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展覧会まとめ

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観た展覧会の記事をまとめていきます
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#美術館

キュビスム展(西美・京セラ)感想

キュビスム展(西美・京セラ)感想

筆者は東京で昨年観ていますが、この夏まで京都京セラ美術館でも展示が続いているので、回想録として書きます。ポンピドゥセンターからの作品を中心に、キュビスムの多様な展開を追うものです。

概要キュビスムの前史としてセザンヌの作品とアフリカの偶像が展示されています。「プリミティヴィスム」についてのキャプションが、今日的にアップデートされたおり、作品の単なる霊感源ではなく、植民地主義的な問題を孕んだ造形で

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空海展感想(奈良国立博物館)

空海展感想(奈良国立博物館)

空海生誕1250年記念ということで空海展。おそらくこの規模では2003の入唐1200年記念の「空海と高野山」展以来のものになると思います。仏像に焦点を当てた展覧会としては2019年の東博が最新ではありますが、空海展となると20年ぶりです。

高野山の名宝名物盛りだくさんだった祝祭的な2003年版に比べれば、「密教とは」「空海のしてきたこととは」と宗教色が強めの展示になっています。美術館だけでなく高

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「未完の始まり 未来のヴンダーカンマー展」感想

「未完の始まり 未来のヴンダーカンマー展」感想

豊田市美術館で開催されている、現代美術の展覧会です。毎度ワクワクさせてくれる数少ない美術館です。

これまでの展示もぜひ読んで頂きたいです。

概要ヴンダーカンマーとは「脅威の部屋」と訳される、世界中の珍品が集められた部屋のことを指します。特に15〜18世紀にかけて貴族たちが鉱物や貝殻といったものをコレクションし、見せ合っていました。

18世紀に博物学が成熟して、謎のままごちゃ混ぜになっていたも

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ウスター美術館蔵・印象派展 感想

ウスター美術館蔵・印象派展 感想

東京都美術館で開催されている印象派展。ウスター美術館はアメリカ・ボストンから西に進んだところにある、アメリカでも最初期に印象派の絵画を集めていた施設です。

印象派展は山ほど開催されてきましたが、今回はかなり異色の内容だったと思います。モネが2点しかない、ということもありますが、主眼が「印象はどのように国際的な様式として普及したか」というものでした。

概要前半部でコローからモネ・ルノワールなどが

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本阿弥光悦の大宇宙 感想(東京国立博物館)

本阿弥光悦の大宇宙 感想(東京国立博物館)

3月10日まで開催しております。この展覧会は江戸時代初頭に活躍した文化人、本阿弥光悦の業績を総覧できるものです。日本史の教科書に載っている作品もあります。

概要本阿弥光悦とはどのような人間か、いかにして多彩で精力的な創作が可能だったのかを考えるために、本展では①本阿弥家とその周り②法華信仰のふたつの軸を用意し、そのレールによって展覧会は進んでいきます。

序盤は文書から家業の刀剣、日蓮宗との関り

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やまと絵展感想(東京国立博物館)

やまと絵展感想(東京国立博物館)

展示物の国宝や重要文化財率に関していえば、今年最も凄いものでした。以下に書くことはこのブログの内容と重なるところがあるので、目を通してください。読み物としても普通に面白いので。

概要教科書に出てくる作品のオンパレードでした。私は三つに分かれているなかでの最後、後期展示?に行きましたが、カタログだけ見ても凄い作品ばかりです。

その他《源氏物語絵巻》や《伴大納言絵巻》なども前期には出ていたので、全

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フランク・ロイド・ライト展感想(豊田市美術館)

フランク・ロイド・ライト展感想(豊田市美術館)

誰もが知るアメリカ建築の巨匠の回顧展が行われています。26年ぶりとのこと。愛知県のあとは、東京と青森に巡回します。

概要この概要通り、ライトの足跡と思想を辿る世界旅行へ行くことになります。

ライトは駆け出しの頃から浮世絵の蒐集家として有名で、特に広重を熱心に集めていました。シカゴの浮世絵通たちの間では非常に有名であり、ライトの日本文化受容のほどが窺えます。

序盤は浮世絵とライト初期作品の図面

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長沢芦雪展感想(中之島美術館)

長沢芦雪展感想(中之島美術館)

大阪・中之島美術館で開催中の展覧会で、九州国立博物館にも巡回するものです。大阪では初の回顧展で、高い注目を集めていました。私が見たのは前期日程です。後期も行こうかなと思えるくらいの水準ではありました。

概要18世紀後半の京都で活躍した長沢芦雪はまず、写生画の大家である円山応挙に弟子入りします。展覧会はそこから始まり、芦雪の若い頃の作品と応挙の作品が、類似主題のものが並列されて展示されており、師弟

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デイヴィッド・ホックニー展感想(東京都現代美術館)

デイヴィッド・ホックニー展感想(東京都現代美術館)

画業60年越えの、誰もが認める現代絵画の巨匠の展覧会です。現代において絵を描くということはどのようなことなのかを考えるには最高の機会だと思います。絵を描く人や興味がある人はホックニーをあまり知らなくても行く価値があります。

概要1937年生まれで、ロンドンの王立美術学校を出てから、フランシス・ベーコンなど様々な画家の影響の下で絵を出品していきます。第1章は多くの画家から学んで実験している若い絵画

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「吹けば風/枠と波」展感想(豊田市美術館)

「吹けば風/枠と波」展感想(豊田市美術館)

関東圏の展覧会しか話題にならないのもどうなのかという問題提起があり、実際のところ限りなく少ないので夏休み企画的に書いてみます。

吹けば風展

先日豊田市美術館の「吹けば風」展に行きました。初夏に「ねこの細道」で来ましたが今回も、現代作家の企画展です。

川角岳大、澤田華、関川航平、船川翔司の四人の作家それぞれが、この世界から新鮮な発見を引き出そうというおおらかなテーマになっています。とりあえずふ

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テート・ブリテンのリニューアルについて

テート・ブリテンのリニューアルについて

どのようなものだったかはTwitterを覗いてください。

続き

テート・ブリテンのリニューアル展示は、これまで以上に女性や有色人種のアーティストに重点が置かれています。しかし賛否両論(明らかに否の方が多い)です。

これまでマイノリティーとして真剣に取り上げられなかった作家を取り上げた、だけならこうはなりません。批評家憤慨のわけは明らかに「これまで長く偉大とされてきた画家や作品が減らされたこと

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スペインのイメージ展感想(西洋美術館)

スペインのイメージ展感想(西洋美術館)

版画中心ということもあり、あまり話題になっていないようで、私が行った時も休日の割には空いていました。カタログは今期の展覧会の中では最も読み応えがあると思いました。

概要ヨーロッパでもイベリア半島はイスラーム勢力の侵攻などから、ちょっと違うよねと長く思われていました。いわば未知の国です。しかしその未知が生み出したイメージに引き寄せられ、特にロマン主義以降スペインは大人気の旅先になります。

またス

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Abstraction展感想(アーティゾン美術館)

Abstraction展感想(アーティゾン美術館)

全館使った膨大な展示で、抽象絵画の誕生と発展そして現在までを追う展示となっています。ざっと100年の歴史を一気に駆け抜けるだけでかなり楽しいと思いますし、この手の表現に苦手意識がある人にもおすすめできます。

概要ということで見ていきます。

セザンヌやピカソなど、基本彼らはそれだけで展覧会の主役になるので、今回まるで前座のように並んでいるのは見たことがなかったので新鮮です。

青騎士やそれ以降の

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ルーブル展(国立新美術館)感想

ルーブル展(国立新美術館)感想

日本テレビとルーヴル美術館は、2018年から2034年までの期間、4年ごとに日本で大規模なルーヴル美術館展を開催することで合意していますが、その2回目です。《モナリザ》の保護ガラスなど日本テレビがお金を出した設備はかなり多く、その感謝として行われているもの。

今回のテーマは「愛」。2018年のものが「顔」でしたから一気に抽象度が高まったなという気分で行きました。

概要 第1章はギリシャ・ローマ

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