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旅と建築探訪記

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#建築探訪

【建築】集まれ! ヘルツォーク&ド・ムーロン!

【建築】集まれ! ヘルツォーク&ド・ムーロン!

それはカリフォルニア・ナパにワインツアーに行った時だった。
建築好きの何人かが、販売も試飲もしておらず建物見学も受け付けていないワイナリーに立ち寄って写真を撮り始めたのだ。
一応私も撮ったが、当時建築に興味の無かった私は「早よワイン飲みに行こう!」と思うと同時に、「こんな遠くからしか見えないのに、建物見て何が面白いのだろう?」と不思議だった。

この出来事が建築に興味を持つきっかけだった。
そして

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【建築】インドの気候風土に結びついたアーメダバード繊維業会館(ル・コルビュジエ)

【建築】インドの気候風土に結びついたアーメダバード繊維業会館(ル・コルビュジエ)

インド西部にあるグジャラート州アーメダバード。
都市圏人口850万人を超える大都市だが、それでもインド国内では第5位である。15世紀からイスラム王朝により形成され始め、現在ではインドの他の都市同様ヒンドゥー教が主流だが、市内には古くからのモスクも残っている。

また世界遺産にも登録されている旧市街には今も多くの人々が住み、商い、活気のある町となっている。一般的に"旧市街"というと小綺麗に整備された

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【建築】ピーター・ズントーは投入堂を見たのか?

【建築】ピーター・ズントーは投入堂を見たのか?

いつの時代も人間は少し無茶をしたがる生き物だ。挑戦とでも言おうか?
建築においても、孤島、険しい山の上、海の中など「何故そんな場所に無理してつくった?」と問いたくなるものが古今東西・世界各地にある。

日本では古来より山を修行の場とする山岳信仰がある。また霊山として、山そのものを御神体や崇拝の対象としている寺院や神社も少なくない。

霊山は全国にあるが、鳥取県では大山が有名だろう。

その大山から

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【建築】5月のそよ風が吹き抜けるヒアシンスハウス(立原道造)

【建築】5月のそよ風が吹き抜けるヒアシンスハウス(立原道造)

アーティスト・今村遼佑さんの個展に足を運んだ。"日常の暮らしの中でふと気付く感覚"を作品に反映している作家さんだ。

その作品の中で、数枚の絵に目が留まった。

抽象画なので何が描かれていのかは分からなかったが、新緑のような色遣いはとても爽やかな気持ちにさせてくれた。添えられた解説によると、詩人・立原道造が結核で入院していた時、お見舞いに来た友人に語った言葉にインスパイアされたとのことだった。

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【建築】小牧市中央図書館(新居千秋)にルイス・カーンを見た!

【建築】小牧市中央図書館(新居千秋)にルイス・カーンを見た!

ネットやスマホが発達して調べ物が容易になったせいなのか、あるいは単に自分が本をあまり読まなくなったせいなのか、最近は図書館に行くこともほとんど無くなった。いや、行くこともあるが、目的は建築探訪ばかりだ。それらに共通しているのは素人が見ても特徴のある図書館だということ。

このような図書館は、時々SNSでネガティブに話題になることもある。「本棚が高くて手が届かない」とか、「吹抜空間は豪華すぎる」とか

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【建築】森山邸(西沢立衛)から"快適"とは何かを考える

【建築】森山邸(西沢立衛)から"快適"とは何かを考える

住宅における"快適"とはなんだろう?
もちろん人それぞれだし、快適性にはこだわりがなく、「寝られればOK」「家賃優先」「場所優先」という人もいるだろうが、それはそれとして、今回は住環境における"快適"を考えてみた。

都内某所。
ごく普通の民家が立ち並ぶ一角に、その住宅、いや正しくは集合住宅はある。

森山邸

間違いなく日本の住宅建築の歴史においてその名を残す建築である。

わざわざ説明するまで

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最高のアトリウムを探せ!

最高のアトリウムを探せ!

アトリウムといえばガラスで覆われた自然光を取り入れた開放的な大空間、その多くはパブリックなスペースだったりするが、起源はローマ時代の住居において、玄関奥に配置された天窓のある広間のことらしい。
現代のアトリウムの中には、商業主義的というかドヤ感が鼻につくアトリウムもあるが、内にいながら外を感じさせる空間もあって、個人的には好きである。

ルッカリー(フランク・ロイド・ライト)オフィスビルのアトリウ

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【建築】内か? 外か? それが問題だ/ジェフリー・バワの建築

【建築】内か? 外か? それが問題だ/ジェフリー・バワの建築

建築の手法の一つに「内(ウチ)と外(ソト)を曖昧にする」というものがある。色々な考え方があるが、屋内に居ながら、周りの景観とか光、風、空気といった屋外の要素をいかに取り入れるか?ということだと思う。

そもそも伝統的な日本建築は、内と外の境界は曖昧であった。

ただし夏は暑く冬は寒く、また雨も多い日本においては、断熱性の乏しい従来の日本建築は快適性に欠ける部分もある。

ところで以前、リゾートホテ

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【建築】本がないプリンストン大学ルイス科学図書館(フランク・ゲーリー)

【建築】本がないプリンストン大学ルイス科学図書館(フランク・ゲーリー)

「我ながらこんな所までよく来たなあ」と思う建築がある。遠いとか交通の便が悪いということとは別に、一般的には誰も、おそらくは建築ファンでさえも関心が薄いであろう建築のことだ。
フランク・ゲーリーの設計によるプリンストン大学の図書館もその一つである。フランク・ゲーリーとプリンストン大学。どちらも有名であるが、この組合せの建築をわざわざ訪れる人は何故か少ないようだ。

前夜、マンハッタンのバスターミナル

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【建築】 Would you like 天窓 ?

【建築】 Would you like 天窓 ?

採光や換気を目的として取り付けられる「天窓」
一般的に「窓」の評価といえば、デザインであったり、そこから見える風景の切り取り方がポイントになる。しかし「天窓」の場合は、光の落とし込み方がポイントになるのではないか? 少なくとも私はそう思う。
そして"落ちる光"こそが空間の価値をさらに高めるのだ!

パリッシュ美術館(ヘルツォーク&ド・ムーロン)ロングアイランドのアーティストたちがアトリエとしていた

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【建築】日陰が心地良い木陰雲(石上純也)

【建築】日陰が心地良い木陰雲(石上純也)

九段下の交差点から靖国通りを上り、靖国神社大鳥居の手前を右手に入ったところにある旧山口萬吉邸。

昭和2年(1927年)に建てられ、現在は会員制ビジネス・サロン「九段 kudan house」となっている趣のある邸宅だが、今回はその庭園につくられた”期間限定”のパーゴラを訪れた。

パーゴラ(Pergola)。
庭や軒先などにあって、つる性の植物を絡ませる格子状の棚のことだ。日陰棚とも呼ばれるそう

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【建築】建築と自然が最高に調和した落水荘(フランク・ロイド・ライト)

【建築】建築と自然が最高に調和した落水荘(フランク・ロイド・ライト)


Fallingwater
なんと美しい名前だろう!
落水荘
直訳なのに、漢字も読み方も美しい!

フランク・ロイド・ライトの最高傑作との評価もある落水荘は、1936年にペンシルベニア州ピッツバーグのデパート経営者であるエドガー・J・カウフマンの週末の別荘としてつくられた。

ピッツバーグは鉄鋼業を中心として1960年代まで発展してきた都市だ。落水荘が建てられた1930年代は正に鉄鋼業が盛んであっ

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【建築】“グリーン”なミュンヘン・オリンピック公園

【建築】“グリーン”なミュンヘン・オリンピック公園

選手のいないフィールド、空っぽの観客席。

ゲームが行われていないスタジアムには不思議な魅力がある。エキサイトした試合、時に歴史的な名試合が行われたであろうそのスタジアムには、まだ選手や観客のエネルギーが残っているようにも感じられる。

それはミュンヘン・オリンピック公園も同じであった。

ミュンヘン・オリンピック公園(Olympiapark)は、1972年に開催されたオリンピックのための競技施設

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【建築】階段! Stairs! 階段!(Part 2)

【建築】階段! Stairs! 階段!(Part 2)

ハリウッド映画は、シリーズものやリメイクなど安易な企画も多い。確かにその通りだ。私も先日「ゴジラvsコング」を観たばかりだ。
でも安易さなら俺も負けないぜ!とばかりに、階段企画のPart 2!

オンタリオ美術館(フランク・ゲーリー)

前回も紹介した美術館。館内の階段に比べて“ひねり方”が少ないが、屋外に飛び出すことでそのマイナス分を補っている。それにしてもゲーリー、相変わらず無茶をする。 <参

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