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2022年1月の記事一覧

ドングリに執着する男

ドングリに執着する男

2歳の息子は前歯が出ていて、ほっぺたがぷっくりしていてリスっぽい雰囲気がある。

本人もそう感じているのかどうか分からないが、ディズニーのキャラクターのチップとデールに変に親近感をもっているようだ。

絵本を読んでいてチップとデールの絵が出てくると必ず「これ、わたち(私)」と指をさして伝えてくる。(なぜか息子は自分のことを「わたち」と言う)

もしかしたら、息子の前世はリスであり、まだ人間に生まれ

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短編小説 「たよりない息子」

短編小説 「たよりない息子」

18時40分。
駅前の時計台。
この時計台は3メートルに満たない物で柱は黒く、文字盤は赤く光っている。
昼間にはそこに座り込むホームレスが常駐しているがこの時間になれば大体何処かに消えている。
ぼおっと光る赤が不気味でならない。
今日はマッチングアプリで知り合った女性と初めて会うのだ。
待ち合わせ場所を考えた時に、一番に思い付くのはいつも自分が嫌いな所。
良いものよりも悪いものの印象の方が僕には強

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人生で5度読む小説に出会ったことがあるだろうか。

人生で5度読む小説に出会ったことがあるだろうか。

小説を読んでも読み返すことは、そこまで多くはない。

一つの物語から学ぶことや感じることはたくさんあるが、まだ読んだことのない本を手にとり、次の物語を読むことで、新たな感情が生まれることの方が多い。

それはたいていの場合、同じ作家の作品だったり、本屋で注目されている話題作であったり、古本屋でたまたま手にとった100円の小説だったりする。

きっとみんな新たな物語を求めている。

ただ最近は過去に

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倒れた猿

倒れた猿

10月下旬、僕はハイエースを運転して、オートキャンプ場に向かっていた。

高速道路を降りて、現地のスーパーで買い出しをしたあと、のどかな田舎道を走る。

景色のいい場所に行って車中泊をするのが、近ごろの楽しみとなっていた。

よく晴れた日で、空は青く、日光を受けた山は鮮やかな緑色をしている。

その緑を分断するように延びる灰色の上を、心地いい速度で進んでいく。

信号機もほとんど見なくなり、田舎の

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鳴かない鈴虫と飛ばない蝶

鳴かない鈴虫と飛ばない蝶

鳴かない鈴虫は、飛ばない蝶に、出会った。
うろこ雲が広がる空の下だった。

「なんで鳴けないの?」蝶が聞いた。
「鳴けないんじゃなくて、鳴かないんだ」

「なんで飛べないの?」鈴虫が聞いた。
「飛べないんじゃなくて、飛ばないのよ」

「必要ないからね」とふたりは、声を揃えた。

鳴かない鈴虫は、飛ばない蝶と、友達になった。

空が高くなって、風が吹く日、飛ばない蝶は、鳴かない鈴虫を訪ねた。

天鵞

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