『大人って、一種類じゃない。』
ライターの花は思考性の多動さん。
独身、恋人無し。それよりも、自分の世界が大事。
ひょんな事から同い年の植木屋・高虎(たかとら)と出会うが、強面…
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眠りの森の植木屋さん 第二話「落葉樹(らくようじゅ)の王子様」
植木屋の繁忙期は、大きく分けて二回。
一つは、梅雨明けからお盆前。雨で栄養を蓄えた草木が一気に成長する季節で、そしてお盆の来客に備えた需要が多い時期だ。
もう一つは、秋から年末にかけて。次々と枯れ葉をまき散らす落葉樹の剪定と、正月に向けての依頼、それらをこの短期間に集中してこなす事になる。
もちろん請け負っている仕事はそれぞれなので一括りには出来無いが、少なくとも兄弟二人だけのこの小
眠りの森の植木屋さん 第三話「茂みの中の迷子達」
ああ、また思考が逸れた。
私は財布を差し出しながら、焼き肉屋であずみちゃんに言われた言葉を思い出していた。
「花。白髪、一本ピーンと立ってるよ。」
三十六にもなれば、自分の肉体に老化を感じる事も少なく無い。初めて白髪が生えたのはここ一年程の話で、慌てて周囲に聞いてみたらむしろ私は遅い方らしかった。
つまり、たかが一本だけ白髪が立っているくらい優秀な部類だし、そしてそれは普通なら気付
眠りの森の植木屋さん 第四話「答え合わせ」
小学生男子にありがちな夢物語だと思われるだろうが、卒業文集の『将来の夢』の寄せ書きにはJリーガーと書いた。
地元のジュニアチームで向かうところ敵無しだった俺は、強豪クラブのジュニアユース(中学生部門)に合格し、いつか自分はサッカー選手になるのだと本気で信じていた。けれど、ジュニアユースの二年目、早くも気付いたのだ。ジュニアの頃に敵無しだったのは単に周りの子どもより体格に恵まれていたからで、ど