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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.77 ナンバー2の役割④通訳役の機能

【社長の言葉は従業員に上手く伝わらないのが現実】

会議、朝礼、メール、チャットツールなど社長が発信する機会は多いものの、その考えや思い、方針などが従業員に伝わらないことが多いのはなぜでしょうか。

発信する側は、相手が理解できるように伝えているつもりでも、残念ながら受け手側である従業員は正確に理解していない、共感していないのが現実かと思います。

マーケティングの場面なら、ターゲットを決めて、どんな手段で、どんな表現で伝えるかをじっくり検討するはずですが、社内のこととなるとそうしたことはお構いなしで、社長自身は「伝えた」という事実だけを重んじる傾向が強いことが少なくありません。

この状態が続くと社長が決めたことが実行されなかったり、経営理念を浸透させるようなことはさらに難しくなってしまいます。

社長の発するメッセージを社内に誤解なく伝え、行動を促し、計画を実行させる、目標を達成させる場合には相応の工夫がやはり必要となってきます。

本稿では、社長の言葉が従業員に伝わらない理由とナンバー2の役割のひとつ、トップと現場のコミュニケーションの橋渡しとしての通訳役について解説していきます。

【過去記事はこちらから】
ナンバー2の役割①補佐役の機能
ナンバー2の役割②フォロワーの機能
ナンバー2の役割③実行役の機能


社長の言葉が現場の従業員に正確に伝わらない理由

ではどうして社長の言葉が従業員に正確に伝わらないのでしょうか。それは以下のようにな複数の理由が存在するからです。

①伝言ゲームによる曲解

社長の言葉が適切な場や人、手段を介して従業員に伝えられていない場合、情報伝達不足が発生し、正確な理解が難しくなります。

多くの場合、経営幹部などの主要メンバーだけ招集された会議や特定のメンバーだけが社長から話を聞き、部下に周知させるということになりますが、その話を聞いたメンバーがそもそも社長の意図を理解していない、正確に理解していない場合には伝言ゲームで末端に伝わるまでに曲解される恐れがあり、伝えていないということすらあるからです。

②わかりにくい言葉と表現

社長が使う言葉や表現が複雑で理解しにくい場合や説明不足の場合には従業員はメッセージを正確に理解するのが難しくなります。

自分にとっての前提知識が相手とは異なる場合に、それらを省略して伝えたり、カタカナ用語を振り回して何を言っているのかよくわからなかったり、自分が物知りで賢いと思っている人ほどそういう話し方を無自覚にしてしまう場合があります。

相手の理解度に合わせて、相手がビジネス用語や概念を理解しているかどうかを考慮し、適切な言葉遣いを心がけ、状況に応じて適切な言葉に置き換えるか、説明を加えることが必要です。

大事なことほどシンプルでわかりやすい表現が大切です。

③文脈、背景の情報不足

従業員が社長の発言の背景にある事情や組織内外の情報を知らない場合、メッセージが適切に理解できないことがあります。

こうした背景がわからなければ、社長の言葉は唐突に聞こえ、言葉の重みも感じられないことが起きます。結果として、また社長の思いつきが始まったと受け取られるのがオチですし、指示を出しても方向違いの行動を取らせることに繋がる可能性があります。

④多すぎる情報

情報量が多すぎる場合にも、社長の言いたいことが埋もれてしまい、正確に理解されないことがあります。

丁寧に話をしても、情報が多すぎると大事なことがかえってよくわからなくなってしまうからです。

情報が少なすぎても誤解が生じますし、とはいえ情報が多すぎても正確に理解されないことがありますので、会議が終わった後に「結局社長は何が言いたかったのかよくわからない」といったことになってしまいます。

知って欲しいこと、理解して欲しいことをメリハリつける、要約して話すことが大事です。

⑤理解度の確認不足

社長が従業員にメッセージを伝えた後、従業員に理解度の確認を怠っていると、誤解が生じている状態を放置する結果になる場合があります。

従業員は自分の立場や知識、経験のレベルで判断するものです。また前述したような理由も重なっていると、全く理解されていない可能性もあります。

大事な内容であればあるほど、部門、チームの上長を通じて確認することが重要です。

⑥情報の重要性の認識不足

従業員が社長のメッセージの重要性を過小評価したり、各自が都合良く解釈している場合にも正確に伝わらない状況を発生させます。他の部署に関する話、会社の業績に関係のない話、自分には関係のない話と他人事として受け止めている場合も多いでしょう。

自分の担当している仕事やひいては今後の自分の評価にも影響があるかを判断するには論理的な思考や想像力が必要です。それらが未熟であったり、無関心な姿勢の従業員には重要性が共有されないことがあります。

これらの理由から、社長のメッセージが現場の従業員に正確に伝わらない場合、コミュニケーションの改善や情報伝達の効果的な方法を検討する必要があります。

通訳役としての機能と成長促進

さて、本稿のメインテーマである通訳役としての機能についての解説です。通訳役とは組織内での効果的なコミュニケーションを図り、社長のリーダーシップを支え、目標達成や理念の実現、社風作りの促進を図ることです。

ナンバー2に通訳役としての成長を促すうえで、前述したような伝わらない状態を改善し、社長の命令やメッセージを誤解なく社内に伝達するためには以下の点について考えさせ、行動させる必要があります。

(1)メッセージの正確な理解

そもそもナンバー2は社長からの指示やメッセージを正確に理解することが不可欠で、社長と密接に連携し、社長の意図やビジョンを把握する必要があります。メッセージの中に曖昧さがあれば、ナンバー2に遠慮なく質問させてズレをなくすことが重要です。

(2)カスタマイズとタイミング

社長からのメッセージを組織内で伝達する際には、受け手の特性や状況に合わせてカスタマイズすることが重要です。また、適切なタイミングでメッセージを伝え、必要に応じて緊急性や優先順位を考慮します。

(3)日常的なコミュニケーション

日頃からナンバー2は社内のさまざまな部門やレベルの従業員とコミュニケーションを取る必要があります。現場や各従業員の状況を把握しておく必要があるからです。

組織の規模によっては従業員にとってナンバー2も業務での関わりがない関係性になっている場合がありますが、接触する頻度が少ない存在では親しみや信頼関係が薄くなってしまい、社長のメッセージを代弁、通訳しても素直に耳を傾けてくれないこともあります。

受け手としての従業員の理解力のレベルを測ることも日頃のコミュニケーションがなくてはできないです。

(4)要約、文書化

社長の口頭でのメッセージはその場に居合わせてもすぐに理解できない、忘れてしまうことがあります。会議でもメモを取らない従業員も多いですからなおさらです。

メッセージの全てではないにしろ、戦略や方針などその後の事業運営において特に重要なものは要約し、文書化のうえ、後述するようなコミュニケーションツールなどで読み直すことができるようにすることも大切です。

(5)ストーリー性を持たせる

戦略や方針の決定などを聞かされる従業員にとっては、なぜそうなったのかを知る機会はあまりないと思います。そして、打ち出された方針によって今後どのように変わっていくのかも想像がつかないかもしれません。

決定に至った背景や理由、目的などを知り、これからどのような取組みをしていくのかを明確にするために社長のメッセージにストーリー性を持たせることで従業員の理解を促すことに繋がっていきます。

(6)コミュニケーションツールの活用

メール、社内ポータル、会議、SNSなどのコミュニケーションツールを利用してメッセージを伝えます。メッセージが抽象的であったり、複雑な内容である場合には、図表なども加えて情報を補完することで理解を促すことが必要です。

(7)フィードバックの収集と伝達

社長のメッセージを受け取った組織内の反応やフィードバックを収集し、社長に伝える役割も担います。これによって、社長は組織内の状況や課題を正確に把握し、戦略の調整や改善を行うための情報を得ることができます。

発信側は伝わっているはず、理解してくれているはず、行動してくれるはずと思いがちですが、同じ組織で働いていても情報や意志のズレが生じることを前提にして、理解度を確認する手間を惜しまないことです。

情報共有、コミュニケーションは簡単なことではない

伝えたはずのことが従業員に理解されてない、実行されない。多くの社長はこうした経験をしていると思いますが、なぜ伝わらないかをじっくり考えたことはあるでしょうか。

伝わらない理由は前述したとおりですが、自分の言葉を通訳してくれる存在がいると伝わり方も変わってきます。

本稿を読んで、会議に議事録担当をつければいい、朝礼での発言を総務スタッフに文書化させればいいと思う社長もいるかもしれませんが、社長の真意を汲み取れる存在は特別な存在だということを忘れてはいけないです。

ナンバー2は組織内でのコミュニケーションの中心的な役割を果たし、社長のビジョンや戦略を組織全体に伝える重要な存在です。社長のメッセージを過不足なくわかりやすく伝えるのも一定のスキル、レベルが必要です。

以上、ナンバー2時代、実際に私が日常的に行っていたことも踏まえて通訳役について解説させて頂きました。

扇の要がない扇はバラバラになります。自分の考え、思いを社内にしっかり伝え切るためにもナンバー2の役割のひとつである通訳役としての機能強化の必要性をご理解頂ければ幸いです。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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