刻みし包丁は三世代ぶん声を記憶す

異世界の空気を吸った翌朝は澄んだ陽ざしが光源の絵だ

短歌 雑音 4首

短歌 雑音 4首

駆動音ゴゴリカンカン「持って来い!」  朝からうるせえが人のいとなみ

本当に好きなものだけ「いいね!」する 宇宙(そら)の荒野をはだしで進む

ありがたいありありがたいアドバイスえがおウナズキぽいぽいぽいっと

「あ、失敗。」暗い部屋へと浮かび来るあなたの罵声(わたしのREC)

短歌 始業十分前 4首

短歌 始業十分前 4首

階段を上れば始業十分前 話題構えて戦闘準備

「本読むよ君らと同じ仲間だよ」進級してもひっかかってる

見下され見下しかえすジオラマをこころのへやでじっと見下ろす

すくわれたい夜がそだてたかみさまと君の生身が出会う夕焼け

【自己紹介代わりのエッセイも】
・創作活動に癒される毒親育ちの僕の感覚、そして成長
・去っていった後も根っこで支えられている長年の親友の話
・心を病んで崩れ落ちた学生時代のあ

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短歌 後悔 5首

短歌 後悔 5首

その怒りそのため息はその人の過去から来てて未来を塞ぐ

「失った信用戻すの無理っぽい。仕方ないから別垢(アカウント)いくね」

牛丼が早くて安くてうまいのはどこかで誰か泣いているから

青く見える隣の芝は絶対にリビングまでは見せないからな

ほんとうは勝ちたかったわけじゃない。愛されてたら負けられたのに。

短歌 飛べない鳥 5首

短歌 飛べない鳥 5首

砂場から教室を経てスーツ着て扉をノックえっここはどこ

保健室のあの子へ贈る寄せ書きは一人二行の隠蔽工作

ペンギンの泳ぐ姿に惚れたのにいつしか彼女を空に描いた

おうじさま塔のひめさますくいだすそんな話に僕らはいない

きみが姫ならぼく王子にならなくちゃそれよりちょっと舞台降りない?

短歌七首 「通学路駆けて駆けて駆けて開けてクーラー麦茶飲み干しゴール」他

短歌七首 「通学路駆けて駆けて駆けて開けてクーラー麦茶飲み干しゴール」他

通学路駆けて駆けて駆けて開けてクーラー麦茶飲み干しゴール

答案へ向かう群像支配する時計の針とクーラーの音

聖域の百合に這い寄る黒き蔦 彼の不在と天使の怖れ

陽光の世界を追われ屋根裏の二人分け合うホットミルクティー

「石投げよ 罪無き者は」主は言った 罪人のみが石持つネットw

イカロスのつばさも舞うよ信じれば みんなで飛ばそう!(虚ろな目して)

いつぶりか弾ける笑顔我に向き視線の先を再度

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短歌 八首 『霜月の肖像』

短歌 八首 『霜月の肖像』



肖像画 暖炉にくべて 君は去る 結い髪の背を 追えぬ霜月

窓は雪 毛布引き寄せ 静寂に 零れた青を 聞いて聞かないで

凛とした 瞳と笑みと 黒髪と 手首の傷が たまらなく好き

アルバムの 中の希望が 明日のふり して目の前に 立ち塞がる夜

六錠が 夜に溶けない 六畳の 国の王さま 奴隷みたいだ

僕たちは いつからだろう 囚われた 欠乏・願望 見落とす配慮

二十四時 ベンチの隣 柳の

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