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保険適用外の学び

保険適用外の学び

 土曜日、歯科医院へ行った。徒歩圏内かつネット予約ができるからという、何とも当たり障りのない理由で選んだ医院だが、「自分は今6才の容姿をしているのか?」と疑ってしまうくらい、毎回 やさしい しんさつ をしてくれる。何よりも歯科衛生士さんの安心感はすごい。はじめの「お待たせいたしました」という挨拶、その後の「あれからお具合はいかがですか」、診てもらっている最中の「よく磨けていますね」。ひとつひとつの

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踊り場のトンボ

踊り場のトンボ

 中学生のとき、理科の参考書に出てきたトンボの画像。顔のどアップだった。まあるくて大きくてぎょろぎょろとした、複眼。はじめは何が写されているのか分からず、しばらく見つめていたが、理解したとたん、体が震えて寒気がした。鳥肌がとまらなかった。あ、コレ本当にダメなやつ、と思って、上から大きな付箋をはり、見えないようにしたことを覚えている。なぜそれほどまでに「嫌」で、こんなにも「拒否」してしまうのか、自分

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水と文体

水と文体

 米の味がよく分からない。お米県生まれお米県育ちのため、上京すれば「こっちのお米おいしくないでしょ〜」と言われることもあったが、へへ…くらいの返ししかできなかった。相手が求めている(思い描く)リアクションは「いや、びっくりしました〜全然違うんですね〜」とか「やっぱり地元の方が美味しいですね〜」とか、前提として『お米県の方が美味い』という感覚のうえに成り立つ。しかし、その前提すら持ち合わせていない私

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12月のパラドックス

12月のパラドックス

 師走の候、ミヒャエル・エンデの『モモ』を読みました。これまでは積読山(つんどくやま)のいちぶだったのですが、「今だ!!」という天啓(という名の焦燥)により、ようやく腰をあげました。

 一読を終えた正直な感想は、むずかしかった、です。むずかしかった、ということは、これから咀嚼する余地がむちゃある、ということですので、すなわち積読山は、読む前よりも5冊分ほど高く積みあがったわけです。さて、積読山の

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ひとりたび

ひとりたび

 夢をみた日は得した気分で目が覚める。パラレルワールドにアクセスできた! みたいな。小説にのめりこんだあとのように、現実のほうはすっかり置きざりのまま、別世界の時間を過ごしてきたことで、リフレッシュできた感じがする。

 物語にひたっているときの幸福のゆえんは、現実とは異なる時間軸で、己以外の主観を追体験できる点にあると思う。それに、もとの世界に戻ったあと、「日常もいち物語でしかないんだな〜」と、

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ハニーミルクラテの冤罪

ハニーミルクラテの冤罪

 タリーズでハニーミルクラテを飲んだ。ただの気まぐれだった。ソイラテを愛してるので平素は迷わずそれを選ぶのだが、なんとなく文字列に惹かれて注文。これがめ〜ちゃ美味しくて、どハマりした。てっきり「はちみつ風味」のミルクラテかと思っていたが、ちゃんと「はちみつ」の入ったミルクラテだった。ストローの挿しどころによっては、トロッとした「はちみつ」をもろに味わえる、いわゆる★☆★甘味スペシャルゾーン★☆★が

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夢路アラート

夢路アラート

 赤信号になれ、と強く望むときがある。たいがいそれは夜で、目的地は家であることが多い。体は疲れているし眠たいのに頭のなかで「何か」がぐつぐつとうごめいているような感覚。このまま景色の動かない部屋にこもってしまったら、その「何か」に存在ごと飲みこまれてしまう気がするのだ。

 21時を過ぎていた。イヤホンをさして今月つくったプレイリスト「2206」をタップすると、Vaundyの『恋風邪にのせて』が流

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いろはすの目

いろはすの目

 会社は静かだ。足音さえも気をつかってしまう。常に響いているのは、キーボードの音。かたかたかたかたぱしん(エンター)。だからちょっと重ためのゴミをゴミ箱へ入れるだけで、袋がカサァ……と、うるさく感じる。そんな環境で、私はいろはすをつぶすことができなかった。昨日、そのまま捨ててしまった。そしてふと、違和感をもった。

 悪いことをした気分。

 深いゴミ箱のなか、ほかのペットボトルたちの上に転がった

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リズミカルな生

リズミカルな生

 山に囲まれ海はすぐそこ、そんな場所へおとずれた。古い家屋がならぶ道、目線を横へずらせば小川がのびている。目的地はとくに決めていなかったので流れにそってゆらゆら歩いていると、奥に佇んでいたのは寺院。見上げる山門は、ひっそりと、しかしたしかな存在感でかまえている。門前には「時宗」の文字があった。ひどく気になる。

 足を踏み入れた。とたん不可思議なこころもちになった。「自分」がぐんと拡張されたような

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山のカオ

山のカオ

 学校までの道中、バスに揺られる30分。窓から眺める景色が好きだった。背の高い建物はなく、季節の色も、その日の天気のぐあいも、肉眼で受けとることができた。中高6年間、ずっと同じ道路を走っていたはずだが、ふしぎと飽きを感じることはなかった。

 ある日、雲間から差した光が、そびえる山を照らしていた。天から注がれる白いそれは、水の流れのように見え、山はこうして水分補給してるのかと思った。また別の日。同

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一ぱい

一ぱい

 ひとりの時間がふえてから脳内で会話しすぎて、もうひとりいる…みたいな感覚が強くなっている。相手(自分)の声がはっきりしてきて、これ大丈夫か?と思いながら、なぜ心配する必要があるのか?とも思う。やっぱり「ひとり」の定義が分からない、精神に「ひとり」の線を引くのは不可能かもしれない。体のない世界だったら、「1」って生まれなかったのかな。そりゃそうか、境界がないわけだから、生まれようがないか。いやだと

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こと葉

こと葉

 なによりも執着あるのに、避けていた話題なんですけど、私は文章を書くことがむっちゃ好きです。書いていると幸せだから今死んでもいい、でもまだ書きたいことあるから生きていたいと、相反する欲望を、同時に抱えてしまうくらい好きです。だからこそ、言葉について文章について踏み込もうとすると、どきまぎしてしまう、意識しすぎて距離感が分からない、思慕かよ。

 どんな言葉を選ぶか? 発するか? 言葉をどう編んで文

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外観モードの選択

外観モードの選択

 最近、あいほんさんの外観をダークに設定した。このnoteも、黒地に白で映っている。文字だけがスン…と浮かんでくる感じがして、とても好きです。見やすさもあるけど、それ以上になんかこう、肌に馴染む。画面のたたずまいが、自分と相性いいのか、しっくりくる。

 ポルノグラフィティの曲で何が好きか考えた。音のない森・シスター・EXITが思いつく。ミスチルで初めて好きになったのは、掌だった。スピッツはホタル

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信号機のお告げ

信号機のお告げ

 どかどか降ってくる雪にあらがいたくて、わざと上を向いたら、赤色をしていた。次の瞬間、ぱっと緑色に変わった。信号機の光を、きれいなもの・美しいものとして見てこなかったが、雪を彩る光として捉えた瞬間、こんなにも印象が変わるのかとびっくりした。ふだんは交通整備のための、頭で認識する存在だった。けどこのときは、素直に「わっきれい」って心で認識していて、琴線に触れた。雪のなか帰るのも楽しいなと思えた。

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