ふたごやこうめ

小説を色々書き散らかしています。処女作「いぬじにはゆるさない」は、大昔の実体験が元ネタ…

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小説を色々書き散らかしています。処女作「いぬじにはゆるさない」は、大昔の実体験が元ネタ、半分フィクション/初の100%創作「だけど願いはかなわない」→メフィスト賞『印象に残った作品』/「親愛なる子殺しへ」→note創作大賞中間選考通過

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  • 短編小説『親愛なる子殺しへ』一覧

    前・中・後編の短編小説です。実際にあったショッキングな事件が元になっています。繊細な方はご注意下さい。

  • あいかわ双子は恋が下手

    高校の入学初日、五十音順に並んだ教室の席。隠キャの合川秋生(あいかわ あきお)の高校生活は、帰国子女の双子の姉弟、相河朱里(あいかわ あかり)と相河旭(あいかわ あさひ)に挟まれる形でスタートした。 クスっと笑えてちょっぴりジーンとなれる、青春ラブコメディ!!

  • 眠りの森の植木屋さん 各話一覧

    『大人って、一種類じゃない。』 ライターの花は思考性の多動さん。 独身、恋人無し。それよりも、自分の世界が大事。 ひょんな事から同い年の植木屋・高虎(たかとら)と出会うが、強面な見た目に反して自分に自信が無い高虎と、自分の世界に籠もりきりの花は、すれ違いにすれ違っていく。 三十六歳、微妙に絶妙なお年頃。 奇人変人、発達グレーな大人達のラブコメ小説!!

  • だけど願いはかなわない

    ※メフィスト賞『印象に残った作品』選出作品 この小説の登場人物達は、皆、それぞれの願いを抱きながらも嘘をついて生きています。 身分を偽って出会った相手を好きになってしまった「ハルキ君」。 どこかミステリアスな「スミちゃん」。 嘘つきな大人達の複雑な恋愛のお話…かと思いきや、物語は意外な方向に…。

  • 大濠公園シリーズ『ヤブサカ君はやぶさかではない』他

    福岡の大濠公園が舞台の、短編オムニバス小説集です。全てのお話がつながっています。

最近の記事

  • 固定された記事

親愛なる子殺しへ  前編

 第二駐車場から保育園まで、大人の足なら片道四分。幼児連れの場合でも、順調にいけば十分足らず。  それでは、順調にいかなければどのくらい時間がかかるのか。その答えは、むしろ私が教えて欲しいところだ。  園庭に隣接した第一駐車場を使用していいのは、ベビークラスと一歳児クラスだけ。それ以外の保護者は、園から離れた第二駐車場を利用する事になっている。田舎出身の私は、この街の駐車事情に未だ馴染めない。  駐車場を出て小さな交差点を曲がると、保育園までは住宅街の細い一本道が続く。

    • 『親愛なる子殺しへ』Twitter感想まとめ

       私は普段Twitterでnoteを紹介しているので、そのままTwitterの方で感想をいただく事が多いです。  しかし、Twitterのリプライは次から次に流れて消えていくので、そちらでいただいた『親愛なる子殺しへ』への感想の一部をこちらに貼る形で残すと共に、皆様にもご紹介させていただきます。  本来ならいただいたもの全てをご紹介したいところですが、量的な問題もありますのでご了承下さい。  noteの読者様も、Twitterの読者様も、いつも本当にありがとうございます。  

      • 親愛なる子殺しへ  後編

         いつから千里さんと話をしなくなったのだろう。  両親があの町に家を買ったのは、私が幼稚園に入るタイミングに合わせての事だったらしい。だから、私の記憶はほとんどあの家で始まっている。  幼稚園までは、徒歩ですぐ。坂を下る途中に馬淵家の前を通り、時々そこから千里さんとお母さんが出てくるタイミングと重なった。母親同士が話していくうちに、お互い同じ市の出身で年齢も近いと分かり親しくなっていき、私も千里さんと仲良く手を繋いで園まで歩いた。  幼稚園を卒園すると小学校は一気に遠く

        • 親愛なる子殺しへ  中編

           『世間』という曖昧な定義の界隈で、数多くの母親に一方的に押される、『母親失格』の烙印。  その烙印を押された者達の中でも、一番の頂点に君臨すると言うべきなのか、それとも最底辺に属すると言うべきなのか。とにかく、とりわけ究極の存在である、子殺しの母へ。  私は知りたい。あなたと私、何が違って、どこまで同じなのか。  だから、貴方について考え続ける事を、どうか許して下さい。  それが私の贖罪になると、思わないわけでは無いけれど。 ・・・・・  自分のスマホから通話の

        • 固定された記事

        親愛なる子殺しへ  前編

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        • 短編小説『親愛なる子殺しへ』一覧
          6本
        • あいかわ双子は恋が下手
          6本
        • 眠りの森の植木屋さん 各話一覧
          4本
        • だけど願いはかなわない
          28本
        • 大濠公園シリーズ『ヤブサカ君はやぶさかではない』他
          3本
        • 穴 ~FF内から失礼します!!~
          4本

        記事

          あいかわ双子は恋が下手・夏 後編

           見た目が良いというのは、生まれながらに授けられたとんでもないチート能力だろう。  金持ちの奥さんは美人と相場が決まっているし、男の場合でも顔に自信がある奴とそうで無い奴とでは人生の伸びしろは天と地の差だ。アメリカの裁判では、被告人の見た目の良し悪しが陪審員の心象を大きく左右するとすら言われているらしい。  貧乳美少女の相河朱里は、俺が今までの人生で出会った三次元の女の子の中で、頭一つ抜けているどころか天井に突き刺さるレベルで整った顔立ちをしている。  一山いくらのアイ

          あいかわ双子は恋が下手・夏 後編

          あいかわ双子は恋が下手・夏 中編

           俺はその日、名も知らないお姉さんのおっぱいを見ていた。  長年のコンプレックスであるニキビ治療をするため近所のジジイがやっている皮膚科の門を叩きかけた俺は、どうせ通学用の定期があるのだからと思い直し、駅二つ先にある評判の良いスキンクリニックに通い始めた。  もうすぐ夏休みというある土曜日、受診を終えて帰りの電車に乗り込むとちらほらと空席はあったが、俺はどうせ二駅だからと自分に言い訳をしながらドア付近に立った。どの席を選択しても、隣が異性になる事が避けられそうになかったか

          あいかわ双子は恋が下手・夏 中編

          あいかわ双子は恋が下手・夏 前編

          このお話はこちらの続編です↓  チィチィーと、小さく可愛らしいニイニイ蝉の鳴き声には、我慢が出来た。  ジージジーとやかましいアブラ蝉の鳴き声に、思わず意識が逸れる。  そして、チュイーン・ギリギリギリギリ…という聞き慣れない機械音を放つ虫の音の登場に、クラス委員の鈴木がボソリと呟いた。 「お前っ…本当に虫なのかよ…。」  その言葉に、鈴木の両側で座禅を組んでいた女子二人が吹き出し、釣られて俺も吹き出す。しまった。  そう思ったものの時既に遅く、袈裟姿の山口先輩

          あいかわ双子は恋が下手・夏 前編

          眠りの森の植木屋さん 第四話「答え合わせ」

           小学生男子にありがちな夢物語だと思われるだろうが、卒業文集の『将来の夢』の寄せ書きにはJリーガーと書いた。  地元のジュニアチームで向かうところ敵無しだった俺は、強豪クラブのジュニアユース(中学生部門)に合格し、いつか自分はサッカー選手になるのだと本気で信じていた。けれど、ジュニアユースの二年目、早くも気付いたのだ。ジュニアの頃に敵無しだったのは単に周りの子どもより体格に恵まれていたからで、どうやら自分はちょっとばかり運動神経が良いだけの凡人でサッカーの才能があるわけでは

          眠りの森の植木屋さん 第四話「答え合わせ」

          【短編小説】私の恋人

           真っ暗な部屋の中、唯一明かりを放っているのは、薄ピンク色のノートパソコン。去年の恋人の誕生日に、私が贈ったものだ。  五歳年上の恋人は、本当は可愛いものが大好きなのに自分で買ったりするのは気恥ずかしいらしく、私がこの色を選んで贈った時には苦笑いしていたくせに、今ではすっかりお気に入りだ。マウスやプリンターまで、同じ色で揃えている。  私は今、そのノートパソコンの画面を無断で覗き込み、そこに表示されているSNSの書き込みを眺めながら、悪夢でも見ているような気分で一人呟いた

          【短編小説】私の恋人

          眠りの森の植木屋さん 第三話「茂みの中の迷子達」

           ああ、また思考が逸れた。  私は財布を差し出しながら、焼き肉屋であずみちゃんに言われた言葉を思い出していた。 「花。白髪、一本ピーンと立ってるよ。」  三十六にもなれば、自分の肉体に老化を感じる事も少なく無い。初めて白髪が生えたのはここ一年程の話で、慌てて周囲に聞いてみたらむしろ私は遅い方らしかった。  つまり、たかが一本だけ白髪が立っているくらい優秀な部類だし、そしてそれは普通なら気付かないような些細な事であったり、仮に気付いたとしても見て見ぬ振りをするような話な

          眠りの森の植木屋さん 第三話「茂みの中の迷子達」

          眠りの森の植木屋さん 第二話「落葉樹(らくようじゅ)の王子様」

           植木屋の繁忙期は、大きく分けて二回。  一つは、梅雨明けからお盆前。雨で栄養を蓄えた草木が一気に成長する季節で、そしてお盆の来客に備えた需要が多い時期だ。  もう一つは、秋から年末にかけて。次々と枯れ葉をまき散らす落葉樹の剪定と、正月に向けての依頼、それらをこの短期間に集中してこなす事になる。  もちろん請け負っている仕事はそれぞれなので一括りには出来無いが、少なくとも兄弟二人だけのこの小さな植木屋事務所の十一月のスケジュールは無茶の一言で、一日も休みが無いまま下旬に

          眠りの森の植木屋さん 第二話「落葉樹(らくようじゅ)の王子様」

          眠りの森の植木屋さん 第一話「眠り姫達は自力で起きる」

          「バーについて、一のポジションから。」  レッスン場に母の声が響き渡り、レオタード姿の生徒達の背筋が一斉にピンと伸びる。  足の形は、アン・ドゥオール。左右の踵同士を背面でつけ、右のつま先から左のつま先までを一本の線に。初心者が悪戦苦闘するこのポーズは、物心が付いた時には自然と身についていた。  レッスン場が心地の良い緊張感に包まれ、ジュニアクラスの子ども達の手が足が次々と同じ形を辿り、その合間合間に母の声が飛ぶ。 「〇〇ちゃん、お尻を引かないで。」 「△△くん、い

          眠りの森の植木屋さん 第一話「眠り姫達は自力で起きる」

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          私より白い肌も、真っ直ぐで単純な性格も、犬のように懐いてくれるところも、それなりに好きではあった。だけど正直、君と付き合い始めた時点の私の気持ちは「まぁいいかな」で。 それが本気になったのは、今この瞬間、君の泣き顔が可愛過ぎたからで、それで私は自分の性格がねじくれ曲がっている事を改めて認識した。 いや、曲がっている事はどうでもいい。これは単なる責任逃れの開き直りでは無いし、受容出来ているなんて高尚な話でも無くて、もしかしたら脳に欠陥があるのかもと中二病っぽい事は考えてみる

          あいかわ双子は恋が下手 後編

           相河旭は興奮気味らしく、その口調は少しずつ早くなっていく。 「移民って言っても、メインはEuropean。国民の九十五%以上がwhiteの国だ。Asianはあくまでマイノリティ。黄色い肌、ひ弱な骨格、平べったい顔、たどたどしい英語、それら全てが異質な存在なんだ。」  それを聞いている俺の背筋は、無意識のうちに真っ直ぐに伸びていた。これから続く話は、どう考えてもキラキラとした海外生活の話ではない。 「九歳で日本を離れて、しかもメルボルンには日本人学校だってあるのに地元の

          あいかわ双子は恋が下手 後編

          あいかわ双子は恋が下手 中編

           小学生までの俺は、そこそこ人生上手くいっていたと思う。  成績が良かったおかげで勉強熱心なタイプの男子達とつるんでいたし、教師からの評判も上々。女子は少し苦手だったけれど班やグループで行動する際に普通に口を利くくらいの事は出来ていた。半不登校になったのは、中学からだ。  親しかった友達は軒並み私立中に進学してしまい、新しい友人も出来ずにクラスから浮き始めた。そしてタイミングの悪い事に、近視が進んで眼鏡が必要になったのとほぼ同時、大量のニキビに悩まされるようになったのだ。

          あいかわ双子は恋が下手 中編

          あいかわ双子は恋が下手 前編

           一年一組、出席番号。  一番、相河朱里(あいかわ・あかり)。  二番、合川秋生(あいかわ・あきお)。  三番、相河旭(あいかわ・あさひ)。  この、日本の教育現場において最もポピュラーであろう五十音順というルールによって、双子の姉弟に挟まれる形になり、「双子じゃ無い方のあいかわ」と呼ばれる高校生活が始まったのは、約三ヶ月前の事。  お笑いコンビの目立たない方を「じゃ無い方芸人」なんて言って虚仮にする事から察して欲しいが、相河達の方は双子の中でも珍しい男女の双子とい

          あいかわ双子は恋が下手 前編