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短歌ノート

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もうほとんど読んでも詠んでもいないけどあの日ぼくには必要だった
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短歌評論:「歌人」という男――新人賞選考座談会批判(Web公開)

短歌評論:「歌人」という男――新人賞選考座談会批判(Web公開)

0. 2019年の序文 本稿は、2014年5月に販売された短歌同人誌『本郷短歌』第3号に収録された評論「『歌人』という男――新人賞選考座談会批判」のWeb公開版である。

 短歌総合誌『短歌研究』で毎年公開される「短歌研究新人賞」の選考座談会を資料とし、「女性的」という批評語に注目することで、「歌人」が中性ではなく「男性」として構築されていることを明らかにした評論である。特に、

 女性歌人が何か

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【感想】穂村弘最新歌集『水中翼船炎上中』――セックスの歌

【感想】穂村弘最新歌集『水中翼船炎上中』――セックスの歌

穂村弘さんの最新歌集『水中翼船炎上中』の感想、というかほとんど好きな歌を引用して並べておくだけになるのですが、今更ながらさらっと書き残しておきます。

『手紙魔まみ、夏の引っ越し(ウサギ連れ)』以来、実に17年ぶりの歌集。「昭和」「ノスタルジー」をテーマにしてきたここ最近(といっても十数年経ったわけですが)の集大成。

「歌集にまとまったおかげで、後期穂村さんの歌がこれで読みやすく、批評しやすくな

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【感想】石井僚一第一歌集『死ぬほど好きだから死なねーよ』

【感想】石井僚一第一歌集『死ぬほど好きだから死なねーよ』

石井僚一さんが、とうとう第一歌集『死ぬほど好きだから死なねーよ』を出版された。

これは本当にめでたいことだと思うので、拙文ながら感想を書いておきたい。

石井さんは1989年生まれ。北大短歌会出身。

2014年、父の死を詠んだ連作「父親のような雨に打たれて」で第57回短歌研究新人賞を受賞。

しかし受賞直後、北海道新聞のインタビューに答えて、父がまだ生きていることを記者に明かした。このことにつ

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三上春海「歌とテクストの相克」への批判

※2015年10月6日のブログ記事を移転しました

第33回現代短歌評論賞が『短歌研究』2015年10月号で発表されました。
受賞者は、北大短歌会の三上春海さん。
去年は本郷短歌会の寺井くんだったわけですが、作品だけでなく評論でも学生短歌会の存在感が増すというのは、単純にとても良いなあと思います。
僕も何か書きたかったところですが、「戦後短歌70年を現代の視点で考察する」というテーマが難しすぎて断

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京短21号・阿波野巧也さんの口語韻律論についてのメモ

※2015年8月19日のブログ記事を移転しました

部室に置きっぱなしにしていた『京大短歌』21号をようやく持ち帰ってきた。
はじめに読むのは、楽しみにしていた阿波野さんの評論「口語にとって韻律とはなにか――『短詩型文芸論』を再読する――」。
というより、他の評論や作品は、ちょっとしばらく時間がないので読めそうにない。

私にとっても、口語韻律論は重大なテーマである。
というか、短歌をやっている

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閻王の口や牡丹を吐かんとす――『みだれ髪』後半5首選

閻王の口や牡丹を吐かんとす――『みだれ髪』後半5首選

※2015年4月26日のブログ記事を移転しました

千種創一さん主催「青空勉強会」の第4回、与謝野晶子『みだれ髪』の後半戦が4月25日に行われた。
前回の僕の感想はこちら。
最近ブログ更新にかけられる時間が限られているので、ごく簡単に今日の感想をまとめる。

発表担当は、結社「塔」、同人誌「穀物」の濱松哲朗さん。
「頻出する韻やリフレイン、それに基づく調べは、長唄などの近世日本文学由来のものでは

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Between Women――与謝野晶子と山川登美子

Between Women――与謝野晶子と山川登美子

※2015年4月4日のブログ記事を移転しました

昨日、歌集のSkype読書会に参加した。
青空文庫に登録されてる歌集をどんどん読んでいこう、というもの。
前回が北原白秋の『桐の花』で、今回は与謝野晶子の『みだれ髪』の前半。レジュメを担当させていただいた。

『みだれ髪』、これがなかなか難しい。
逸見久美『新みだれ髪全釈』がなければ意味が取れない歌ばかりだった。
「神」が恋人、「紅」「紫」が恋の

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