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さようなら退屈な毎日、こんにちは刺激的なニューヨーク!
ー『女たちのニューヨーク』感想ー

早川書房さんが募集をしていた
ニューヨークのショービジネスの世界に飛びこんだ19歳の女性。騒ぎの中心で頂点とどん底を見た彼女が向かうのは――長篇小説『女たちのニューヨーク(仮)』読者モニター募集
に応募し、読者モニターに当選したので、本書を発売よりも一足先に読ませていただきました!

前回、アイスランド女性文学賞受賞『花の子ども』の読者モニター当選以来、2度め。


今作『女たちのニューヨーク』は分厚かった!!!
600ページ近い。(ゲラ時点)

けれど、読み始めてすぐ、これがわたしの好みドンピシャであることに気付かされます。

あぁあああああああもう最高!大好き!!


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片面印刷で実際の本よりもだいぶ高く積まれたゲラは、その厚みをものともせず、あっという間に読み尽くされたのでした。ちゃんちゃん♬



・・・

これで終わってもいいくらい、ネタバレにつながることは何も言いたくない!
とにかくまっさらな状態でこの濁流に飲み込まれてほしい!!!



『女たちのニューヨーク』概要

気になる『女たちのニューヨーク』、概要は以下の通り。

書名:『女たちのニューヨーク』
著訳者:エリザベス・ギルバート/那波かおり(訳)
2021年5月18発売/46判並製594頁 

エッセイ『食べて、祈って、恋をして』で、人生のつまづきから立ち直るための旅を描き、日本をふくむ全世界の女性たちを勇気づけたエリザベス・ギルバート。

今回、ギルバートが久しぶりの小説で描くのは、1940年代のニューヨークで生きる女性。憧れの大都会にやって来たときの興奮、華やかなショービジネスの世界で働く充実感、夜のニューヨークのまばゆい刺激、人生を一変させる過ちと後悔、そこからの再起……ひとりの女性の半生を抜群のストーリーテリングで語ります。

ひとりの女性が自分の気持ちに正直になって、自らの力で道を切り開いていく姿を描く世界的ベストセラー!




今回の感想文では、なるべくネタバレなしでスピード感や出来事を体感してほしいので、あらすじの掲載も省きます!


本当はこの先も、書籍を読み終えてから読んで欲しい!



ニューヨークの突風

読み始めて早々に、「アメリカでヒットする小説はこのスピード感なのか!」と打ちのめされました。


ニューヨークが携えていたのは、とてつもなく濃密で魅惑的な”日常”。

「このひと誰だっけ?」と絶対に振り返らせない、抜群の個性を持ったキャラクター達。


序盤から、主人公・ヴィヴィと一緒に、読んでいるわたしまで次から次へとニューヨークの風に猛烈にあてられました。


とてつもないジェットコースター進行で、あっという間に1940年代のニューヨークへ掻っ攫ってくれる。


さようなら退屈な毎日、こんにちは刺激的なニューヨーク!


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SATC?ゴシップガール?
いいえ、華やかさとスピード感は似てるけど、内容はきっちり違うもの。
これは確かに、『女たちのニューヨーク』という唯一無二の物語。



偉大な先人”女たち”

本書ではタイトル通り、とにかくたくさんの”女たち”が出てきます。
その誰もが、かっこいい!!

「男の後ろを歩く」ような慎ましい女性は一人も出てきません。

それぞれが置かれた境遇で、それぞれに哲学を持ち、逞しく生きていく。

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失敗なんて、日常!

酒に呑まれることもある。
お金を使いすぎることもある。
やったことの捉え方を変えることで、自らを庇うこともある。

決して優等生だとか上品とは言えない彼女たちが、どんな状況でも眩しく、そして美しく映る!

ちょっと不恰好なそれが美しく映るのは、ひとえに彼女たちが真剣に自分の人生と時代を生きているからなのでしょう。



失敗から学べー結婚はゴールじゃないー

この作品では大なり小なりの失敗が、その人を形作っていくことが丁寧に描かれています。

ヴィヴィに至っては、失敗の数なんて数えきれない!!

メインの大きな失敗は「街じゅうを騒がすスキャンダル」なのですが、その他にも小さいミスがたくさん!

そして、その失敗のリアルなことといったら!

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わたしにも心当たりがあったのは、「恋人を結婚相手として相応しい男に仕立てようとする」シーン。

「あぁ、やめて!
そんなことをしても無駄なの!
そんな世間体を気にするようじゃ結婚は早いわ、ヴィヴィ!!!」
と腕を引っ張って止めたくなる。

相手を変えようとしているうちは、結婚なんて無理ですよねー。
どんな欠点があってもそれを含めて愛せるかどうかが、一つの指針になると言ってもいいくらい。


親や世間がどう思うかを気にする様子が、まだまだ少女であることを的確に表していて、読んでいるわたしまで赤面しそうでした。



それまでの恋人や友人を全て手放すことになってしまったヴィヴィは、傷心の末、たいして好きでもない男と婚約をし、結婚しそうになったことも。


事後にその顛末を聞いた親愛なる叔母・ペグは「いい人というだけで結婚しちゃダメよ」と語ります。

まだ少女のままであるヴィヴィは「人生を持て余して...」と言い訳をしますが、
それに対しても「趣味を始めましょう」とバッサリ!

自分の人生を他人に預けちゃダメ。あくまでも能動的であれ。

このフェミニズムたるや!👏👏👏


本書では、昨今話題になりやすいジェンダーにまつわる話も多く出てきます。



ジェンダー、歴史、性革命

1940〜1960年代のニューヨークを舞台に描かれた本書では、ジェンダーにまつわる歴史も垣間見ることができます。

具体例を挙げると、

-未婚女性が医師から避妊具を入手することが禁じられていた

-コンドームの購入は男にしか許されていなかった


など。


性にまつわる嫌な過去を振り返って、ヴィヴィは「そういう時代だったのよ、昔はよかったと言うみなさん!」と痛烈に皮肉を言います。

1990年代生まれのわたしにとっては当たり前のことが、女性側の働きかけによって、変わっていたのだと改めて思い出させてくれました。

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そして、これは過去の話じゃない。現在も続くジェンダーの歴史。

今もなお残る"おかしいこと"を変えていった先で「そういう時代だったのよ、昔はよかったと言うみなさん!」と、わたしたちも言えるようにしたい。

そう、気を引き締めさせてくれました。


他にも、下記にまつわることが本書ではガシガシ登場します。

・性革命
・LGBTカップルが伴侶と暮らす

・フェミニズムとシングルマザー

・争いへの嫌悪と非暴力への情熱

これらのことに関心がある方にも、本書はおすすめです!



文学少女のための本じゃない

海外文芸を読むのは、おとなしくて慎ましい人だけだと思ってました?

まさか!


むしろ、20歳頃に無茶をした経験がある女性にこそ読んでほしい!


わたしはといえば、ヴィヴィほど弾けられなかったから、とにかく彼女たちが眩しくて、羨ましかったりもします。
その羽目の外し方が、いつかトラブルに衝突して痛い目を見るとわかっていても。

だって、「それくらいの年頃の女の子なんて、自らトラブルを求めていたんだから!
」



日本の小説は、ゆったりした日々の中にちょっと起こる変化を繊細に描いた作品が多い印象です。

けれど、
本書では「イベントは起こるべくして起こる」と言わんばかりの
完璧に仕立て上げられた環境が用意されています。

空高く舞い上がったかと思えば、横に逸れ、たちまち急降下!

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読みながら感化されて、純日本人のわたしまで「Oh-!!!」と叫んでリアクションしてしまいそう。

このスピード感!派手さ!華やかさ!
そう!
これぞまさに、アメリカーーーーーン!!!!!!


読み始めてすぐに映像がありありと浮かんで、脳内映画が即上映されるようなストーリー運びは、痺れるくらい気持ちいい!

ぜひ読んで体感してくださいね!


🧚‍♀️🧚‍♀️🧚‍♀️


ゲラ読みを体験させていただいた、早川書房さんに感謝を。

この投稿を読んで『女たちのニューヨーク』を読みたい!と思った人が一人でもいますよーうにっ!


2021年5月18日発売です!


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