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人材は目の前にいる

前回のコラムでは、私自身の至らなさのせいで去っていかれた人材についての話でした。

今回は、反対に見出すことの出来た人材について。

引き継いだ組織の体制が整わない中、気持ちの揺れ動く拠点長も多くいて、中にはこんな泥船に乗って一緒に沈んでいくことなんて考えたくないと自ら起業を志す人もいらっしゃいました。

ところが、同じ辞め方にしても人それぞれで、身ひとつで辞める方もいらっしゃれば、ゴソッとスタッフやお客様を引き連れて辞めていくようなとんでもない方もいらっしゃいました。

今回の話は、その後者の方に関することとなります。

辞めることも、事業を新たに立ち上げることも全て決められていて、会社のあずかり知らぬところで水面下で動かれており、気づいたら時すでに遅しで、個人的にお客様やスタッフへの根回しも終わっており、蓋を開けてみると残ったのはパートの契約社員のスタッフ3名とサービス提供の対応が困難であるとその拠点長が勝手に判断されたわずかばかりのお客様。

そして、今思い返しても悔しいのが、去り行く拠点長の最後の捨て台詞、「残るスタッフの中に所長ができるような人はいませんから」というひと言。

とはいえ、この後は数は少なくともお客様がいらっしゃるのでケアの提供はし続けないといけないわけですが、常勤スタッフが誰もいなくなることが判明している中で果たしてこのまま事業を継続していくのかどうか判断しないといけない局面です。

そして、これも今でも昨日のことのように鮮明に思い浮かべることのできる場面なのですが、残されたスタッフさんたちを営業所の近くの喫茶店に呼んで、そこで現状の説明をした時のことです。

ひとりのスタッフが声をあげてくれました。

「社長、私が所長をやります」

そして、他の2名のスタッフたちも、「ずっとはできないけど、一時的になら正社員として勤務できます」と言ってくださいました。

後ろ足で砂をかけるような辞め方をした拠点長が、最後まで見放したような扱いをしたスタッフさんたちが、皆悔しい思いを胸に秘めて目を潤わせながら決意してくれました。

今振り返ってみると、実際あの時目を潤わせていたのは私の方だったかもしれません。

ともあれ、これで事業継続に最低限必要な3人の常勤スタッフが確定しました。

お客様がほとんどいなくなってしまった拠点ですが、残ってくださったスタッフたちの頑張りもあって、わずか1年ばかりでもとの事業規模まで戻してくれました。

手を挙げてくださった所長は、その後別の拠点の開設時にも拠点長として立ってくださり、定年を迎えられて引退されたのですが、今年になって「人が足りなくて困っていそうだから」と元いた拠点に手伝いに契約社員として再び戻ってくださいました。

人材がいないいないと嘆く前に、目の前で一生懸命お客様に向き合ってくださっているスタッフさんたちがいて、その中にはこちらの本気の想いにも応えてくれるスタッフさんが必ずいるんだ、そういう確信が得られた大切な経験でした。

ちなみに「この中には人材はいない」と言い放って去って行った管理者はというと、開設後は地域からの評判が悪く、その後は噂も聞かなくなりました。

ただ、去って行った相手への恨み言を述べたり、衰退している様子を嘲笑ったりするよりも、目の前にいるスタッフさんやお客様を大事に見ていこうと頑張ってくれた当時のあの人がいて、だからこその今があるのだと思っています。

今日も読んでくださいまして、ありがとうございます。

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