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雑記やエッセイ

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日々暮らしの中で感じたことを書いています。完全に個人的な日記だったりメモだったり。個人の感想に近いです。
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2020年11月の記事一覧

どうしようもなく好きな一冊 ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」

どうしようもなく好きな一冊 ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引書」

「自分にとって生涯手放せないであろう大事な1冊は?」と問われたら、
今の私は、ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引き書」(岸本佐知子訳 講談社)と答えると思う。

この本に初めて出会ったときの衝撃は、今でも忘れられない。

物語の中の登場人物が、言葉が、風景が、なにもかもが鮮明で、生き生きと、まるで目の前で息づいているかのような描写の数々。
その中に、癒しようのない、人々の孤独や絶望を垣間見る。

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村上春樹「午後の最後の芝生」と記憶を辿ることについて

村上春樹「午後の最後の芝生」と記憶を辿ることについて

村上春樹のはじめての短編集「中国行きのスロウボート」の中に「午後の最後の芝生」という言わずと知れた人気作品がある。

全体から漂う、夏のはじまりの気配と、
ゆったりと流れるテンポがとても心地よく、
時々、その世界観に浸りたくなる作品だ。

夏の季節の描写に惚れ惚れしてしまう。

記憶というのは小説に似ている、あるいは小説というのは記憶に似ている

これは文中の有名な一説である。

村上春樹作品は、

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よく晴れた土曜日の朝と、幸福の味

よく晴れた土曜日の朝と、幸福の味

週末の朝ごはんって、なんでこんなに幸せな気分にさせてくれるのだろう。
私は、朝がとてつもなく苦手だ。でも、週末の朝の時間、とりわけ、「朝食」が好きだから、週末は不思議といつもより早く目が覚める。

濃いめのコーヒー、こんがり焼いたトーストにたっぷりのバター、ふわふわのパンケーキに、色鮮やかでみずみずしいフルーツと、しゃきしゃきのルッコラ、ふっくらと焼いたオムレツに、マスタードをたっぷりつけていただ

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村上春樹と水曜日の午後のピクニックとの三度目の出会い

村上春樹と水曜日の午後のピクニックとの三度目の出会い

村上春樹の小説を10数年ぶりに読み返している。10代の時には共感してやまなかったのに今読見返すと、自意識が過剰すぎて自分の青春時代を垣間見ているようで、なんだか恥ずかしくなる描写もあるのだが、そんな気持ちになる文章は他の小説を思い返しても見当たらないし、一定層から「嫌い」とまで言われる作家なのだから、やっぱりつくづく唯一無二の作家なのだと感じている。

私は彼の短編にしても長編にしても、「これが彼

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忘れられない日々を過ごした新宿三丁目

忘れられない日々を過ごした新宿三丁目

「あの頃はよかった」という時期というのは誰にでもあるのだろうか。わたしはそんな話になると、いつも20歳ぐらいの頃を思い出す。池袋で一人暮らしをしていた普通の、やる気のない学生だった時。2003年から2007年ぐらいの頃。

当時の私は、昼は大学、夜は新宿三丁目の居酒屋でバイトをしている毎日だった。通っていた女子大には、なじめる友人がいなかったのに、なぜかその居酒屋に集まってきた他校の大学生、フリー

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ポートランドというワンダーランドと私の理想の暮らし方

ポートランドというワンダーランドと私の理想の暮らし方

今から3年ほど前、私が東京から今住んでいる地方に移住して2年ほど経った頃に、ポートランドをひとりで旅をした。
元々、ひとり旅自体は好きでよく海外を旅していた私が、その時に真っ先に行きたいと思ったのが、人生で2度目となるポートランドだった。

ポートランドはアメリカ西海岸、オレゴン州最大の都市だ。
中学生の時にホームステイをして、自分の価値観を覆された場所、つまり自分自身のルーツともいえる場所だ。「

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