2021年1月の記事一覧
ドストエフスキー著『罪と罰』下巻 読書感想文
(引用始め)
ラズミーヒンは生涯この瞬間を忘れなかった。ぎらぎら燃えたひたむきなラスコーリニコフの視線が、刻一刻鋭さをまし、彼の心と意識につきささってくるようだった。ふいにラズミーヒンはギクッとした。(中略)ある考えが、暗示のように、すべりぬけた。おそろしい、醜悪なあるもの、そして二人はとっさにそれをさとった…ラズミーヒンは死人のように真っ青になった。
(引用終わり)p.67
壊れていくラス
D.H.ローレンス著『チャタレイ夫人の恋人』読書感想文
工業化によって汚染された風景とそれに群がる醜い人間の有様、そして自然と人間のエロティシズムが持つ神秘性との対比が強く印象に残った作品だった。
かつてヨーロッパ全土は今では考えられないほど深い森に覆われた土地だったと聞く。しかし工業化が進むにつれてそれらは破壊され、人間の魂さえも奪っていった。コニーはそんな世の中の流れと炭鉱事業を牛耳る低俗な夫に嫌気が刺し、誘われるように森へと足を運ぶようになる。
ディケンズ著『クリスマス・キャロル』読書感想文
歳を重ねるにつれクリスマスを楽しむこともなくなった。クリスマスなど金にならないから無用だと豪語するスクルージに自分を重ねた、とまでは言わないが、それは単に私も彼と同様にクリスマスを楽しむ事のできる想像力を持ち合わせていないからだろう。
第一の幽霊はスクルージを過去へと連れて行く。そして故郷の風景、若き日の自分自身
を目の当たりにする彼の姿に、私自身を重ねた。ケチで冷酷なスクルージになる以前の彼が
ジョージ・オーウェル著『動物農場』読書感想文
ファシズムというおぞましく得体の知れないものを、ユーモラスに、かつグロテスクに描いたこの動物農場は私にとってとても馴染み深く身近な物語だった。
動物達が祝砲や行進や旗のひらめきが大好きな様に、我々人間も大きな運動会が大好きだ。
大きな運動会が延期になったとはいえ、動物達の様にそれらに夢中でいつの間にか七戒が改竄されていた、いうことのない様に我々人間も彼らの失敗から学ばなければいけないよねー、と思