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本を読むのに疲れたら他の本を読みます

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  • 「北越雪譜」を読む

    江戸時代後期の雪国の生活誌、鈴木牧之「北越雪譜」を、ゆっくり読んでいきます

  • 甥っ子姪っ子に読まれたいねん

    テストの点にはならないけれど、大人になっても結構身近にあるから覚えておいたら毎日がちょっと楽しいかもしれないことを書きます。  簡単にいうとお節介。

最近の記事

古本屋になりたい:51 奥泉光が待ちきれない

学生の頃には興味がなかった近現代史に、最近興味があって、というのは、歳をとった証拠だろうか。 友人からも同じような言葉を聞く。 辛気臭くて小難しくて、やたら覚えなければいけない年号が多い上に、現実に近すぎてロマンが感じられない、と思っていたほんの少し「昔」のことを、流石にちょっとは知っておかなくてはマズイ、と思い始めてからが大人なのかもしれない、と考えたりする。 奥泉光の「虚史のリズム」が出ていることに気づかないで一月余り過ごしていた。 本屋のない町に戻り、仕事帰りに毎日で

    • 古本屋になりたい:50 灯り

      洗面台の蛍光灯が、プチッと小さな音を立てて切れた。実際には音は鳴らなかったのかもしれないけれど、徐々にではなく急に切れたので、音が鳴ったように思えた。徐々に暗くなって切れていく蛍光灯っていうのはあるんだっけ?家中ほとんどの灯りをLEDに変えてから、蛍光灯が切れる経験をしなくなった。引っ越してきた時から元々入っていた洗面台の蛍光灯が、4年目にしてようやく切れたのだった。 Amazonで蛍光灯かもしくは代わりになるLED(蛍光灯型の)を探してみるが、どれが合うのかよくわからない

      • 古本屋になりたい:49 アナログ

        3月の半ばだっただろうか。 あるミスの清算に、いつもは行かない方面の電車に乗り、知らない駅で降りて、知らない街を歩いた。 スマホに地図を呼び出して、その指示に従って素直に歩く。 途中から田んぼの真ん中を歩くことになっても、確かにその向こうに目的の場所はあるらしいので、やはり素直に歩く。 まだ田植えの始まっていない田んぼの中の道を突っ切って、高台にある公民館のような建物をぐるっと取り巻く坂道を上り、駐車場や小さな工場の脇を通って坂を降りると、少し広めの道路に出た。左に首を巡ら

        • 読んでいる本:猫の王(角川ソフィア文庫) 表紙の白猫はキティちゃんのモデルではなく、河鍋暁斎が描いた猫又です。 熊本には、歳を経た猫が集まる猫岳というところがあるそうです。 猫派必読。猫派になりたい犬派(私)にもおすすめです。

        古本屋になりたい:51 奥泉光が待ちきれない

        • 古本屋になりたい:50 灯り

        • 古本屋になりたい:49 アナログ

        • 読んでいる本:猫の王(角川ソフィア文庫) 表紙の白猫はキティちゃんのモデルではなく、河鍋暁斎が描いた猫又です。 熊本には、歳を経た猫が集まる猫岳というところがあるそうです。 猫派必読。猫派になりたい犬派(私)にもおすすめです。

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          古本屋になりたい: 48 日曜日のさみしさ

           日曜の夜、「クラシック音楽館」を流し見しつつ、本を読んだりコーヒーを飲んだりスマホをいじったりしていると、Moanin'が流れて、はっとなる。  「美の壺」が始まった。  もう2時間経ってしまった。  サザエさん症候群などと言って、日曜日が終わるのを憂鬱に感じる人はたくさんいるようだ。  今はそんなことを感じなくなったけれど、私にも日曜日が憂鬱だった時期がある。  社会人としてのほとんどをシフト制の仕事をして過ごしてきたので、土曜日と日曜日は繁忙日であり、休みの日という感

          古本屋になりたい: 48 日曜日のさみしさ

          古本屋になりたい:47 本屋の記憶

           その昔ニチイだったところが、サティになり、マイカルになり、イオンになり、5年ほど前、完全に閉店した。  家からバスで5分かそこら。  小学校高学年になると、子どもたちだけでも行けるところ。  その隣にシネコンが出来たのは、ついこの間のことのように思える。家から5分のところで映画が観られることに不思議な感覚を覚えたものだが、そのシネコンももう何年も前に潰れてしまい、跡地には古くから地元で知られる病院が移転して来た。  ニチイだった頃からずっと、館の中にはK書店があった。

          古本屋になりたい:47 本屋の記憶

          読んでいる本のことを呟いてみます… 川本直「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」(河出文庫) 馴染みのある作家や書名が登場して、その度にニヤリ 宇野亞喜良の装画はもちろん、帯に「魔夜峰央さん、驚愕!」とあるのも良いですね このお二人の名で心ときめく方は、読んじゃってください!

          読んでいる本のことを呟いてみます… 川本直「ジュリアン・バトラーの真実の生涯」(河出文庫) 馴染みのある作家や書名が登場して、その度にニヤリ 宇野亞喜良の装画はもちろん、帯に「魔夜峰央さん、驚愕!」とあるのも良いですね このお二人の名で心ときめく方は、読んじゃってください!

          古本屋になりたい:46 井上靖「星と祭」

           今の中学生も、国語の授業で井上靖の「しろばんば」を読むのだろうか。  小学校の国語の教科書に載っていたのは、それだけで完結している短い物語ばかりだったのに、中学校に入ると、長さのある小説の一部が抜粋されたものが教科書に掲載されていた。  そのことに驚くと同時に、続きが気になるという体験も初めてしたように思う。  教科書の中の「しろばんば」は、冒頭の数ページだけだ。  子どもたちが、夕方、しろばんばと呼ばれているふわふわした虫を嬉しがって追いかけるシーン。その後何ページく

          古本屋になりたい:46 井上靖「星と祭」

          「北越雪譜」を読む:20

           前々回(18回)、和裁をしていた母のことを長々と書いたのは、麻糸を反物に織り上げる越後の女性たちに共感を覚えるからなのだが、女性たちがどのようにして機を織り、また、どのような心持ちでその作業に向かったか、そういったことが描かれた箇所を読む前に、どうしても飛ばすわけにはいかないのが、麻という素材そのもののことだ。  前回、縮とは何ぞ、ということを鈴木牧之の言葉を借りつつ書いた。  今回は、植物の麻がどのように麻糸になり、反物になるかというお話。  (母の話はこの後で良かった。

          「北越雪譜」を読む:20

          古本屋になりたい:45 高野文子「るきさん」

           一時期、ごく親しい人へのお見舞いやお餞別として、薄い文庫本に自分で縫ったブックカバーをかけたものを渡していたことがあった。  ブックカバーは、手芸用品店に行く度に買い集めていた端切れとチロリアンテープの組み合わせで、相手のイメージに合わせた。誰かに女子力高ーい、などと言われて、うるせえ、とお腹では思いながらもへらへら受け流していた。  中の本は大体決まっていた。  一度、転職する恋愛体質の同僚に内田百閒の「恋日記」をあげたほかは、お見舞いにはナンシー関の「記憶スケッチアカ

          古本屋になりたい:45 高野文子「るきさん」

          古本屋になりたい:44「エルマーのぼうけん」

           幼稚園や小学校の秋の遠足は、たいていみかん狩りだった。  子どもの足で歩いていける距離に、みかん山がいくつもある。みかん山はみかん農家の果樹園であり、観光農園を兼ねているところもある。  思い返すと、幼稚園に上がる前から、家族や、他の市から遊びに来たいとこたちや、近所の同年代の子どもたちと、何度もみかん狩りに行っていた。  みかん山は傾斜のきついところが多いから、はしゃぎ回ると危ない。こけて、ケガをするかもしれない。  どんくさいわたしは自分のことが心配だったし、元気でい

          古本屋になりたい:44「エルマーのぼうけん」

          「北越雪譜」を読む:19

           越後縮は、越後国全体のものではなく、鈴木牧之の住む魚沼郡に限った名産品だ、という。  着物を着る人がめっきり減った現代では、新潟の特産品といえば越後縮!と真っ先に挙げる人もまた減っているのだろう。  越後縮の中でも、小千谷縮ならば知名度はグッと上がるだろうか。  今は魚沼市、南魚沼市、小千谷市はそれぞれ別の市だが、江戸時代までは魚沼郡として同じ地域に含まれていた。  越後縮は越後上布とも言い、麻の織物である。  上布とは麻織物のことだが、縮は素材ではなく布の成り立ち、も

          「北越雪譜」を読む:19

          「北越雪譜」を読む:18

           以前にも少し書いたが、私の母は和裁を生業にしていた。  大阪のある百貨店の呉服部に委託されて、お客さんが購入した反物を着物に仕立てるのが、母の仕事だった。  父と結婚した頃、母は月に5枚ほども着物を仕上げれば、まだ若い父の給料を軽く超える収入があったそうだ。  長襦袢や浴衣なら1日、袷の着物でも数日で縫い上げた。  重い木の脚の上に戸板を再利用したと言う長い天板が載せられた背の低い作業台が、リビングの隣の和室に置いてあった。母はいつもそこに、ペタンと足先をお尻の左右に逃す

          「北越雪譜」を読む:18

          「北越雪譜」を読む:17

           鈴木牧之という人は、大変熱心で真面目な人柄だったと思われるが、一面、「空気が読めない」ところもあったのではないかと思う。あくまでも、「 」付きだが。  頑固に一途に、40年も「北越雪譜」の出版を諦めず模索し続けた、その空気の読めなさが、結果的に夢を実現させたと言っても良いのではないだろうか。 …先年、玉山翁が出版された軍記物語の画本の中に、越後の雪中で戦ったという図がある。文には深雪とあって、しかも十二月(旧暦)のことなのに、描かれている軍兵たちの振る舞いを見ると雪は浅く

          「北越雪譜」を読む:17

          「北越雪譜」を読む:16

           先日、NHKの朝ドラ「らんまん」を観ていたら、主人公・槙野万太郎の妻、すえ子が幼い長男に「ももき」と呼びかけていた。番組ホームページによれば、百喜と書くらしい。  すえ子さんは、滝沢(曲亭)馬琴の大ファンで「南総里見八犬伝」が大好き、という設定だ。  これはもしや、馬琴が弟子入りを断られたという山東京伝の、弟・山東京山の本名、岩瀬百樹から名をとり子に付けたのでは!?と思ったのだが、モデルとなった牧野富太郎夫妻の次男の名が百世というそうなので、どうやらわたしの考えすぎである

          「北越雪譜」を読む:16

          甥っ子姪っ子に読まれたいねん:1 「秋来ぬと」

           先日、二週に一度の買い出しの時、母(あなたたちのおばあちゃん)と、朝晩は涼しくなって来たという話をした。  夜、寒っと目が覚めて布団をかぶったと母が言うので、そんなに寒い?と聞いたら、山からの風が冷たいという。  わたしの住む団地と母の住む実家は、ほんの数分しか離れていない。わたしの部屋は四階、実家は二階建てだからそれほど差が出るとは思えないし、むしろ、四階の方が風が通って涼しいのでは、という気もする。  ただ、窓の向きが団地と実家では違うので、風の入りやすさは違うのかも

          甥っ子姪っ子に読まれたいねん:1 「秋来ぬと」