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【建築】 Would you like 天窓 ?

採光や換気を目的として取り付けられる「天窓」
一般的に「窓」の評価といえば、デザインであったり、そこから見える風景の切り取り方がポイントになる。しかし「天窓」の場合は、光の落とし込み方がポイントになるのではないか? 少なくとも私はそう思う。
そして"落ちる光"こそが空間の価値をさらに高めるのだ!


パリッシュ美術館(ヘルツォーク&ド・ムーロン)

ロングアイランドのアーティストたちがアトリエとしていた"納屋"をモチーフとした建物。出来るだけ自然光の下で鑑賞する工夫がされている。 <参照記事>

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ビーンズドーム(遠藤秀平)

兵庫県の防災公園にあるテニスドーム。コート8面に加えて、観客席を備えたセンターコートもある。災害時には防災救援の拠点となるだけあってデカイ!

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みんなの森 ぎふメディアコスモス(伊東豊雄)

市の中央図書館。格子状に組んだうねった木造屋根が特徴で、所々に「グローブ」と呼ばれる天蓋が設けられている。これが絶妙で、見通しの良いオープンなスペースなのに、落ち着いた部屋の中にいるような感覚にもなる。

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MITチャペル(エーロ・サーリネン)

窓が無く薄暗い礼拝堂だが、その中で天窓からの光により祭壇が浮かび上がる。金属片の彫刻と白い台座がさらにそれを強調している。サーリネンによる素晴らしい建築。さすがMIT! <参照記事>

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オスロ・ガーデモエン空港

木のぬくもり、美しいデザイン、自然光。空港という大きな建物ながら、ちゃんと北欧建築を実現している。設計チームは世界的には有名ではないかもしれないが、もっと評価されるべき建築だ。

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豊田市美術館(谷口吉生)

メインの吹き抜け展示室は、良くも悪くも展示室が作品を選ぶ。展示室が作品を引き立て、また作品が展示室を引き立てる。建築家とアーティストの勝負の場であり、お互いが昇華していく場でもあるのだ。 <参照記事>

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アストルップ・ファーンリ現代美術館(レンゾ・ピアノ)

展示室でありながら、透明度の高いガラスを使っているところがレンゾ・ピアノらしい。もちろんルーバーで明るさを制御できる。この時の企画は村上隆展。やはり海外でも人気なんだなあ。 <参照記事>

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ローマ遺跡発掘シェルター(ピーター・ズントー)

ズントーの初期の作品。その名の通り遺跡を保護するための小屋であるが、なぜ壁は通気性の良いルーバーなのだろう? なぜ天井にトップライトを設けるのだろう? その必要性が分からない。しかしズントーなので全部許す!

ローマ遺跡発掘シェルター_11


光の美術館(安藤忠雄)

階段特集でも紹介したが、この建築本来のテーマは"光"。照明はなく、スリットからの光のみで作品を鑑賞する。光や影が移ろいでいく様子も作品の一つである。

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ディア・ビーコン

元はナビスコの工場であった建物を現代美術館にコンバージョンした。従って天窓は一昔前の工場の風情がある。一展示室一作家という贅沢な構成だ。ちなみにこの一連の作品はアンディ・ウォーホル。

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台中国家歌劇院(伊東豊雄)

オペラハウスのホワイエ。コンセプトは"音の洞窟"。これだけ天井が高いと照明計画はどうなんだろう? 昼は綺麗に光が落ちているが、夜の様子も見てみたい。

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キンベル美術館(ルイス・カーン)

個人的には最高の天窓! かまぼこ型の丸いコンクリート屋根にスリットを入れて、そこから光を天井に反射させ、展示室を柔らかい光で満たす。奥に見える壁と天井の間のスリットにも注目してほしい。

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東京カテドラル聖マリア大聖堂 (丹下健三)

キンベル美術館も最高だが、こちらも最高! 私が紹介するまでもない名建築中の傑作である。圧倒的かつ神聖でもあるこの空間は、ヨーロッパのゴシック建築にも決して引けを取らない。

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プリンストン大学ルイス図書館(フランク・ゲーリー)

様々な色使い、建材、形状が入り混じったゲーリーらしい建築。MITのRay and Maria Stata Centerのスチューデント・ストリートにも似ている。そこでも書いたが、いかにも大学といった雰囲気があり、ただ歩くだけでも楽しそう。

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プリンストン大学アートセンター(スティーブン・ホール)

あまり有名とは言えない建築だが、階段特集に続き3度目の登場。意外に自分のお気に入りな建築なのかもしれない。こちらは学生のラウンジ。階段は凝っていたが、天窓は正統派であった。

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タリアセン・ウエスト(フランク・ロイド・ライト)

ライトの自邸兼アトリエ、そして彼の建築学校でもある。主に冬場に使われた。アリゾナの乾燥した砂漠に建てられ、強い日差しを避けるため天井はシェードで覆われているが、居心地はとても良い!

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ルーヴル・ランス(SANAA)

展示室全体がルーバー付きのトップライトになっている。つまりここも自然光(+スポットライト)で鑑賞する。自然光での鑑賞というのは、現在の美術館建築におけるキーワードなのかもしれない。

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アカデミア書店(アルヴァ・アアルト)

天窓と言えば、やはりアアルトは外せない。本を開いたような形状がユニーク。
2階には、映画「かもめ食堂」(2006)に登場するカフェ・アアルトもある。私はそれを知らず、1階にあるスタバで普通にコーヒーを飲んでしまった...。

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ロンシャンの礼拝堂(ル・コルビュジエ)

コルビュジエの傑作であるが、注目はこの小さな祭壇。天窓からの光が、静かにその存在を示している。そもそもこの礼拝堂内部は小さな開口部からの光とロウソクの灯りのみで満たされた空間である。まさに陰翳礼讃の世界だ。

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神言神学院(アントニン・レーモンド)

カトリック司祭や宣教師を養成する学校の礼拝堂。レーモンドは多くの教会を設計しているが、木造でもコンクリートでも本当に上手い。レーモンドはライトの下で学んでいたが、その作風は明らかにコルビュジエの影響を受けている。(年も近いし、日本とフランスの距離もあるので、本当のところは分からないが)

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こうして見ると、天窓にも天井全面ガラス型、スポットライト型、直接採光型、間接採光型、シェード・ルーバー設置型など、その部屋の機能や求める雰囲気によって様々な方法があることが分かる。
つまり天窓をどのように設けるかということは設計者の腕の見せ所(←建築探訪が趣味である私のお気楽な意見)でもある。

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