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色川武大著『うらおもて人生録』読書感想文

非行少年から博打打ちとなった男の語り口は、この上なく穏やかで、人間への愛に満ち溢れていた。しかし、そこは雀聖と呼ばれた男、穏やかな言葉のそれぞれには、一見分かりやすいながらも、非常に論理的で、時には勝負師らしい冷酷な一面も垣間見えた。

様々なセオリーが語られるが、そのどれもが、著者自身の勝負師としての経験から生まれてきた、血の通った生きた言葉である事を感じた。

私自身のこれまでの人生と、これからの人生とを照らし合わせながら読んだ。
これまでの人生を振り返り、これからの人生を思う時間と共に読書をした。
生きる上で参考にしてみよう、と思う箇所が幾つもあった。その名言の数々を幾つもメモに記しておいた。

裏になったり表になったり、人生はいつもまどろっこしい。だが、そんな裏になったり表なったりするまどろっこしさこそが、如何に生きる上で大切であるかを、そしてそのまどろっこしさからどれだけ学ぶべき事があるかを著者は教えてくれる。

帯の著者の写真を眺めてみると、温厚そうな顔立ちである一方、不敵な笑みと鋭い眼差しが魅力的だ。色川武大は、己の人生観、"二律背反"を像にした様な面構えをしていた。

色川武大は、いわゆる"文豪"と呼ばれる、自分とはかけ離れた存在ではなく、親戚の"悪いおじさん"みたいな存在だ。普通の大人が知らない、知っていても教えてくれない事を教えてくれる、そんな存在。その人生は破天荒で破茶滅茶だが、その鋭い眼差しには、いつも人間への慈しみと愛がある。

エッセイ形式の本を久しぶりに読んだ。
著者と直接対話している様な感覚は、小説とは異なる豊かな時間を、読書を通じて感じた。
今は亡き雀聖と呼ばれた男の話を聞けることなど、読書を通じて以外、私の人生ではありえないことだ。
読書って素晴らしい。
そんな思いにふけながら感想文を書いていると朝になってしまった。
感想文の締め切りは明日だ。
朝だ!徹夜だ!

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