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読後感を保証するコラム

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ハッピーエンド至上主義者による、絶対上向きにおわる話。後味だいじ。いちばんだいじ。
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2021年1月の記事一覧

ハンプティは元には戻らない。玉子を見ると思い出す、玉子を横取りしたら、肺結核の父が喀血した本の話。

ハンプティは元には戻らない。玉子を見ると思い出す、玉子を横取りしたら、肺結核の父が喀血した本の話。

わたしはたまごが好きである。
今夜はのこりもので済ませようと思って、1品足すためにたまごを焼いたら、そのたまごだけ完食してしまった。
こどもか。
その次に、まだ食指の動く、ポタージュをのみほした。
ポタージュはカボチャが至高だと思っているけれど、ジャガイモも、なかなかいける。
さいごにのこった、たいしておいしくない、ホワイトシチューを平らげながら、これを書いている。
たいしておいしくないものは、冷

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アンドロイドは電気羊の夢を見る。人間にもスリープボタンがあればいいと、Siriはいう。

アンドロイドは電気羊の夢を見る。人間にもスリープボタンがあればいいと、Siriはいう。

わたしは妄想族である。彼我のさかいを、意味なくこえる。ひんぴん、時空のはざまに漂いでる。
いまは特に、かぜをひいているので、朦朧としている。
その茫漠に、おぼろに浮くものがある。
 
 目のまえに、おりたたんだハガキがみえる。シャーペンの文字がこすれて流れている。トメやハネがしっかりでている。これは知っている。高3のときのだ。
字を読もうと思うと、ひとりでに浮いてきた。ひらがなのかたちが見える。

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おとなになってからの友情はありえるのか。平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」

おとなになってからの友情はありえるのか。平尾誠二と山中伸弥「最後の一年」

まだまだ若いラグビー界の伝説が、ある日突然、末期ガンになった。
高校時代、その伝説にあこがれたノーベル賞受賞者が、医師として、親友として、その最後の挑戦を見届ける。

この文言だけを読んで、想像する内容そのままの本。
文面がやわらかく、暴力的なところも、血をふりしぼるようなところもなく、終始、淡々としている。

おとなになってからの友情はありえるのか。
悲劇をまえにして友情は、美しいままでありえる

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燃えあがるノートルダム寺院をかこった市民たちが、アヴェ・マリアを歌っているというニュースを聞いたとき。

燃えあがるノートルダム寺院をかこった市民たちが、アヴェ・マリアを歌っているというニュースを聞いたとき。

ぞくりとした。
あまりに絵画的だった。
伝統的といってもいい。
中世ヨーロッパのできごとかと思った。

ノートル=ダムとは、わたしたちのマダム、すなわち聖母マリアを指す。
聖なるマリア寺院が、炎にのまれて、うち崩れてゆくさまを、民衆がとりかこむ。
聖歌をうたいながら。
マリアを祝福する歌をうたいながら。
教会のステンドグラスにでも、ありそうなモチーフである。
しばらくすると、教会史として絵画になる

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悲しむなかれ、我が友よ。旅の衣をととのえよ。遠き別れにたえかねて。惜別の歌。

悲しむなかれ、我が友よ。旅の衣をととのえよ。遠き別れにたえかねて。惜別の歌。

かなしみセンサーの鍛錬に余念がない、切なさ向上委員会のみなさま。
そう、あなたです。
だいたいこのタイトルを聞いただけで、ピンときますね。
きっと戦争だ。
あたりです。
友にわかれを告げるだけで。旅支度をするだけで。
出征する学友の、若いまなざしが、胸を去来します。
かなしい旋律シリーズ、つづきます。

惜別の歌は、一番はこう。

遠き別れに たえかねて
この高殿に 登るかな
悲しむなかれ 我が友

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