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異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ あらすじ エピローグ 殺意と憎悪の萌芽
異世界転移×ファンタジー×悪魔×昆虫×小説
裏切りと不法により、突如見舞われた不運、幸福な家庭と不幸な石動一家との対比、そして初恋の失恋。
度重なる絶望を味わい、生きる意義と気力を失った青年、石動祐(いするぎ・ゆう)は、悶々とした日々を過ごしていた。
空白にも似た日常を送る彼はある存在へ導かれ、現代でない何処かへと飛ばされる。
街中でふと瞼を開けると、そこには近代ヨーロッパを彷彿とさせる、異世
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第27話 占星勇士(アストロ・ブレイバー)と占札勇士(アルカナ・ブレイバー)
王国に以前現れたという魔毒竜が、卵を産み落としていたとの噂が流れた。
民に深い爪痕を残した怪物の復活を危惧し、自発的に揃った冒険者らは、まるで一つの生き物であるかのように、王国近くの草原へと集結する。
今の光景を上空から眺めたら、鰯の群れのように映るだろう。
無論卵の話は悪魔を討伐するという、本来の目的を隠す為に流布してもらった嘘だ。
これだけの冒険者がいれば、迂闊には手が出せまい。
しかし悪魔が
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第25話 悪魔掃討作戦
あれから数日後、王からの遣いと名乗る男性が現れた。
彼からの情報をまとめると、人が突如として悪魔の姿へと変異する、狂気に陥った冒険者らが殺し合う、冒険者らが不可解な壊疽傷を起こすなどの被害が報告されているようだ。
不可解な事件を全て悪魔の仕業と断定するのは、どうかと思う。
だがしかし怯える人々の不安を解消するには、悪者が必要なのだろう。
現代社会で無職や障害者が、社会を破滅に導く存在として扱われる
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第24話 異なるが故の対立、武器に選ばれし者たち
一行は宿をとると、一階の広間に集まっていた。
そしてテーブルを挟み向かい合うと、今後の方針について話し合うこととなる。
長椅子には三人しか座れず、アシェルは妖精を膝に乗せて傾聴する姿は実に愛らしい。
煉瓦の壁の四角形に空いた穴から、羊皮紙越しに日の光が差し込む。
ガラス窓は高価で手が届かない店や、王国から離れた農村ではこれが一般的らしい。
酒場なら内部が暗くとも陽気な雰囲気があるものの、宿屋は水を
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第23話 道徳の指針、新たな仲間
翌日
「今後の冒険資金として金貨をたんまり貰ったわ。これは武具の調達に充てましょう。王国から直々の依頼、絶対に成功させるわよ!」
「やっぱり直美さんに任せて正解だったね」
「やるなァ、嬢ちゃん。こっからオレサマの成り上がりの序章が始まるぜ!」
「おー、直美さん。すごいです~!」
「上手く王族に取り入ったな、悪魔じみた交渉術だ」
王国へと戻った一行は酒場に集い、酒を嗜み、注文した食べ物に舌鼓を打
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第22話 悪魔たちの狂宴、悪意の嘲笑
地獄の都にある外壁は金で彩られ、内部にはルビーやサファイアなど、高価な宝石が至る場所に埋めこまれた城。
強欲を司る悪魔マモンと建築家ムルキベルにより建造された、地上のどの城よりも豪華絢爛な万魔殿。
上位の悪魔が棲む、ギリシャ語で〝デーモンのすべて〟を意味する城に、地獄の三支配者と邪霊六座が一堂に会し、今後の方針について話し合う最中であった。
「ええい、フルーレティはまた欠席か! 奴を処分すべきで
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第21話 迷い人の救い
僕と機くんは肩を抱き、支え合いながら、覚束ない足取りで英子さんの元に向かう。
傷口が閉じていないせいか時折振り返ると、歩んだ足跡の如く血の跡が残されていた。
道中インセクトゥミレスの力が、切れたのだろう。
いつの間に僕も機くんも元の姿に戻っている。
何としても朝を迎えるまでには、彼をモルマスから脱出させたい。
到着するとなりふり構っていられず、英子さんの部屋の扉を叩く。
「急に扉が叩かれたから、
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第20話 〝普通の人間〟と僕、錆鉄の騎士、悪魔との友情
「思いの他、手こずったッス。でも、ここからが本番ッスよ!」
機少年はまた糸を再度取り出した。
しかも今度は3、4本同時に。
数が多い分、さっきとは異なる攻撃でこちらを翻弄してきそうだ。
「まだあの糸を隠し持っていやがったのか。しつけェな」
「目の色が違う。簡単に逃してはくれなさそうだぞ。簡単に捕まるなよ」
「……忠告は受け取っておくぜ。オメーも気をつけろ」
「油断はしないッス。あの人の指示通り
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第19話 激闘の中に紡がれる絆
「立ちやがれ、クソッタレ。野垂れ死ぬならテメーだけでくたばれや」
「……う、うぅ」
傷だらけの悪魔は、苛立ちを青年にぶつける。
叱咤された石動は奥歯を噛み締め、ハリーからの暴言に心の中で反抗していた。
具合が悪い時に怒鳴られても、苛立ちが募るだけ。
(うるさいな、わかってるんだよ。できたらやってるよ!)
眉間に青筋を浮かべつつ、青年は何とか踏ん張った。
陸に打ち上げられた魚のように体を動かす
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第18話 真夜中の襲撃、インセクトゥミレスの脅威
「……うぅ、気持ち悪い。アイツめ、酒に飲まれたな?」
吐き気を催した青年は窓を開けると、ハリーに恨み言を呟いた。
契約の悪影響とでもいうべきか。
悪魔の体の不調も、自分にもろに影響を与えるのが最悪だ。
モルマスの化け物退治の件は王国にも伝わっているらしく、戻ったら王国から直々に褒章が得られるとのこと。
僕が全ての泥の悪魔を倒した訳ではないが、冒険の協力をしてもらえるなら、脱出の一助となるだろう。
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第17話 偽りの英雄、直美の呪い
焼け野原と化し、剥き出しになった大地には、横たわった遺体だけが残されていた。
ヴォートゥミラ大陸は魔法のある世界。
まだ助かる見込みはある。
それに戦って散った高潔な魂を、野ざらしにするわけにはいかない。
青年は冷たい体を背負い、教会へと運んでいく。
運よく蘇生に成功した者。
魔法の失敗で灰になり、帰らぬ人間になった者。
それぞれに生と死の運命が下った。
戦いを終え、戦死した冒険者らに祈りを捧げて
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第16話 戦いの終結、新たなる謎
「Shit, there are too many of them! (クソッ、数が多すぎる!)」
「I will fight too.(儂も戦いますぞ)」
エルフの少女らしき人物はしかめっ面で愚痴を零すと、5、6本同時に矢をつがえ、一気に放つ。
彼女の腕は確かで百発百中で虫に命中するも、空を埋め尽くす軍勢の数を御するには、あまりにも手数が足りない。
杖を持つ老人も彼女と共に応戦するが、多勢に無
異世界のジョン·ドウ ~オールド・ハリー卿にかけて~ 第15話 巡り合う強者たち、災い呼ぶ迷い人
儂はヴォートゥミラ大陸の荒くれ者共を置き去りにして、一足先に最前線へと向かう。
まだまだ若い者たちには負けられぬ。
それに天涯孤独の儂よりも、未来ある若人が生き残るべきだろう。
老いぼれの意地が、儂を戦地に駆り立てた。
「ん、こんな場所に……人……ではないな」
老爺の視線の先に人影が見えた。
草原に佇む白髪の修道女は、いずれ溶けて消える雪の如き儚さすら感じる清楚で可憐な見た目とは裏腹に、おぞま