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会社の成長を支えるナンバー2の育て方 vol.76 ナンバー2の役割③実行役の機能

【社長が一人で全てを抱え込むのは限界があります】

アイデアが湧き上がっても、事業計画を立てても実行しなければ絵に描いた餅になってしまいますから、もちろん行動に移していかなければなりません。
新規事業、新規出店、販路拡大、内部構築、生産性向上など、そのために何をすべきかは社長の頭の中ではクリアに浮かんでいるかもしれませんが、社長は何をどこまで自らやるべきでしょうか。

今回はそんな社長を支えるナンバー2の役割のひとつ、実行役についてお伝えしたいと思います。

【過去記事はこちらから】
ナンバー2の役割①補佐役の機能
ナンバー2の役割②フォロワーの機能


■笛吹けど踊らず

社内の主要メンバーを集めて会議をし、指示を出しても、社員の表情は暗いです。

また社長の思いつきが始まった…。
背景も目的の説明もなく、すぐやれと言われても…。
いま抱えている仕事で手一杯だよ…。
丸投げしてきて、その後はダメ出しばかり…。
それを頑張ったとして、どう評価されるの?…。

社員の胸中にそんな思いが湧き上がるのもよくある風景です。

社長の仕事は構想を練り、実行させること。やっていることは正しい姿なのですが、現場の社員が思うように動いてくれなければ成果は出ません。

社長は自らの成功体験がありますから、こうすれば上手くいく確信めいたものがあるかもしれません。

けれども、会議に参加した社員が以心伝心で動いてくれることは少ないでしょう。1を聞いて10できるような人材はそういません。

社長が各社員に「作業」を割り振るか、責任者を指名して丸投げし、進捗報告させることになるのでしょうけれど、「社長にしかできないと思われること」が大半なので、結局は社長自らがほとんどのことを時間を割いて考え、準備や折衝などを行い、あわせて管理、指示を行うことになってしまいます。

社長は新しく着手することにだけ集中できる立場にありません。既存の事業、顧客は大事ですし、会社で起こる事を把握し、適時に対応しなければならない立場です。

新しく何かを始めればそれだけ社長は忙しくなり、全てが中途半端になり、計画倒れになってしまうことも多いです。

新しく始めることはワクワクしますし、忙しくて充実感があるかもしれませんが、実態は上手くいかないことが増えて、イライラする悪循環に陥ってしまう。

全てを一人でどうにかしようと思う社長の会社が結局は成長の頭打ちを迎えてしまうのはこうした背景があるからです。

社長の考えを聞いて、具体的な計画に落とし込み、実行に移してくれる存在がいたら、社長の負担は減るでしょうし、安心して次のことを考える余裕が生まれます。

だから、それができるナンバー2がいる会社とそうでない会社にはその後に成長の差が生まれてくるのです。

「いや、ナンバー2などいなくても順調に会社は成長できてるけど」、と考えているなら、まだ成長の壁まで来ていないのかもしれませんし、壁の存在に気が付いていないのかもしれません。

私も会社員時代、そうした社長を実行役として支えてきたので実感しますし、コンサルとして関与している会社でもやはり同じ状況を見ることが多いです。

■実行役としての役割

さて、あらためて実行役とは具体的になにをするのかを整理してみます。実行役の役割とは、組織の運営、意思決定などの責任を担い、社長が描いた戦略やビジョンを具体的な行動計画に落とし込み、会社全体に戦略、計画を伝え、その実現に向けて推進することです。

◎経営戦略の実行とは具体的に何をすることか

戦略実行と一口に言っても多くの要素を含んでおり、簡潔に言えば、社長が描いた戦略や計画を実行に移すプロセスです。具体的には、次のような要素が含まれます。ここではその要素と実行役として未熟な人が実行に携わることで得られる経験もあわせて解説しますので、実行役としての育成指導の参考にもしてください。

(1)目標設定

戦略実行の第一歩は、戦略に基づいた明確な目標を設定することです。目標は、戦略の成否を測定し、進捗を追跡するための基準となりますので、目標は当然ながら数値で示されなければいけませんし、それが具体的に設定されない計画は戦略とは言えず、多くの場合計画は頓挫してしまいます。

社長が構想を練る場合でも、漠然と何がしたいというレベルのまま現場に降ろしてしまうことも実際ありますし、それを聞いた側もいつまでに何をどれくらい実現する想定でいるのかを質問できないといけないです。

逆に、会議の場などにおいて、そうした質問がナンバー2から出てこない場合には本人には逆算思考で考えるビジネススキルが身についてないことの証拠でもあるので、それだけで現状のレベルを測ることができます。

最初のうちは、出したい目標を達成するために、何をどの手順でどれくらい行う必要があるのかを具体的に指示することが大事です。

(2)資源配分

戦略実行のためには、適切な資源(人材、資金、技術、ノウハウ、情報など)を調達、配置し、戦略実行に必要なリソースを確保する必要があります。中小企業でははじめからそれらが全て揃っている状況はほぼありませんから、リソースが不足するようなら、知恵を絞るしかありません。

ナンバー2自身がプレイヤーとして携わるにしても一人ではできないですから、部下を用いるために適性、スキル、姿勢なども日頃から把握しておく必要性に気づくでしょうし、集客活動や新規採用などが必要であれば、何にどれぐらい資金が必要なのかを考えさせることで経営の一端を垣間見る機会にもなります。

また自社がすでに持っているノウハウや実績といった強みを活用するうえで、あらためて自社の客観的な理解にも繋がりますし、自分にない知恵を補填するために外部人脈の大切さにも気づくことができます。

制約条件だらけの中で知恵を絞らせる行為が、ナンバー2を鍛えることになり、考える習慣、課題が変わっても柔軟に対応できるスキルを獲得することに繋がっていくのです。

(3)プロジェクト管理

戦略を具体的なプロジェクトに分割し、それらを計画、実行、管理します。主にPDCAを回すことが中心となりますが、仮説と検証を繰り返すことが重要になってきます。仮説を立てることに慣れていないと、プロジェクト管理を単なる進捗管理だと捉えて作業状況管理になってしまいます。

深く考えずに作った計画では施策のヌケモレが多く、質も量も圧倒的に不足してしまうので思うような成果は出にくいでしょう。

やるべきことをやっていない、仮説が間違っていた、方法手段が間違っていた、質が悪かった、量が不足していたと試行錯誤を繰り返すことになりますが、こうした小さな失敗の経験を積ませることがナンバー2の成長に大きく役に立ちます。

(4)チームの協働促進

社内全体を横断して取り組むプロジェクトでは各部門とも連携を取る必要があります。社長の指示だからという印籠を出しても多くの場合、自部門の都合を盾にはじめから協力はしてくれないものです。

同じ会社なのに利害調整が必要ということに初めはうまく立ち回れないかもしれません。また、他部門がプロジェクトに必要となるスキルを持ち合わせているかどうかもあらかじめ把握していなければ仕事を任せようにも任せられなくなりますし、前提として日頃から一定のコミュニケーションや信頼関係がなければ唐突に感じられるでしょう。

自分以外の人たちが日頃どんな仕事をしているのか、どのような状況なのかを把握していないと社長が決めたことであっても会社全体で協力し合って取り組むことはできないことを身をもって知る機会となり、ナンバー2の日常の視野や行動に変化をもたらすことに繋がります。

(5)モチベーション維持

実行役は、従業員を戦略の目標達成に向かって鼓舞し、指導し、モチベーションを高める役割も果たす必要があります。社長命令で渋々取り組むことで成果は出ないからです。やっているふりをしたり、他人事であったり、さまざまな言い訳を持ち出して、遅々として捗らない計画に無関心であったりします。

適切な目標設定、ストーリー、評価やスキル向上、やりがいなどモチベーションに関わる施策は数多くありますが、現場の従業員を動かすために必要な経験が未熟であれば、それらに対しての関心を持ち、知識やスキルの向上に励むように後押しする状況を得ることができます。

■まとめ

実行役の役割とその主な具体的要素をお伝えさせて頂きました。

まず、社長である自分以外に実行できる人材を作る必要性は感じてないでしょうか。忙し過ぎる、頼りになるのは結局自分だけという状況でしたら一考するのがよいと思います。社長自身の限界が会社の限界と言われることです。

つぎに、実行役の具体的役割の再確認でした。この件は君に任せると丸投げしても本人が実行役の役割を理解していないと努力が空回りして成果を出すことができないかもしれません。

未熟なうちは計画や目標達成に必要となる基礎的な考え方ややり方を丁寧に教えないといけないことにあらためて気づけたのではないでしょうか。

最後に、社長がナンバー2に対して、実行役としての役割を遂行するスキルを身につけさせるために、何を考えさせるか、何を学ばせるか、どんな経験をさせるかについて解像度が上がったと思います。

社長がナンバー2を育てたいとお考えだったら、社長自身がナンバー2の役割について正しく理解する必要があります。

繰り返しお伝えしていることですが、社長もナンバー2もその役割を知らないままでは、何を期待し、期待されているのかがわからず、無用な答え合わせを繰り返すことになります。

会社の成長はナンバー2の成長にかかっているとしたら、その成長プロセスを正しい方法でマネジメントしないといけないと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。

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