【有料】異世界のジョン・ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第34話 イーサンとソフィの過去その2 第35話 イーサンとソフィの過去その3 第36話 悪魔マイナデス 第37話 殺戮の預言 第38話 嘲弄の弓矢 その他キャラクター説明など
第34話 イーサンとソフィの過去その2
数年前 魔毒竜殲滅戦にて
「ラッキーナンバーは18! イーサン、ソフィ、ちゃんと意識しておけよ〜。後で後悔しても遅いからな〜」
茶髪に碧眼の男性が忠告する。
白のローブには数字の形をした装飾品をじゃらじゃら括りつけられ、歩く度に金属音が鳴った。
彼の名はノア・コールマン。
イーサンの親友であり、長年の付き合いの冒険者。
占星術、タロットの知識と実践を冒険者の戦闘に流用した私たちとは、出逢ってすぐ意気投合した。
彼が扱うのは数秘術で、占数勇士(ヌメロ・ブレイバー)の名を王国に轟かせる実力者だ。
「ノアの占いは当てにならない。人の宿命を知るには、星を読むのが確実だからな」
「おいおい、占星術(アストロロジー)はオカルトでないといいたいのか? 数秘術(ヌメロロジー)、馬鹿にすんなよ〜」
「占星術は学問だ。数秘術と違ってな」
言い張るイーサンに困ったように微笑むノアにつられ、私にも笑いが込み上げる。
「またそれかよ、イーサン。ソフィに呆れられるぞ」
「君はどう思う、ソフィ。由緒正しい占星術こそが、人を導くに値するだろう?」
「いや、数秘術だって役に立つよな。頼む、数秘術が一番だって言ってくれ!」
問われ、私は頭の中の素朴な考えを吐露した。
「う〜ん。解釈次第でどうにでも受け取れるタロットが、私は最良だと思うけど」
「……ンアーッ! ソフィのせいで更にややこしくなったじゃんか。ま、俺たちは仲間で好敵手だ。実力のある奴が正しいってことで」
ノアが強引に話を終わらせるも、横のイーサンは不満気に自らを指差し示す。
この中で俺が一番強い、と言いたげに。
「おお、アンタらがいれば大丈夫だな。なんたって英雄だもんな」
魔毒竜退治に集まった冒険者は、英傑と称される彼らを、歯が浮くような台詞で賛辞した。
英雄か、と呟くイーサンは目を細め、褒め称える冒険者を一瞥する。
「魔毒竜やそれに匹敵する魔物を倒したから、英雄になるんじゃない。きっとその人についていきたいと感じさせて、初めて本物の英雄になれるんじゃないかな。イーサン」
「そうかもな」
英雄の在り方を耳にし、彼も納得したように頷いた―――その瞬間!
突然、周囲一帯の森は夜の帳が降りたような暗闇に包まれた。
何事かとざわつく冒険者の声は、爆音を思わせる音に掻き消されていく。
冒険者らを高みから見下ろす、〝何か〟がいた。
そして、その〝何か〟に見つかれば命はない。
絶対的な力の前に冒険者らには談笑する余裕などとうに消え失せ、ただただ生命の危機から解放されるのを待つばかりであった。
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