松尾芭蕉【おくのほそ道】鑑賞ポイント徹底解説🍃その1【深川】
全国のStudyファンの皆さま、アヤ先生のnoteへようこそ。
さて今回取り上げるのは松尾芭蕉の『おくのほそ道』です。
日本人なら知らない人はいない超有名な作品ですが、実はこの作品は中3生や高校生が鑑賞するにはなかなか難しいのです。
私の熱心なファンの方は既にご存じと思いますが、私は、
子どもには「勉強しろ」と言いながら自分は内容をまったくわかっていないという大人は大嫌いです。
(高校生相手に「勉強しなくてよい」とか言っちゃう副総理みたいな政治家はもっと嫌いですが😝)
我が子や地域の子ども達と松尾芭蕉の人生観について語り合えるように、
中3生だけでなく保護者の方や一般の方もこの機会にぜひ有名な古典文学をご一緒に味わいましょう!
この記事では「深川」と呼ばれる冒頭部分を取り上げます。
「深川」は現在の東京都江東区で、芭蕉の旅の出発地です。
大雑把に言えば「江戸」です。
では、早速始めましょう!
🎀古典分野を学習するときのポイント
古典分野を学習するときのポイントについて最初に述べておきます。
🍃知識分野の比重が増す。
▶「言葉の意味」「表現技法」はもちろん周辺知識も含めてしっかり理解しよう!
🍃現代文以上に、全文を声に出して読めることが重要。
▶しっかり何度も「音読」すればテストの点もグーンとアップ!
🍃俳句は「季語」「季節」「切れ字・何句切れか(あれば)」の3点を意識して押さえよう!
🍃作者のものの見方や感じ方(≒人生観)を読み取ろう!
上記4つをしっかりと意識して、では中身に入っていきます!
🎀深川
原文
ぜひ、声に出して読んでください!
<🌻原文🌻>
月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり。船の上に生涯を浮かべ、馬の口とらへて老いを迎ふる者は、日々旅にして旅をすみかとす。古人も多く旅に死せるあり。
予もいづれの年よりか、片雲の風に誘はれて、漂泊の思ひやまず、海浜にさすらへ、去年の秋、江上の破屋に蜘蛛の古巣をはらひて、やや年も暮れ、春立てる霞の空に、白河の関越えんと、そぞろ神の物につきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて取るもの手につかず、股引の破れをづづり、笠の緒付けかへて、三里に灸すゆるより、松島の月まづ心にかかりて、住める方は人に譲り、杉風が別所に移るに、
草の戸も住み替はる代ぞ雛の家
面八句を庵の柱に懸け置く。
ポイント解説
🍃最初の一文
「月日は百代の過客にして、行き交ふ年もまた旅人なり。」
は、一般常識としてこのまま暗誦できるようにしておきたい!
「百代」は長い年月。「過客」は旅人。
「百代の過客」で「永遠の旅人」くらいの意味です。
「行き交ふ年」は「去ってはまたやって来る年」。
ここでは大雑把に「人生」と捉えることもできると思います。
ですから冒頭の一文には、
「時間(の経過)は永遠の旅人(のようなもの)であり、人生は旅そのものである」
という松尾芭蕉の人生観がいきなり表現されているのです。
🍃船の上に生涯を浮かべ(る者)は船頭さんのこと。
🍃馬の口とらへて老いを迎ふる者
これは「馬子(まご)」と言って、
江戸時代に存在していた
「馬に人や荷物を載せて運ぶことを職業にしていた人たち」
のことです。
「馬の口」は「馬の手綱や馬の口輪」。
重要キーワード「漂泊の思ひ」
🍃「漂泊の思ひ」は重要キーワードです。
「漂泊」の辞書的な意味は、「あてもなくさまようこと」です。
ですから「漂泊の思ひ」とは、
あてのない旅に出たいという松尾芭蕉の気持ちがこめられた言葉です。
⚠️サンズイを忘れて「漂白」にしちゃうと漂白剤になっちゃうから注意!😝
では突然ですがここで問題。
🌸松尾芭蕉の、
「旅に出たくて出たくてしょうがないほどの落ち着かない様子」
がわかる部分を抜き出せ。
と言われたら?
正解は…
「そぞろ神の物につきて心を狂はせ、道祖神の招きにあひて取るもの手につかず」
ですね。
できましたか?
「何ということもなく、心がそちらに動いてゆく様子や、気の落ち着かない様子」を指して「そぞろ」と言います。
「気もそぞろ」とか使うでしょ。
そういう気持ちにさせるような神様を「そぞろ神」と表現しています。
松尾芭蕉の本気度
ではもう1問。
🌸松尾芭蕉は、旅に出るために具体的にどんな準備をしましたか?
「草の戸も…」で始まる俳句よりも前の部分から、箇条書きで示してください。
これはどうでしょうか。抜き出し問題なら、
「股引の破れをづづり、笠の緒付けかへて、三里に灸すゆるより、松島の月まづ心にかかりて、住める方は人に譲り、杉風が別所に移る」
までですので、この部分を箇条書きにしていきます。
🍃股引(ももひき。日本の伝統的ボトムス(下着)です)の破れを繕った。
🍃笠の緒(かさのお)を付け替えた。
▶雨が降った時の「傘」ではなくて三度笠の「笠」です。こちらです。
🍃三里に灸をすえた。
▶「三里」は「膝のツボ」のこと。こちらです。
🍃住んでいた家は人に譲って、杉風(さんぷう。芭蕉の弟子の一人)の別荘に移った。
以上、4点です。
旅のために住んでいた家まで人に譲るなんて、相当の覚悟ですね💦
芭蕉自ら「古人も多く旅に死せるあり。」と言っています。
生きて帰れるかどうかわからない、というある種の決意を持っていたのでしょうね。
ところで、「笠」で思い出しましたが、
『風来のシレン』最新作がなんと14年ぶりに発売されます!
やった!
あ、ゴメンナサイつい。
話を『おくのほそ道』に戻しましょう。
🎀俳句の鑑賞
最後に俳句を鑑賞しておきます。
🌻草の戸も住み替はる代ぞ雛の家
俳句では、
「季語」「季節」「切れ字・何句切れか(あれば)」
の3つを押さえるのでしたね。
🍃季語…雛(ひな)
🍃季節…春
🍃切れ字…ぞ (二句切れ)
「草の戸」は草庵、つまり芭蕉が住んでいた家のことです。
ですから全体として、
「このわびしい草庵も住人が替わることになった。
次は雛人形なども飾られる華やかな家になることだろうなあ」
という感じです。
🎀ここまでのまとめ
🍃松尾芭蕉の人生観を読み取ろう!「人生は旅そのものだ」
🍃俳句は「季語」「季節」「切れ字(あれば)」の3つを必ず押さえる!
🍃松尾芭蕉は家を人に譲るほど旅に命を懸けていた!
私の人生訓は「本を読め」「人に逢え」「旅をしろ」です。
ですから、松尾芭蕉の「漂泊の思い」はとてもよくわかります。
私も旅をしたい!💕
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今日は、松尾芭蕉の「旅に対する尋常でない覚悟」について学びました。
しかし、『おくのほそ道』の本当のおもしろさはここからです。
ぜひ、続篇の記事もお楽しみに。
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またねー!💕
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おまけ
面八句を庵の柱に懸け置く。について
この部分は難しいので説明を省略しました。
面八句はいわゆる俳諧連歌の発句から第八句までの八句を指します。
それを懐紙に書いたものを庵の柱に懸け置いた、ということです。
この部分の解釈は諸説あって、
『おくのほそ道』全体の作風を比喩で表現したもので、実際には懸け置いていない(?)
と言う人までいます。
ご興味のある方は、ぜひ調べてみてください。
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