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誰かとかかわること。

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軋轢もあれば葛藤もある。 そんなときは、書いてみる。
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#エッセイ

幸不幸。

幸不幸。

昔から、「◯◯のようになりたい」という願望がない。
キラキラしたアイドルや、雑誌の表紙を飾るようなファッションモデル、憧れの先輩。
素敵だと思える人たちには数多出会ってきたけれど、彼らそのものになりたいというほどの思いに駆られることはなかった。

彼らと同じ服を纏ったところで、それは素敵な人の真似事でしかない。
彼らの振りを真似たところで、決してなりきれるわけでもない。
ずっとそう思ってきた。

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贈り物の蓋を閉めるまで。

贈り物の蓋を閉めるまで。

ここ数年、贈るにしても貰うにしても、誕生日プレゼントというものが即座に思い浮かばなくなってきている。
子どもの頃はあんなに次々とあれが欲しい、これが欲しいと言えたのに。
誕生日が嬉しいか否かも、なんだか揺らぎつつある。

しかしやはり、遠く離れた友人になにか、とは思う。
あの和菓子は去年送ったし、クッキーを食べたくなる季節でもない。
かといって、雑貨なんておよそ見当違いなものを送ってしまいそうで。

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なりすます言葉

なりすます言葉

「お互いさま」という言葉がある。

こちらに対して相手が遠慮したとき、「お互いさまですから」とひと声かける。
誰かが失敗したことを悔やんでいるとき、「お互いさまです」と言って手を差し出す。
そんな「お互いさま」にはきっと、相手を安心させたいと思う気持ちが入っている。

誰かと言い争ったときの「お互いさま」。
自分が正しいと思っているときの「お互いさま」。
これはよくない。
はたして本当にお互いさま

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混ざらざるもの

混ざらざるもの

なぜだろう。
人が集まる場所に身を置いていると、いつの間にか自分が自分に向ける評価が下がっていくことに気づく。
交わす言葉も、ひねり出す言葉も増えているのに、「よくできた」と自分に向けるものが一向に増えていかない。

家族、学校、会社、友人の輪・・・。
人が集まれば、マーブリングのようにいろいろな人の思惑や、感情や、意思が混じり合う。
その中で自らの色を流し続けることができるとしたら、それはとても

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pattern of life

pattern of life

懐かしい顔に会う。
この街に来て、はじめて働いた店の奥さんだった。
数年ぶりだろうか。
すこしお年を召したと感じたけれど、変わらぬご様子で、なんだかほっとする。

年を取ると丸くなる、と言う。
それはおそらく、その人がどんな時間の中で年を重ねたかにもよるだろう。
大切な人に囲まれて、穏やかな時間を過ごし続けた人はきっと「丸くなる」。
現役の頃、毎日キビキビと店を仕切っていた奥さんの顔を思い出しなが

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言いたいことは梱包済み。

言いたいことは梱包済み。

誰も悪くないけれど、結果的に誰かを悩ませてしまうことがある。
じつは悩んでいるのだと打ち明けられたとき、申し訳なさと、もっとはやく言ってくれたら、という気持ちで、なんともいえず恥ずかしくなる。
正直、自分にはどうしようもないことでも、先回りしてこちらから手を打たなかったことが非に思えてくるのである。
もちろん、そんなことは無理な話なのだけれど。

残念ながら人は多くの場合、言葉にしなければ誰かに自

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