同行二人

昨年から二年にわたって、四国の聖地を巡っている。

主に讃岐=香川県の寺社や古跡が多いのだが、歴史の刻まれた場所を巡り、そこにまつわる人物たちの思いを感じ取り、また、お遍路文化がいまだに根づく四国という土地で、遍路や地元の人と話をしてきた。

以前、ぼくは四国遍路という文化があまり好きではなかった。それは、何かに縋りついて、自らが救われたいという他力本願的な臭いがしたためであるし、また、若い頃好き

もっとみる

五番札所 地蔵寺 2

目次

 ジョンは機動寺院によって犠牲になった人々の合同葬儀を行った。
 場所は野外、赤い夕焼けを天井に、遺体には棺も無く、ゴザの上に白い布を被せたものであったが、道具だけはレイジが立派なものをこしらえてくれた。ジョンはやはりレイジの用意した木魚(ロボットアームではない)を叩きながら経を読み、人々が焼香を行った。
 布を被せられた遺体を前に、ジョンの心が涙で滲む。彼らは人生の道半ばで、足の生えた寺

もっとみる
徳が高まった!
2

五番札所 地蔵寺 1

目次

 大日寺の本尊を斬ったジョンは直ちに昏倒した。
 極楽寺を破戒した直後に、それを操縦して金泉寺と大日寺を破戒したのである。常人ならば過労死しても不思議では無かった。
 その後、ジョンは村人の手で安全な家屋へ運ばれて、手厚い看護を受けた。ジョンはそれから一日、目を覚まさなかった。
 そして一人、心の内で懊悩していたのである。

「うおおおおおおおおおおお!」
 暗闇でジョンは一人、叫び声を上

もっとみる
徳が高まった!
3

三番札所 金泉寺 および 四番札所 大日寺 2

 金剛杖が発した言葉を、紅が理解するのに数秒を要した。
「再起動……操縦……」
 紅は濡れた髪をかきあげる。
「そんなことが可能なのか?」
「仏理的には」
 金剛杖が説明する。
「まず機動寺院のエンジンである本尊だが、それは納経帳に梵字として封印した本尊で代用できる。本尊に由来する能力も使えるはずだ。経典は使わずに、ジョンが経を唱えて機動寺院を操縦する。安心しろ、これは機動寺院本来の運用方法に近い

もっとみる
徳が高まった!
2

四国大戦の用語5
ロボットアーム『木魚』
機動寺院の念料となる人々を捕まえるマジックハンド。よく見ると先端に魚の意匠が施されている。木魚とは本来、僧侶が読経する際に打ち鳴らす仏具である。眠気覚ましの効果があり、魚を模しているのはまぶたの無い魚は眠らないという迷信に由来する。

徳が高まった!
3

四国の思い出~セルフ炎サービス~

俺はnoteで四国大戦を連載している。

四国大戦は破壊僧(破戒僧ではなく)、ジョン・田中と足が生えた八十八の人食い寺院との戦いを描くブディズムパンク・アクション小説だ。

俺がこんな小説を書き始めた理由は以下の記事で述べたが、単純に言うと四国遍路をしたからだ。

今日は新規読者の獲得のためにもその四国の思い出を少し書きたい。

君はセルフ炎サービスを知っているか?

四国遍路には様々なルールがあ

もっとみる
徳が高まった!
6

三番札所 金泉寺 および 四番札所 大日寺 1

目次

 ジョンの体が大麻山の斜面を滑り降りるように駆けた。その様子は足腰の強い若者も思わず嘆息してしまうほどのものだ。極楽寺を破戒し、疲れ切った彼の体を動かすのは、機動寺院に囚われた人々に対する慈悲である。
 降り注ぐ雨が極楽寺の戦闘に際して負った火傷の痛みを緩和していた。
 風はこちらに吹いている!
 彼方より地響きを轟かせながら迫りくる二つの機動寺院……金泉寺と大日寺に対してあくまでもジョン

もっとみる
徳が高まった!
2

戦大国四:逆打ち 1

 時は平安、舞台は四国。青い海、広がる田畑、雄大な山々を背景に,、足の生えた寺が人を食う!
 あれこそ機動寺院! 弘法大師・空海が「寺の方から人間に参拝する」というコンセプトに建造した次世代型の寺院は今、正体不明の仏敵によって狂わされ、人を食い、徳を吸い上げて殺戮する末法兵器と化した。このままでは四国の民は半年を待たずに全滅するであろう。
 この運命に立ち向かう勇者はただ一人。対仏ライフルを手に、

もっとみる
徳が高まった!
2

四国大戦:目次

第一部 発心編

*毎週木曜更新

プロローグ 1 2

一番札所 霊山寺 1 2 3

二番札所 極楽寺 1 2 3 4

三番札所 金泉寺 および 四番札所 大日寺 1 2

五番札所 地蔵寺 1 2

六番札所 安楽寺 1(2021/1/21予定)

戦大国四(有料)



用語集 ◆

その他
四国大戦(逆噴射小説大賞2020版):内容はプロローグ1前半に準ずる。
四国大戦を書いたきっか

もっとみる
徳が高まった!
2

四国大戦 二番札所 極楽寺4

 極楽寺を破戒し、中にいた人々を救出した後でもジョンの心にあるのは、レイジの安否であった。ジョンは極楽寺の屋根に刺さった刀を抜いて、飛ぶように大麻山へ向かって駆ける。
 空はさっきまでの快晴が一転して、雨雲が広がりシトシトと小ぶりの雨が降り始めている。日差しが弱まれば、レイジへのダメージも減るだろう。ブッダの粋な計らいであろうか。
 レイジは大麻山の麓で、先ほどと同じ態勢で座っていた。
「レイジ、

もっとみる
徳が高まった!
3