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#芥川龍之介

読書感想 芥川龍之介 死後

読書感想 芥川龍之介 死後

芥川龍之介晩期の掌編です。青空文庫で読みました。
芥川龍之介が見た夢の話のようですが、ツッコミどころが満載です。
なんと、自死したあと、
(幽霊として??)自分の家を訪れているのです。
そんなんだったら死ななきゃいいのに……、と思ってしまいますね。

夢の中で妻は再婚しています。
妻はそのことを芥川龍之介に問い詰められ、いつも夫に叱られた時に見せる、途方に暮れた顔をしながら話します。

妻の様子か

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読書感想 芥川龍之介 河童

読書感想 芥川龍之介 河童

またしても芥川龍之介です。よく飽きずに書くよなあと我ながら思います。笑

「歯車」で芥川龍之介にハマった私がその次に読んだのがこの「河童」だったと思います。初めて読んだ時と、芥川の作品をほぼ全て読んでから再読した時と、感じることが全然違うように思いました。

初めて読んだときは、早発性痴呆症(現在の統合失調症)の妄想という形をとって社会を風刺している作品なのかな?と思いました。

この作品は内容が

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読書感想 芥川龍之介 南京の基督

読書感想 芥川龍之介 南京の基督

芥川龍之介の短編小説です。
芥川龍之介ですので、当然、
スッキリ!明朗会計!きっとこういうことが言いたかったんだよね!というわかりやすいお話ではないですよね。

中国は南京に住む15歳の売春婦、宋金花のお話です。貧しい家計のために身を売るような生活をしていますが、信心深い熱心なカトリック教徒です。
金花は梅毒にかかってしまい、客にうつしてはならぬと仕事を休んでいます。

そんななか、外国人の客が家

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読書感想 芥川龍之介 偸盗

読書感想 芥川龍之介 偸盗

芥川龍之介の中期の中編小説です。

私はとにかく晩年の作品が好きなのですが、この作品もわりと好きです。こちらは、芥川龍之介の作品の中でもなんとなく異色の存在感を放っているような気がします。(私の個人的な感想です)

何故そのように思うのかというと、
芥川龍之介は短編小説が多いなかこちらはそこそこの長さです。そしてストーリー性もちゃんとあります。何より大層な悪女が登場するのが珍しいです。

芥川龍之

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読書感想 芥川龍之介 玄鶴山房

読書感想 芥川龍之介 玄鶴山房

芥川龍之介の晩期の短編小説です。
自死する半年前に書いた作品みたいですね。

玄鶴山房に住む家族の、それぞれの内に秘めた思いが丁寧に描写されています。

ゴム印の特許により財を得た玄鶴は肺結核にかかり、余命幾ばくもない状態です。そして玄鶴の妻のお鳥も七、八年前から腰抜けとなり自分ではトイレにも行けない状態です。二人は屋敷の離れに住んでいます。
母屋には長女夫婦、夫婦の一人息子、女中、老夫婦の世話を

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読書感想 芥川龍之介 尾生の信

読書感想 芥川龍之介 尾生の信

芥川龍之介の小品です。短いです。すぐ読めます。が、この小品の意味を理解して読みこなすのは相当難儀だと思います。

ていうか私は全く読みこなせないです。難しいです。でも私はこの作品が好きなんです。

わからないのに好きなんて、そんなことあるかいな??と皆さん思うと思いますが、これこそ、相手の懐に入らずとも、謎のフェロモンにより虜にする、芥川龍之介の能力なのです!!(意味わからん)

男性が橋の下でず

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読書感想 芥川龍之介 大川の水

読書感想 芥川龍之介 大川の水

子どもの頃から、川とか湖とか沼とかダムとか、水を眺めるのが好きでした。
海も大好きです。

昔は疲れると、図書館に行って「〇〇県の沼」という地元の沼の写真集をずーっと眺めていました。すると周囲の人が「……?」という目でチラチラ見るんですね。

もっと疲れると、近所の川に行って流れ行く水をひたすら眺めていました。するとやっぱり通りかかる人が「……?」という目で見るんですね。たまーに、「死ぬなよ!」と

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読書感想 芥川龍之介 歯車③

読書感想 芥川龍之介 歯車③

 歯車の感想の続きです。
 前回書いた通り、歯車はゾッとするエピソードばかりです。静かに、自然に、当たり前のことのように、怪奇現象が書かれています。その冷静さが一層恐怖感を引き立てている印象です。

 この作品は私小説というのでしょうか、やっぱりストーリーらしいストーリーもないのですね。相当な苦しみのなか書かれたものだと思います。そんな中でも、他人を貶めたり、侮蔑するようなことはほとんど書かれてい

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読書感想 芥川龍之介 歯車②

読書感想 芥川龍之介 歯車②

この作品は、事実と創作と芥川龍之介の幻覚(のようなもの)が混在している印象を受けます。全部創作だったならば、本当に素晴らしい作品だと思います。逆に全部芥川龍之介の中の真実だったとするならば……。
考えさせられますね。

 私が気になるのは、作品の中に出てくる様々な不気味なエピソードです。

芥川龍之介の姉の夫は、自宅の放火の容疑をかけられ執行猶予中のまま轢死(列車にひかれて自殺)しています。自宅に

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読書感想 芥川龍之介 歯車①

読書感想 芥川龍之介 歯車①

私が芥川龍之介にハマるきっかけとなった作品です。

この作品の半分は遺稿です。遺稿とは、故人が残した未発表の原稿です。
この作品がいまだご健在の作家さんのフィクションホラー小説だったならば、面白い!!と無責任に言えると思うのです。

ですが、こちらはおそらく芥川龍之介が自死する直前の精神的苦悩をそのまま書いたものなんじゃないかなと思います。そう考えて読むと、ただでさえゾクゾクする内容がより一層身近

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読書感想 芥川龍之介 点鬼簿

芥川龍之介晩期の自叙伝的小説です。
晩年、相当神経を病んでいるなか書かれたようですね。

 「点鬼簿」とは、死者の姓名を書き記した帳面のことをいうようです。
この作品には、芥川龍之介の実母、実父、姉のことが記されています。

断片的な記憶とその時に感じたことがありのまま書かれている印象です。
子供の頃の記憶で、前後のことは全然覚えていないのに、何故かその場面だけ妙にはっきり覚えていることってありま

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読書感想 芥川龍之介 庭

読書感想 芥川龍之介 庭

またしても芥川龍之介です。
いかんせん大好きなものでつい……。

こちらの作品、なんと言いますか……寂しさ漂うお話なのですが、寂しいだけのお話ではないんですね。
ストーリーとしては、なんでもない話なんです。それなのにとても胸を打つ「何か」があります。(それは芥川龍之介の作品の多くに言えることだと思うのですが)

その「何か」は一体なんなのだろう?

鋭く的確な心理描写、心情描写なのでしょうか……。

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読書感想 芥川龍之介 袈裟と盛遠

読書感想 芥川龍之介 袈裟と盛遠

こちらは、平家物語の異本のひとつである源平盛衰記を芥川龍之介がアレンジしたものらしいです。ちなみに私は古典文学は全く不案内です。全っ然わかりません!!
(堂々と書くな!笑)
間違ってたらごめんなさい!

もう少し、古典文学の知識があれば、文豪の作品をより深く理解出来るのだろうな、と思います。また違った角度からも考察できますしね。
機会があれば改めて勉強したいですね。

さて、こちらの「袈裟と盛遠」

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読書感想 芥川龍之介 六の宮の姫君

読書感想 芥川龍之介 六の宮の姫君

こちらは、今昔物語を題材としたお話のようです。

六の宮の姫君の、「悲しみも知らないと同時に、喜びも知らない生涯」が淡々と描かれています。

両親に寵愛され、何不自由なく育った美しい姫君。
両親の死後、家計が苦しくなり体を売るような思いで夫(正式な夫じゃないのかな?)を持つことになります。

しかしその夫も仕事で姫君のもとを離れることになります。五年経ったら戻ってくると言い残し…。

しかし六年経

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