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【有料】異世界のジョン・ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第34話 イーサンとソフィの過去その2 第35話 イーサンとソフィの過去その3 第36話 悪魔マイナデス 第37話 殺戮の預言 第38話 嘲弄の弓矢 その他キャラクター説明など
第34話 イーサンとソフィの過去その2
数年前 魔毒竜殲滅戦にて
「ラッキーナンバーは18! イーサン、ソフィ、ちゃんと意識しておけよ〜。後で後悔しても遅いからな〜」
茶髪に碧眼の男性が忠告する。
白のローブには数字の形をした装飾品をじゃらじゃら括りつけられ、歩く度に金属音が鳴った。
彼の名はノア・コールマン。
イーサンの親友であり、長年の付き合いの冒険者。
占星術、タロットの知識と実践を冒
ヴォートゥミラ大陸異聞録 蒐集家の冒険者 サイモン・ベネットの絆の物語
「我ながら壮観であるな」
自室の押入れを開くと、そこはまさに異国そのものだった。
異世界の調度品や貴重な書物を眺め、我はしみじみと呟いた。
それと同時に今まで費やした総額を、頭の片隅に追いやる。
見た目こそ此方(こちら)の人間と相違ないものの、独自の言語を話す、ヴォートゥミラ大陸への来訪者。
そして来訪者と共に招かれた、奇妙奇天烈な品々の数々。
これら数の限られた貴重品を手に入れるには、金に糸目
ヴォートゥミラ大陸異聞録」 愛深き妖精戦士 ケイレヴ・ハワードの奇跡の物語
空を飛び交う竜、庶民と王族の婚姻、異世界からきた異邦人。
大人になるにつれ、いつからか信じなくなっていた、巷にありふれた与太話。
けれど見たことがなければ、実在を疑うのが普通だ。
我々妖精の存在を確認したことがなければ、僕らの暮らす妖精王国ファトゥム・アグナも、ただの伝説だと一笑に付すだろう。
だがしかし僕はそんな夢物語に、再び手を伸ばそうとしていた。
手にしていた書物をパラパラとめくると、とある
ヴォートゥミラ大陸異聞録 聖なる信仰の導き手 アリアネル・コリンズの希望と絶望の物語
「アリアネル樣、また〝奴〟を目撃したとの報告がありましたど……」
「捨て置きなさい。あの怪物は金銀財宝が絡まぬ限り、我々には無関心。下手に刺激しては、犠牲がでてしまいます」
教会に飛び込むように、恰幅のよい髭面の男性ファーマーが入るや否や、私に告げた。
不安を隠すように一文字に閉じた唇は、小刻みに震えせて。
続けて飛び込んできた冒険者の方々も、納得いかない様子で、私を見下ろす。
彼らの恐怖、怯え
ヴォートゥミラ大陸異聞録 蝶舞蜂刺の体現者 コチョウ・スガルの求道の物語
極めんとするは蝶舞蜂刺流(ちょうぶほうしりゅう)。
流れつくは異国の地、ヴォートゥミラ大陸。
俺の名は胡蝶蜾蠃(こちょう・すがる)。
蝶舞蜂刺流の求道者であり、戦の高揚に酔いしれる者。
拠点とするのは天使の羽根を崇拝する地、アウローラーラ。
今日も法衣を纏う司祭が訪れ、祈りを捧げる。
だが俺に言わせれば、己以外の何かを拠り所にしようなど、軟弱千万。
「スガル、君は底が知れないな。秘訣はあるのか?
ヴォートゥミラ大陸異聞録 夜蛭の信徒 ツクモ・ゴロウの世直しの物語
やいやい、そこのお前さん。
俺っちが誰だか知りたいか。
右に苦しむ民あれば、富を牛耳る者から盗んで分け与え、左に泣く子あれば道化になり励ます。
夜中に稼いだ金は、朝になりゃすっからかんの一文無し。
そんな生粋の常世っ子!
俺っちは天下の義賊、夜蛭(やひる)の信徒、九十九五郎(ツクモ・ゴロウ)でございやす。
歌舞伎の見得を切るかのようなポーズを取る俺っちを 月明かりだけが眺めていた。
粋な俺っちの仕
ヴォートゥミラ大陸異聞録 あらすじ 敬虔なる修道女 エミリー・クルスの友愛の物語
―――ヴォートゥミラ大陸には数々の逸話が残され、それらは時として話題の種になり、人々を愉しませている。
霊に救われたと語る修道女。
島国の常世から来訪した、夜盗の守り神を信奉する奇妙な盗賊。
同じく常世の異邦人で武を極めんとする、武闘家の武勇伝。
どれもこれも信じがたい物語ばかりだが、この際真偽など、どうでもいいだろう。
―――我は異世界にて囁かれた、無名の冒険者や村人の記録を紡ぐのみ。
真実は書
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第22話 悪魔たちの狂宴、悪意の嘲笑
地獄の都にある外壁は金で彩られ、内部にはルビーやサファイアなど、高価な宝石が至る場所に埋めこまれた城。
強欲を司る悪魔マモンと建築家ムルキベルにより建造された、地上のどの城よりも豪華絢爛な万魔殿。
上位の悪魔が棲む、ギリシャ語で〝デーモンのすべて〟を意味する城に、地獄の三支配者と邪霊六座が一堂に会し、今後の方針について話し合う最中であった。
「ええい、フルーレティはまた欠席か! 奴を処分すべきで
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第21話 迷い人の救い
僕と機くんは肩を抱き、支え合いながら、覚束ない足取りで英子さんの元に向かう。
傷口が閉じていないせいか時折振り返ると、歩んだ足跡の如く血の跡が残されていた。
道中インセクトゥミレスの力が、切れたのだろう。
いつの間に僕も機くんも元の姿に戻っている。
何としても朝を迎えるまでには、彼をモルマスから脱出させたい。
到着するとなりふり構っていられず、英子さんの部屋の扉を叩く。
「急に扉が叩かれたから、
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第20話 〝普通の人間〟と僕、錆鉄の騎士、悪魔との友情
「思いの他、手こずったッス。でも、ここからが本番ッスよ!」
機少年はまた糸を再度取り出した。
しかも今度は3、4本同時に。
数が多い分、さっきとは異なる攻撃でこちらを翻弄してきそうだ。
「まだあの糸を隠し持っていやがったのか。しつけェな」
「目の色が違う。簡単に逃してはくれなさそうだぞ。簡単に捕まるなよ」
「……忠告は受け取っておくぜ。オメーも気をつけろ」
「油断はしないッス。あの人の指示通り
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第19話 激闘の中に紡がれる絆
「立ちやがれ、クソッタレ。野垂れ死ぬならテメーだけでくたばれや」
「……う、うぅ」
傷だらけの悪魔は、苛立ちを青年にぶつける。
叱咤された石動は奥歯を噛み締め、ハリーからの暴言に心の中で反抗していた。
具合が悪い時に怒鳴られても、苛立ちが募るだけ。
(うるさいな、わかってるんだよ。できたらやってるよ!)
眉間に青筋を浮かべつつ、青年は何とか踏ん張った。
陸に打ち上げられた魚のように体を動かす