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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.88 ナンバー2の役割⑩諜報役の機能

意思決定には多くの情報が必要

経営者は世の中で起きていることにアンテナを張り巡らせ、常にビジネスチャンスを求めて多くのアイデアを考えているものです。アイデアを実現する過程で誤りのない意思決定をするためには多くの情報や多角的な視点が必要となります。

情報収集に余念がない社長も多いでしょう。

新聞、ネットニュース、読書、各種機関誌、会合、セミナー、打ち合わせなど情報が入ってくる機会は数多くあります。

けれど、一人に入ってくる情報には限界がありますし、逆に情報が入り過ぎてもその真偽を確かめ、整理するにも物理的な限界があります。

必要な情報収集や整理を行い、あわせて意見も述べてくれる存在がいたら社長としても心強いのではないでしょうか。

それが今回解説する情報収集を担う諜報役という機能です。

【過去記事はこちらから】
ナンバー2の役割①補佐役の機能
ナンバー2の役割②フォロワーの機能
ナンバー2の役割③実行役の機能
ナンバー2の役割④通訳役の機能
ナンバー2の役割⑤改革役の機能
ナンバー2の役割⑥調整役の機能
ナンバー2の役割⑦統括役の機能
ナンバー2の役割⑧代理役の機能
ナンバー2の役割⑨嫌われ役の機能

諜報役とは?

諜報役とは、さまざまな情報を収集、分析し、整理したうえで社長に意見を述べる役割です。

有能なナンバー2であれば、日頃から業界や市場の動向は押さえており、政治や経済ニュースを見て社会の潮目を敏感にキャッチしているもの。また、現場に近い立場にいるため社長が知らない現場の正確な状況を把握しています。

社長はこれら情報の提供を受けることで、新たなアイデアを発見したり、仕掛り中の計画の見直し、修正を図ることができます。

諜報役の存在で得られること

ナンバー2が諜報役として機能してくれることで得られるメリットを具体的に解説します。

■意思決定のサポートを受けられる
新規事業といった大掛かりなことだけでなく、社長は一日のうちに、採用、スタッフの配置転換、営業活動進捗確認、各種データチェック、稟議決裁、クレーム対応など大小さまざまな意思決定をする場面があるはずです。でも、判断材料が整っていれば悩む時間が減り、誤った判断をするリスクも減らせます。

■問題を早期発見できる
ナンバー2から定期的な情報提供を受けることで、社長は組織内外の変化に気づきやすくなります。何ごとも予兆といえるものは日々見え隠れしているものですが、潜在的な問題を早期に発見し、慌てることなく、迅速に対策を講じることができます。

■ビジネスチャンスのヒントを得られる
同業他社の動向、市場のトレンドやニーズ、法改正などの情報を得て、新規マーケットやターゲットを狙うアイデアなどが生まれることがあります。そのアイデアが実現可能なのかをさらに調査させて仮説を立てることもできるようになります。

■戦略の調整を行うことができる
情報のアップデートを重ねることで、柔軟に修正を図ることができ、失敗する確率を下げることができます。自分の立てた戦略に抜かりはないと思いがちな社長に見直しの機会を提供することができます。

■適切な組織マネジメントが行える
モチベーションが下がっていたり、同じようなミスを発生させてしまうスタッフがいたとしてもコミュニケーションが不足がちな社長にはそれに気づく機会がありません。適時にケアすることで離職予防にも繋がります。

孫子の兵法に見る情報収集の重要性

情報収集が重要であることは誰でも理解していることですが、孫子の兵法でも当然のようにその重要性を説いています。

孫子の兵法の要点は、究極的には「戦わずして勝つこと」であるのはよく知られたことですが、最悪でも負けないこと、損害を最小限に抑えることも含んでいます。そのために必要なのが情報収集です。13篇から成る孫子の兵法で繰り返し情報収集について述べているのはこうした理由があるからです。

『己を知り、彼を知れば、勝ち乃ち殆うからず。
天を知り、地を知れば、勝ち乃ち全うすべし。』

相手を知り、自分を知っていれば勝ちは間違いない。
タイミングを計り、有利なポジションで戦えば勝ちは自分のものとなる。

地形篇

『智者の慮るや、必ず利害を雑う。』
智恵のある人が考える時は、必ず利害の両方について考える。

九変篇

『明君、賢将の動きて人に勝ち、成功の衆に出ずる所以は、先知なり。』
優れた君主や賢明な将軍が抜きんでた成功を収められるのは「先知」、人に先んじて情報が手に入るようにしているからである。

用間篇

共通して言えることは、希望的観測や思いつきではなく、合理的かつ客観的な裏付けをもって決断せよということで、そのための情報収集です。

社長がこれは当たると思った事業アイデアもよくよく調べてみたら、すでに先行企業が多数いた。ネットでは成功を収めているような喧伝が見受けられるフランチャイズ本部が実際はポンコツだった。年々規模が拡大している企業も実は不正を働いて急成長していただけで、内部崩壊もしていた。

日常的にこんな経験も多いかと思います。特に新規参入の場合などでは情報収集がいかに大事かと感じるでしょう。

人は見たいものしか見ない

「人は見たいものしか見ない」
ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)

人は事実を見たいように見てしまうものと言ったのは古代ローマ帝国のユリウス・カエサル。有名なのでこれもよく知られた言葉です。現代的に言い換えれば確証バイアスというものです。

人は、自分に都合の良い情報ばかり集め、自分の考えを否定する情報は集めようとしません。確証バイアスは、思い込みによる影響から生じ、偏った判断をしてしまうことがあります。

3K(勘、経験、気合)で物事を判断するのは非常に危険ですから、偏った判断をしないためには、自分にとって都合のよい情報ばかりだけでなく、異なる立場の情報も集め、客観的に判断する必要があります。

だからこそ、そうした情報を上げてくれる存在が必要なことは納得できるでしょう。

ナンバー2の情報収集力を高めさせるには?

「情報収集が重要なのはよくわかった。でも、ウチのメンバーに情報を集めたり、それに基づいて意見を上げてくれるのはいない」と思われる社長もいるでしょう。

いずれも特別なことではありませんが、情報収集力を高めるポイントを整理しておきます。

【意識の面のアプローチ】
・情報収集の重要性を教える
・情報収集も仕事のひとつであることを教える
・適時適切な情報提供してくれると有難いことを伝える
・情報収集は論理性や客観性、創造性を養うことを理解させる
・危機管理意識を高めさせる

【手段、方法】
・部下とのコミュニケーションの見直し
・ネット検索
・SNS
・新聞、ニュース
・業界紙購読
・顧客インタビュー、アンケート
・取引先、協力会社とのコミュニケーション
・読書
・社外の人とのイベント交流
・コラム執筆
・コミュニティ登録
・セミナー参加

日頃から情報収集を習慣として行っている人からすればいずれも普通のことかもしれませんが、そうでない人にとってはハードルが高いものも含まれています。

SNSはとりあえず登録しているが、閲覧専門でDMのやり取りもしたことがないとか、ネットで情報を集めてもソースを確認しないまま鵜呑みにしてしまうとか、月に1冊も本を読まないとか、社外の人と付き合うことが全くないようだと情報に触れる機会が増えません。

無理強いしても長続きしないでしょうから、本人の取組みやすいものから順次勧めてみたり、こんな話が聞けてよかったなどの経験談を話してみるのもよいでしょう。

また、社長が参加しているセミナーやコミュニティ、勉強会などに連れて行くなどして外部の刺激を与えるのもいいと思います。共通の体験を通じて、共通言語を増やすとより広く深く知りたいと思う気持ちが芽生え、社長にも伝えたいことが増えていくものです。

まとめ

ナンバー2として物足りないという不満を感じる場合には、意見や情報提供が少ないという背景が大きいのかと思いますが、それは情報収集が仕事をするうえで重要であることがわかっていないのが根本にあります。

経営者も判断を誤る場合がある。それは適切な情報が少ない状態で判断しなければならない場合に起きやすく、判断を誤ると社員のみなにも迷惑をかけてしまうことになるので、協力して欲しいとナンバー2に伝えることが大事です。

特に、良い話よりも悪い情報が早く入ってくる方がより価値が高いこともあわせて伝えると社長も判断ミスを大きく減らすことに繋がります。

ナンバー2の役割は数あれど、この情報収集、分析の役割は優先度の高い役割のひとつだと考えます。理由は、補佐をするにも、実行するにも確かな情報があるという前提に立っているからです。

経営者としてできる限り正しい判断をし続けたいとお考えであれば、この諜報役という機能をぜひ重視して頂きたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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