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鹿児島県与論町を踏破 その5<日本全市町村踏破(制覇)>

2018年2月13日。与論島南部の高台に鎮座する地主神社に参拝した後、隣接するサザンクロスセンターに向かう。

内部は、与論島の自然や文化を紹介する資料館になっており、1Fの売店部分以外は有料。

沢山の展示の中で、強く印象に残ったものの一つが、入口付近にある与論島の郷土芸能に使われる、衣装や仮面の展示だ。

「十五夜踊り」は、異様に誇張された笑みが不気味ですらある仮面を被った踊り手による寸劇風の「一番組」と、濃紺の衣装で顔まで布で覆った踊り手による手踊りと扇踊りから成る「二番組」の、二種で構成される。

伝説によれば、本土で戦国時代出会った頃、時の与論領主が、三人の息子をそれぞれ島内、琉球、大和に派遣し、各地の芸能を学ばせて、一つの芸能としてまとめ上げたものという。その伝説を裏付けるかのように、各地の芸能の特色が入り混じっていて、文化交流の跡を偲ばせる、非常に特殊な芸のなのだそうだ。

確かに、パッと見、筆者は秋田の西馬音内盆踊りを思い出した。「死者」を象徴する顔まで黒い服で覆った踊り手のいる、非常に特徴ある盆踊りとして知られるものである。

また、十五夜に関する行事は、薩摩半島の南端、坊津の資料館で見た事がある。大隅半島含め、鹿児島県には月の神・月読命を祀る古い神社があり、京都近くへ勧請されたものもある。これは南九州の先住民・隼人が移住した際に持ち込んだものだ。

薩摩から伝わった行事なのか、あるいは、前回の投稿にも書いた通り、元々隼人の居住圏として、月信仰が古くからあったのか。色々と思いを巡らせたくなる。

与論島の郷土芸能の展示に続いて、他の薩南諸島の島々に伝わる郷土芸能で使われる仮面も展示されていた。出色なのは、トカラ列島・悪石島のボゼ(写真右のひときわ大きな茶色地に黒い縦縞の仮面)である。

仮面の来訪神を代表するものとして、民俗学界隈では名高い。なかなか見られるものではなく、全く予想もしていなかった与論島で突然出くわすあたりが、ボゼらしいというか。

十五夜踊りで使われる大きな旗には、満月と龍が描かれている。

もう一つ目に付いた展示が、明治時代の、与論島から長崎県島原半島南端の口之津への移住である。

与論島は小さな島の割には、人口が多く、暴風や干ばつにも悩まされていた為、当時石炭の積み出し港として栄え、労働力不足となっていた口之津に「第二の与論」を築くべく移住したという事である。

移住は二度三度行われ、計1260名に及んだが、移住を計画した戸長(現在の村長に相当)の上野氏が実際に訪れてみると、あまりにも酷い労働条件、生活環境で、激怒して運営企業に改善を要求、徐々に改善されていったとのこと。

さらに後には、福岡県の大牟田に、三池炭鉱の積み出し港が完成、口之津からさらにそちらに移住。三池に移っても労働や生活は厳しく、地元との軋轢もあったが、団結力が強く相互扶助の精神を持つ与論出身の人々は、たくましく暮らした。

隣の神社境内にも、口之津への移住と、上野戸長を称える記念碑が立っている。

以前の投稿で書いたように、今も与論献奉やヤーナーなど独自の風習が残る与論島は、相当強固なコミュニティを持っていることだろう。その一端を窺わせる事績である。

最上階は、展望台になっている。

霞んでしまって沖縄本島以外は見えなかったが、近隣の島々までの距離が書いてあって面白かった。

沖縄本島最北端辺戸岬までは23km、伊江島まで62km。

伊是名島まで42km、伊平屋島まで34.8km。

沖永良部島まで32.5km、徳之島まで100km。
こうして見ると、徳之島までの距離が際立って遠い。与論島の北隣の沖永良部島まで30km強だが、その北隣の徳之島まで100kmあり、沖永良部島の南北の距離は10km程度である為、沖永良部島と徳之島の距離が60km程度あることになる。琉球三山統一までの北山王国の勢力圏が沖永良部島までであり、方言的にも両島の間に境界があるというのも、頷ける。

外の庭には、十五夜踊りと関係するらしい、伝統的な家屋がある。

地主神社の境内が、十五夜踊りの会場のようだ。

十五夜踊りの仮面を見ていて気付いたのだが、この不気味な笑みを浮かべる仮面は、十五夜の満月を表しているようだ。

真円の形の仮面は珍しいが、これこそ満月の形であり、白も光を表す色で、月を描いたものと解釈出来る。

仮面をぐるりと取り巻く白いフサフサの細かな紙は、放射状に広がる光を示しているのだろう。月の精霊が踊る踊りのようだ。

離陸まで、微妙に時間があったので、最後に、もう一度百合ヶ浜へ来てみた。

この日は天気が良く、白い砂浜、水色のサンゴ礁と濃い青の外海が、非常に美しく、ポスターのような景色だった。

こんなに絶景であっても、誰一人他に観光客はいなかったが、それでも、多少は訪ねて来る人もいるのだろう、浜辺の入口では、おばあさんが出店でお土産を売っていた。

よしずが立て掛けてあるが、2月中旬といえども、陽が当たれば暑いのが与論島だ。

与論空港の売店でお土産を物色し……。

いよいよ、与論島ともお別れ!

徳之島から順番に南下して来た「アイランドホッピング」も、いよいよ最終行程だ。次回からは沖縄編。

市町村踏破数は前回投稿から変わらず。
鹿児島県全43市町村のうち、42市町村踏破、残り1村、達成率97.7%。
九州・沖縄全274市町村のうち、258市町村踏破、残り16市町村、達成率94.2%。
日本全国1741市町村のうち、1718市町村踏破、残り23市町村、達成率98.7%。

サポート頂けると、全市町村踏破の旅行資金になります!また、旅先のどこかの神社で、サポート頂いた方に幸多からんことをお祈り致します!