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古本屋になりたい

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本や読書にまつわるあれこれ
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2023年2月の記事一覧

古本屋になりたい:12 お風呂嫌い

古本屋になりたい:12 お風呂嫌い

 お風呂が苦手だ。とにかく面倒臭い。

 翌日に予定がないなら、お風呂に入らずに眠りたい。
 入った方が良いのは分かっているので、ダラダラと考える。シャワーでは体が温まらない。お湯を張ったら絶対に入らないといけなくなる。テレビを見ているうちに、もう12時だ。古い団地なので配管を流れる水の音が気になる。あまり遅い時間には入りたくない。
…やっぱり今日は寝よう、となる。

 私がお風呂に入る気になるに

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古本屋になりたい:11 捕鳥部萬(ととりべのよろず)の墓

古本屋になりたい:11 捕鳥部萬(ととりべのよろず)の墓

 私が住んでいるあたりは、古代、有真香と呼ばれていたところだ。
 ありまか、と読む。

 小学生の高学年になった頃、父の車でよく通る道に、有真香農道という新しい道が繋がった。
 聞き慣れない不思議な響きで、初めは当て字だろうかと思った。

 駅近くの大きなスーパーマーケットに入っていた、布恋人という手芸用品店を私は思い浮かべた。私はずっと、ぬのこいびと、と読んでいたのだが、フレンドと読むと知った時

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古本屋になりたい:10 眼鏡をかける

古本屋になりたい:10 眼鏡をかける

 小学4年生から眼鏡を掛けている。

 視力検査で目が悪くなっているのが分かり、初めは、眼科で目薬を処方してもらった。
 目薬なんかで、落ちた視力が回復するとは思えなくて、どうせ眼鏡をかけることになるのだろうなと諦めていた。
 目薬が滲みるようなら言ってくださいね、と言われていたのだが、目が滲みても言わなかった。ちゃんと言っていれば、視力は戻ったのかもしれないと思ったこともあったが、たぶんそんなこ

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古本屋になりたい:9 本が好きでも眠くなる

古本屋になりたい:9 本が好きでも眠くなる

 読書の姿勢が定まらない。

 首をコキコキしたり、座り直したり、本を持つ腕を替えたり、じっとしていられない。
 自分だけが知らない、長く読んでいても体や目が疲れないグッズが既に世の中に存在するのではないかと、読んでいる本をスマートフォンに持ち替えて、Amazonを渉猟し始めたりする。

 快適な読書姿勢を探して、部屋をあちこちうろつく。

 ベッドに寝転びながら読んでいると、当然ながら寝てしまう

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古本屋になりたい:8 どんな本を読むの?

古本屋になりたい:8 どんな本を読むの?

 本を読むのが好きな人は大抵、どんな本を読むの?と聞かれたことがあると思う。
 みんな、どう答えているんだろうか。

 私は答えを持っていない。

 ミステリーとか歴史小説、とジャンルで答えれば良いのか。
 作家の名前を何人かあげれば良いのか。
 面白かった小説をいくつか挙げれば良いのか。 

 名前をあげても知らないかもしれない、知らない名前をあげたら場がしらけるんじゃないか、場を持たせるために

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古本屋になりたい:7 知らんけど

古本屋になりたい:7 知らんけど

 C.S.ルイスの「ナルニア国ものがたり」の中に、「馬と少年」という一冊がある。
 「ナルニア国ものがたり」は、異世界ファンタジーだ。人間界からやってきた少年少女が、ナルニアで冒険をする。

 ナルニアへ行く手段は様々だ。
 衣装ダンスを通って、あるいは不思議な指輪を使って、もしくは見覚えのある船の絵を見ているうちに。何か知らない力に引っ張られて、ということもある。

「馬と少年」が少し違うのは、

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古本屋になりたい:6 マルシャーク「森は生きている」後編

古本屋になりたい:6 マルシャーク「森は生きている」後編

 →前編から続き

 私たちの学校では、音楽の授業は4年生から専任の先生が担当になるが、3年生まではクラス担任が教えてくれた。
 S先生は、指定の音楽の教科書を使わなかった。小学校の音楽指導の別冊的な教本があるらしく、その中から、先生は好きな歌を色々印刷してクラスに配った。

 宮沢賢治の「ポランの広場」をモチーフにした「伝説の広場の歌」や、陽気な紳士うさぎが登場する「ちびすけうさぎのカルロス・ロ

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古本屋になりたい:5 マルシャーク「森は生きている」前編

古本屋になりたい:5 マルシャーク「森は生きている」前編

 小学校の1、2年生まで、教室は1階にあった。3年生になって初めて2階の教室になると、少し大人になったような気がした。

 階段に近いところから1組、2組、3組。
 始業式の朝は、廊下に貼り出してある表で自分のクラスを確認した。私は1組で、2年生まで仲の良かった子とはクラスが離れてしまったのが、少し残念だった。

 新しい教室の後方のロッカーには、すでに名前のシールが貼られていた。本当にこのクラス

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古本屋になりたい:4 北彰介「なんげえはなしっこしかへがな」

古本屋になりたい:4 北彰介「なんげえはなしっこしかへがな」

 子どもの頃バレエを習っていたが、私は極端な運動音痴で、一つも上達しなかった。5歳から中学1年まで続けて、人より少し体が柔らかいかな、というくらいだ。
 母によると、私の姿勢が悪かったので、矯正のためにバレエを習わせたのだそうだ。

 バレエ教室は、家からバスで5分ほどのところにある公民館の会議室で、週に1回、土曜日に開かれていた。

 公民館には、市役所の支所のほか、体育館、習い事や会議に使える

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