見出し画像

pattern of life

懐かしい顔に会う。
この街に来て、はじめて働いた店の奥さんだった。
数年ぶりだろうか。
すこしお年を召したと感じたけれど、変わらぬご様子で、なんだかほっとする。

年を取ると丸くなる、と言う。
それはおそらく、その人がどんな時間の中で年を重ねたかにもよるだろう。
大切な人に囲まれて、穏やかな時間を過ごし続けた人はきっと「丸くなる」。
現役の頃、毎日キビキビと店を仕切っていた奥さんの顔を思い出しながら、すっかりやわらかなおばあちゃんの表情になった彼女の時間に、思いを馳せてみる。

あたり前すぎることだけれど、自分の時間とは別のところで、誰かの時間も常に流れている。
家族であっても、友人であっても、恋人であっても。

自分はこれから先、どれだけ丸くなっていけるのか、正直あまり自信がない。
堅いものの角を丸めるのは大仕事だ。
頑なな自己であればあるほど、丸くはならぬと息巻いてしまう。
これほど短い人の一生のうちに、自らの角を丸めていける人は、きっといい時間に身を置いている人なのだと思う。
それを為すのはその人柄。

人柄とは不思議な言葉だけれど、とても言い得ている。
人の柄。
それぞれ違い、そして、それぞれを表す。

はてさて、自分はどんな柄を呈しているのか。
着心地のいい柄を纏い続ければ、角もいつかはなだらかになるだろうか。









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?