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親愛なる子殺しへ 前編
第二駐車場から保育園まで、大人の足なら片道四分。幼児連れの場合でも、順調にいけば十分足らず。
それでは、順調にいかなければどのくらい時間がかかるのか。その答えは、むしろ私が教えて欲しいところだ。
園庭に隣接した第一駐車場を使用していいのは、ベビークラスと一歳児クラスだけ。それ以外の保護者は、園から離れた第二駐車場を利用する事になっている。田舎出身の私は、この街の駐車事情に未だ馴染めない。
『親愛なる子殺しへ』Twitter感想まとめ
私は普段Twitterでnoteを紹介しているので、そのままTwitterの方で感想をいただく事が多いです。
しかし、Twitterのリプライは次から次に流れて消えていくので、そちらでいただいた『親愛なる子殺しへ』への感想の一部をこちらに貼る形で残すと共に、皆様にもご紹介させていただきます。
本来ならいただいたもの全てをご紹介したいところですが、量的な問題もありますのでご了承下さい。
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親愛なる子殺しへ 後編
いつから千里さんと話をしなくなったのだろう。
両親があの町に家を買ったのは、私が幼稚園に入るタイミングに合わせての事だったらしい。だから、私の記憶はほとんどあの家で始まっている。
幼稚園までは、徒歩ですぐ。坂を下る途中に馬淵家の前を通り、時々そこから千里さんとお母さんが出てくるタイミングと重なった。母親同士が話していくうちに、お互い同じ市の出身で年齢も近いと分かり親しくなっていき、私も千
親愛なる子殺しへ 中編
『世間』という曖昧な定義の界隈で、数多くの母親に一方的に押される、『母親失格』の烙印。
その烙印を押された者達の中でも、一番の頂点に君臨すると言うべきなのか、それとも最底辺に属すると言うべきなのか。とにかく、とりわけ究極の存在である、子殺しの母へ。
私は知りたい。あなたと私、何が違って、どこまで同じなのか。
だから、貴方について考え続ける事を、どうか許して下さい。
それが私の贖罪
眠りの森の植木屋さん 第四話「答え合わせ」
小学生男子にありがちな夢物語だと思われるだろうが、卒業文集の『将来の夢』の寄せ書きにはJリーガーと書いた。
地元のジュニアチームで向かうところ敵無しだった俺は、強豪クラブのジュニアユース(中学生部門)に合格し、いつか自分はサッカー選手になるのだと本気で信じていた。けれど、ジュニアユースの二年目、早くも気付いたのだ。ジュニアの頃に敵無しだったのは単に周りの子どもより体格に恵まれていたからで、ど
眠りの森の植木屋さん 第三話「茂みの中の迷子達」
ああ、また思考が逸れた。
私は財布を差し出しながら、焼き肉屋であずみちゃんに言われた言葉を思い出していた。
「花。白髪、一本ピーンと立ってるよ。」
三十六にもなれば、自分の肉体に老化を感じる事も少なく無い。初めて白髪が生えたのはここ一年程の話で、慌てて周囲に聞いてみたらむしろ私は遅い方らしかった。
つまり、たかが一本だけ白髪が立っているくらい優秀な部類だし、そしてそれは普通なら気付
眠りの森の植木屋さん 第二話「落葉樹(らくようじゅ)の王子様」
植木屋の繁忙期は、大きく分けて二回。
一つは、梅雨明けからお盆前。雨で栄養を蓄えた草木が一気に成長する季節で、そしてお盆の来客に備えた需要が多い時期だ。
もう一つは、秋から年末にかけて。次々と枯れ葉をまき散らす落葉樹の剪定と、正月に向けての依頼、それらをこの短期間に集中してこなす事になる。
もちろん請け負っている仕事はそれぞれなので一括りには出来無いが、少なくとも兄弟二人だけのこの小
fell in ...
私より白い肌も、真っ直ぐで単純な性格も、犬のように懐いてくれるところも、それなりに好きではあった。だけど正直、君と付き合い始めた時点の私の気持ちは「まぁいいかな」で。
それが本気になったのは、今この瞬間、君の泣き顔が可愛過ぎたからで、それで私は自分の性格がねじくれ曲がっている事を改めて認識した。
いや、曲がっている事はどうでもいい。これは単なる責任逃れの開き直りでは無いし、受容出来ているなんて