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【本屋めぐり日記】 生きて出会う

2023年5月6日(土)

朝起きて、「街の上に」という映画を見た。

死んだ人から、死にたい人へ。
振った人から、振られた人へ。
選ぶ人から、選ばれた人、選ばれなかった人へ。
ひとつの街の中で、縁がつながったりちぎれたりしていく様子が、なんとも儚くて愛おしかった。

なんだか無性に誰かと話したくなった。人のにぎわいを感じたくなって、それでなんとなく、高円寺に行くことに。

古書 十五時の犬 にて

天井まで続く無限本棚。
棚どうしをつなぐ板がついていて、さらにそこに本が並ぶ。本棚が枝葉を伸ばしているように見える、森のような店内。何回訪れても間取りを書けなさそう。

一番上の棚は地上からは見えないので脚立が用意されていた。
しかし、「もし脚立に登った状態でよろけちゃって、棚にぶつかって、本をなぎ倒しちゃっって、めちゃくちゃにしたらどうしよう」とかぐるぐる考えて、怖くて使えなかった。

お店をでた後、今度は「もしかしたら一番上の棚に、ずっと欲しかった本があったかもしれない。その本は明日売れちゃうかもしれない。」とかぐるぐる考えて、悲しくなってきた。

なんて面倒くさい性格なんだ。
こうやって死ぬまで選ばなかった選択肢のことを考えてるんだろうな。
次はちゃんと、脚立にのぼろう。

蟹ブックス にて

SNSをはじめてから「名前だけ知っている」ことが増えてきている。
日々雪崩のように情報が押し寄せてくるからだと思う。

蟹ブックスさんも「名前だけ知っている」お店だった。「本屋をめぐるのが趣味」、と言うくらいにはお参りしないといけない。そう思って閉店間際に訪れた。

ずっと欲しかった『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』を購入。するとレジにて、著者の花田菜々子さんが蟹ブックスの店主であることを教えてもらった。

知らなかった自分が恥ずかしい…。
ちゃんと調べてみたら、本屋好きには周知の事実のようだった。本当に「名前しか知らな」かったんだ私…。

蟹、といえば威嚇するときにハサミを見せる。相手に、自分のハサミの方が大きいとアピールするためだ。

今回のことも、なんかそれに似ている。私は本屋をまわるのが好きだけど、私の「好き」はなんか他人向けだ。私は私の「好き」を証明するために動いてる気がする。

だから、たまにこういう不思議なことが起きる。
好きでいて、知らない。悪いことじゃないんだけど…なんだかな。今度行くときは本の感想言えるようにしとこうかな。

そぞろ書房 にて

noteを読んで、ひそかに元気をもらっていた点滅社さん。
小窓社さんと一緒に本屋を開店したと聞いて行ってみた。

何回かネットで『自分の事ができたら』(2022年、点滅社)を購入しようとしていたけど、今日まで買わなくてよかった。
お店で、本づくりをされた方の前で買う事ができて、本当によかった。

noteを読んでることを頑張って伝えてみたけど、ちょっと緊張してしまった。それでも、「頑張って書き続けます」と言っていただけたので、嬉しくなって「はい、私も、頑張って生きて、また来れるようにします」と言ってしまった。

生きる理由にされるのは重かったかもしれない。帰りの電車の中で『自分の事ができたら』を抱きしめながら悶々と反省。

ボーッとしていたら、足元にペットボトルが転がってきた。
電車が揺れるたびに、向かいの席と私の席をゴロゴロゴロゴロ往復する。誰も拾わない。行って帰って、行って帰ってを繰り返している。ゴロゴロ、ゴロゴロ、ゴロゴロ。

死んだ人から、死にたい人へ。
振った人から、振られた人へ。
選ぶ人から、選ばれた人、選ばれなかった人へ。

今朝の映画を思い出す。
誰かの存在や、行動、言葉は人間を介して作用してめぐる。

今日、勇気をだして投げた言葉もまた、私から旅立った。
ゴミになったかもしれないし、誰も拾わなかったかもしれないけど。
投げてみたい。今日出会った人や本のように、何かを届けてみたいな。

転がってきたペットボトルは拾って、ホームのゴミ箱に捨てた。
帰ったら、ずっと休んでた日記を再開しよう。今日の本屋でのこと、自分のこと、ちゃんと記録しよう。そして書けたら、ちゃんと投げてみよう。ネットは電車より広いので、きっとよく転がる。

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