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名言や格言を全く欲していないときに読むもの

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ひたすら筆圧で攻めていく。それがスタイル。
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#小説

さようなら退屈な毎日、こんにちは刺激的なニューヨーク!
ー『女たちのニューヨーク』感想ー

さようなら退屈な毎日、こんにちは刺激的なニューヨーク!
ー『女たちのニューヨーク』感想ー

早川書房さんが募集をしていた
「ニューヨークのショービジネスの世界に飛びこんだ19歳の女性。騒ぎの中心で頂点とどん底を見た彼女が向かうのは――長篇小説『女たちのニューヨーク(仮)』読者モニター募集」
に応募し、読者モニターに当選したので、本書を発売よりも一足先に読ませていただきました!

前回、アイスランド女性文学賞受賞『花の子ども』の読者モニター当選以来、2度め。

今作『女たちのニューヨーク』

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大好きな彼がいつも家にいるぅ!?人生初の同棲に高まる少女が初めて手にしたペアグッズ

大好きな彼がいつも家にいるぅ!?人生初の同棲に高まる少女が初めて手にしたペアグッズ

うぉおおお!始まりました!初の同棲生活!!どっきどき!
「ねぇ、一緒に住んじゃおうよ!東京のお家賃高いし!」
思い切って提案してから半年後、無事に入居しました!ひゅー!

ただ、お互いが一人暮らしの時に使ってた物を部屋に入れただけだから「2人で暮らす」ものが全然ない。
2人でいちゃつけるソファもないし、食器も洗面台も、いちゃいちゃ感がない。なんだかさみしい。何も準備しなかったから当たり前なんだけど

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世界中の誰よりも、あなたに好きになってもらえるわたしでいたい

世界中の誰よりも、あなたに好きになってもらえるわたしでいたい

初めての社会人生活は、
初めての一人ぐらしと同時に始まった。
勤務地は超がつくほどの田舎。
同じ場所で働く同期はいない。
車通勤する先輩たちに追い抜かれながら自転車通勤をして、
部屋を頻繁に訪れる虫との戦いに明け暮れていた。
木造社宅の湿気に怯えたから初任給は除湿機になったし、
色気があるどころか、生きるのに精一杯。
新参者のわたしは期待されるどころか信用がゼロで、
その孤立ぶりに疲れて部屋でよく

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目的のない夜

目的のない夜

「前向きが良いことってわかってるけど、どこが前なのかわからない時に「前はこっちだ!」って教えてくれる人がいないんだよね」
また花音が訳のわからないことを言い出した。
お前は他人の考えてることを読みとる力はあるのに、なんでそんなにも他人にされるがままでいられるんだ?

***

2年ぶりに会う友人2人が俺の部屋に泊まりにきた。
俺と同じく大学3年の花音と、就職浪人が決まった大学4年の祐一。2人とは日

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「私何になりたいんだろうって思う」空っぽのままの女友達。

「私何になりたいんだろうって思う」空っぽのままの女友達。

都内の某駅から徒歩5分、12階建ての11階、家賃17万8千円の1LDKにCAの妹と二人暮らし。
家賃も生活費も二人で半分ずつ出してる。
それだけで毎月10万円近くがでていくの。だからマツエクとネイルはやめた。
余裕とは言えないけど、社会人4年目の女性でこれが支払えるってことは、私はまあまあ稼げている方だと思うんだ。

約2年ぶりに会った中学からの友人は
「ここ3週間くらい、左下まぶたの痙攣がとまら

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手間のかかるミルクティー

手間のかかるミルクティー

「コーヒーと紅茶、どちらにいたしますか?」

「紅茶で。」

世の中でどんなにコーヒーがもてはやされようとも、二人揃って紅茶を頼む。
それが由香子と二人でいる時の私の習慣だ。

久しぶりに、由香子から呼び出された。

幼稚園から高校まで付属の私立学校に中学から入学した私にとって、中学1年生のクラスが一緒だった、というだけの繋がりで在学中の6年を一緒に過ごした由香子は見栄を張らずに居られる数少ない友

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猫っ毛の彼

猫っ毛の彼

私の前の席に座る男の子の髪の毛が、見たことがないくらいふわっふわだと気付いたのは、指定された席に座る生活が始まって1週間が経ったくらいの頃だった。

たまたま彼がワックスを使わずに登校しただけなのに、その髪質に気付いた瞬間、名前も知らないその男の子のことを、急に知りたくなった。

なんとなく観察していたら、

遅刻をしない日はすこしワックスをつけていること。
ギリギリで駆け込む日はワックスをつけず

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碧空

碧空

ある晴れた夏の日、
何者にもなれそうにない自分を振り払いたくて
一筋の飛行機雲を追いかけた。
雲が見えなくなった途端、
電池が切れたように足が動かなくなって、
誰よりも大きい空の下で寝転んだ。

空港に来ると、
いつもあの時の空を思い出す。
僕は、あの時憧れていた誰かになれなかった。
それでもいいのだと、
空は大きな身体で教えてくれる。

差添い

差添い

3年前の彼と私の生活は、
一人暮らしの二人がなんとなく同じ玄関を使っているかのようだった。
そんな私たちを変えてくれたのは、
ある日手にとったふわふわの白い子犬のぬいぐるみ。
君を連れて帰ってからは、君を通じておしゃべりが増えた。
いつの間にか「二人で」することも増えた。
「一人がふたつ」を、「二人がひとつ」にしてくれた。
不器用なスタートだった私たちだけれど、
もうすぐ新しい家族を迎えます。

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真に描写されていたのは、「応援されやすい人」の人柄なのかもしれない。- 最低。 紗倉まな -

真に描写されていたのは、「応援されやすい人」の人柄なのかもしれない。- 最低。 紗倉まな -

最低。 (角川文庫)

いちセクシー女優の道を飛び出して、躍進目覚ましい紗倉まなさんの小説デビュー作。

さすが映画化されただけのことはあり、キャラクターがちゃんと立っていてのめりこめる短編集でした。

本編も面白いのだけれど、特に読み応えがあったのは「あとがき」。

あとがきでグッと引き寄せられたなんて、過去の記憶にはなく、最後の最後に更にのめり込んでしまいました。

書きたいものがどれだけあっ

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