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遍路旅の宿事情に思う


外国人巡拝者向けの宿泊施設が足りない現状

2024年9月13日(金)の読売新聞オンラインに掲載された記事は、コロナ禍による渡航制限が解除されて以降、四国を訪れる海外からのお遍路さんが急増しているものの、受け入れ先となる宿泊施設が不足しているという現状を伝えています。
宿泊施設不足の最大の要因となったのが、経営者の高齢化やコロナ禍などに伴い相次いだ遍路宿の廃業。
また、営業はしていても英語での応対が難しいということで、海外向けのガイド本への掲載を望まない遍路宿もあること、山間部で公衆無線LANを利用できる場所が見つからず、一旦予約していた宿を無断でキャンセルしてしまう外国人巡拝者もいるのではということにも触れています。
そのような問題を抱えているなかで、海外からの巡拝者と宿を仲介するシステム小規模なキャンプ場の整備が必要ではとする海外向けガイド本の編集者の声や、翻訳アプリを利用して外国人巡拝者への受け入れに前向きな姿勢を見せている遍路宿を、本記事は紹介しています。

コロナ禍の前から欧米、オセアニア、台湾などの諸外国からの巡拝者が目につくようになっており、また世界遺産登録を目指す動きも進んでいる四国遍路。アドベンチャートラベル目当ての外国人観光客を誘致するための一つの観光資源として俄かに注目が集まっているところともいいます。
この一連の動きに弾みを付けるには、外国人巡拝者に少しでも巡拝しやすくなる環境を提供することが肝要なわけで、そのためには次のような取り組みをまずは草の根で、可能ならば官民一体で進めていくことが必要になります。
具体的な取り組みとしては
・外国人対応可の遍路宿を検索、予約するためのWebサイトやアプリの整備
・宿や公共交通機関と連絡を取りやすくするための無料Wi-fiの整備
・無料Wi-fiや無料休憩所(遍路小屋)、公衆トイレ、両替施設、ATMなどの位置をまとめた案内地図の配布

といったものが挙げられます。

さらに言うと、四国の遍路道沿いでは、外貨を日本円に両替できる場所もそうそう見つからないわけで、せめて主要な札所やそこに通じる道路や駅の近辺にだけでも最低限の外貨両替が可能な場所があればと思います。

四国遍路で出会ったローカルな宿たち

ここで本題から逸れて、個人的な体験談に移ります。
2020年からのんびりマイペースで続けている私の遍路旅ですが、基本的には家内同伴なので、旅先の宿は大浴場と朝食ビュッフェのあるビジネスホテルになることが多いです。
四国遍路には、何も必ず白装束と輪袈裟に身を包み、金剛杖を揃え、遍路宿に泊まらなければいけないという決まりがあるわけではなく、早い話洋服姿でお参りしようが、自動車や公共交通機関で巡ろうが、毎日高級ホテルに宿泊しようが巡拝者の自由です。
それゆえ、私たちのように宿泊先として小綺麗なビジネスホテルを選ぶお遍路さんもそれなりにいるわけですが、このような選択ができるのは都市部を拠点に札所を巡る時だけ。
僻地の札所を巡る際は、いわゆる遍路宿というわけではないですが、その土地ごとのローカルなお宿や素朴なお宿に宿泊する機会もあります。
私もこれまで2度、そうした宿に巡り合う機会がありました。

・ビジネスホテルケアンズ(徳島県海部郡美波町)
徳島県海部郡美波町牟岐線日和佐駅前にある小さなビジネスホテル。
ビジネスホテルとはいいますが、第二十三番札所の薬王寺まで徒歩すぐ、第二十二番札所の平等寺まで列車で1本というロケーションに位置するため、遍路宿としての性格も持ち合わせています。
館内には巡拝者が供えた納札がずらりと並んでおり、世界各国津々浦々から訪れた巡拝者に愛されてきた歴史を静かに伝えています。
近くにはコンビニエンスストアドラッグストア日帰り温泉もあり、巡拝者にとっては札所間の間隔が長い地域におけるある種のオアシスになっているとも言える宿かもしれません。

ビジネスホテルケアンズの外観(2021年)
ビジネスホテルケアンズの客室(2021年)
日和佐駅からの第二十三番札所・薬王寺遠景

・ファミリーロッジ旅籠屋室戸店(高知県室戸市)
高知県室戸市には、「室戸三寺」こと第二十四番札所・最御崎寺、第二十五番札所・津照寺、第二十六番札所・金剛頂寺の3つの札所が立地していますが、この「室戸三寺」を巡拝する際にネックになるのが交通の便の悪さと宿泊施設の少なさです。
限られた選択肢の中から私たちが選んだのは、第二十五番札所と第二十六番札所の間に位置する全国チェーンのモーテル「ファミリーロッジ旅籠屋」でした。
宿泊したのは2024年2月の連休。楽天トラベルからの予約で1泊2人20,000円と決して安くない価格ではありましたが、それでも綺麗で広々としたツインルームは長旅の疲れを癒してくれました。
暖炉と電子レンジのあるロビーからは自由にコーヒーを部屋に持ち帰ることができ、パンとコーヒーのみというシンプルな内容でしたが、朝食のサービスもありました。
徒歩だとやや遠いかもしれませんが、室戸の市街地にはスーパーマーケットやコンビニエンスストア、持ち帰り寿司店もあるので、いろいろ買い出して部屋で食べてみるのもいいかもしれません。
車が使えたら、道の駅「キラメッセ室戸」まで繰り出す選択肢もあります。

ファミリーロッジ旅籠屋室戸店(2024年)
客室(チェックアウト時に撮影)
ロビー
ロビーの暖炉
パンとコーヒーの朝食

最後に

本業の多忙や心身の不調、他の趣味(海外旅行やスポーツ観戦)への浮気などもあり、最近はペースが落ちていますが、コロナ禍のさなかに始めた小生の遍路旅もまもなく5年目に入ります。
何だかんだでこの5年間で巡った札所は63箇所になり、結願まではもうひと踏ん張りかなというところです。
今回はふと思い立ち、四国遍路を取り巻く現状遍路旅の際に印象に残った宿のことについて綴ってみましたが、残りの25札所を巡る際にも数多くの出会いと気付きがあることを願って結びとさせていただきます。

第二十六番札所・金剛頂寺
金剛頂寺付近から見た黒潮の海

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