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思い通りにならない世界だからこそ、努力で変えられるものくらい変えてしまおう
高校入学したてのとき、クラスの学級目標を先生が与えてくれた。
約10年前のことだが、印象的だったので鮮明に覚えている。
【過去と他人は変えられない、だから未来と自分を変えよう】
というものだった。当時の私は早くも音楽の世界を通して世の中の理不尽さを痛感していたのできっと心に留めていたのだろう。
この言葉を胸に頑張ってきた。
私が人生にひどく絶望していたとき、親友から
「生まれた場所、周りの環境なんて自分の努力では変えられないから、だからこそ自分の努力で変えられるところは変えようよ」
と言われ、たしかに自分の努力次第で変えられるものがあるなら人生儲けもんかもしれない、と短絡的な考え方だとは思うが、ダークサイドに堕ちそうになったときいつもこの言葉を思い出していた。
持っているカードでしか勝負できない
大学四年生のとき、なぜか弟子ができた。
ヴァイオリンの弟子ではない。なんの弟子だったんだろう。面白いからと言われたが、きっと私は初めて会ったとき後輩とマシンガントークをしていたことを記憶している。そんな私が彼には饒舌に映ったのだろう。
なぜか私のことを「師匠!」と呼ぶ6つ上のサークルの〔後輩〕。
周りが私を先輩と呼ぶ中で、一人だけ、私のことを師匠と呼ぶ人間がこの世に爆誕した。
弟子は別の大学、社会人を経て、再び大学生となりうちの大学サークルに入部してきたのだ。
会うたびに師匠!と呼ばれ、毎回長文のメールが来て最初は気味が悪かったが、私の演奏会に自作の超絶美味しいケーキを持ってきてくれたり(弟子は元パティシエ)、私のTwitterにウィットに富んだリプライを飛ばしてきたり、なんというか、咄嗟に学術的冗談が言えてとても聡明な人だった。だんだん面白くなってきてよく話すようになった。
人生相談もするようになったくらい心を開いたときだった。自分のアップデートに限界が見えてスランプに陥ったときがあり人生の先輩である弟子に相談した。
『師匠、人生は配られたカードで勝負するしかないんです』
と一言だけメールが送られてきた。いつもなら長文なのに。まだ若すぎてそのときはわからなかったが、今ならわかる。
自分にないものばかりに注意がいって自分の持っているものはなんなのかもわからず足りない足りないと嘆いていた。
隣の芝生は青く見えるから、ないものねだりに走っていた。
こういう状況になって、世界の人間の行動が平等に制限されている今、「自分の持っているカードはなにか?」目を向けるときであるし、価値ある時間を過ごして自分が変わるための努力をするときなのかもしれない。自戒としてここに綴っておく。
新年に弟子と渋谷でお茶をした。久々ゆっくり話ができた。留学で感じたこと、これからのこと。
その日の夜中に弟子から突然メッセージが来た。ニューオーリンズのストリートミュージシャンの動画付きで。
弟子からのメッセージを見ては自分の持っているカードが何なのか、再確認するようにしている。
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