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1人百人一首

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1人百人一首〜藤の傘〜

雨の日は交差点が滲んでていつもよりかは決められなくなる

雨濡らす丸い額と藤の傘今日はビールの気分じゃない

一人百人一首〜来航〜

星空はあばたのように降り注ぐ愛し愛し海鳴りの人

星々は見守るようで殺伐とただ私の気持ちを飲み込む

海鳴りは紫煙を吸い込む化け物で孤独に寄り添う妖かもす

大人にはなりきれないから真っ黒な海岸線をただなぞるだけ

海は生き空も生きてる午前2時私の輪郭曖昧のまま

波招く境界のない真っ黒に拐かされてチェーンを解いてる

下田の海は残酷に境をくれず真夜中の誘惑をする6月3日

1人百人一首〜血潮〜

今日もまたたくさんの人に愛されて新門司港の夕日を見ている

閉ざされた愛の記憶に潮が泣く血の繋がりは血の祈りなり

九州の匂いがするような田舎道かっ飛ばすわよ95キロ

もう一度何度でもって旅だった港の球体あれはなに?

またねって大きな影が映ってるとりかじいっぱいいざ人生へ

変わらないものもあったりなかったりバイキングでは上手に盛れない

九州(ここ)でしか見れない店が並んでるミスターマックス

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1人百人一首〜蛇含草と年の瀬〜

「服くらい着ろよ」「一服しているの」二人の終わりを纏った1K

年の瀬に買わない番号言ってみる白い煙とあなたの香り

わたくしは誰かのために生きている見つけれてないけどそのうちいつか

優しさを誰かにあげたりもらったり私は生きたこの1年を

来る年はどんな1年こうしたいああしたいとか若さの息吹

依存性チェックをしながら飲むチューハイ「大将おかわり」もう一杯

後朝の別れも惜しまぬ誰そかれ

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都々逸その4

あんたがいなけりゃ代わりはごまんとおおきにありがとまた来世

夏の終わりにこぼれる牡丹虚空に首振る扇風機

玉ねぎふたつ静かなキッチン1リットルの麦茶を飲み干す

嘘という名の本音をついて遊びだったよわかってる。

弱い男がふかした煙田んぼに力と書くのにね

そんなこんなで思い出したり嫌いになったり自由だね

苦虫数匹潰して飲めばこんなことでも思い出に

1人百人一首~十三、梅田東通り、またはどこかのインターチェンジ付近~

抱かれたのではない私が抱いたのよ笑い飛ばした始発の牛車

火をつけたたばこが腹の粘膜と感情刺激した夜明け頃

つぶされたシケモク見つめこの世界あんな未来とか考えてみる

ひさしぶり降りた駅だと君が言う私はあの夜あいつと降りた

かどわかし傷の舐め合いかりそめの十三栄商店街

1人百人一首〜憧憬〜

越えられぬ壁ならすり抜け遠回りなんでもいいけどなんにもできない

半袖のあなたに会ってみたいのよ聞きたい触れたい脱がせたい

家飲みは奴ケチャップが1番だそんなお酒をあなたと飲みたい

恋心隠して熟れる繊細な実であるけれど摘んだら終わり

もう少し黙っていればその心我と少しは近づいたのか

忘れない夜中に歩いたこの道をもうないふたりの小さな思い出

他愛もない仕草も癖も横顔も永遠にきらめく北斗七星

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一人百人一首〜間男〜

あの人の棄てた弁当ゴミ袋君が持ってく行ってらっしゃい

逃げるべき選択をするしないなどとっくの昔に決めてることでは

追い詰めることになるなら私などハナからいない方が華です

華だとか蝶もなれずわたくしはただ傷つけるスズメバチかも

高鳴りは禁煙すれば治るのかドライフラワーになってゆくのか

胸が痛い煙草のせいだきっとそう今日も今日とて会いたいような

1人百人一首~倫理の道~

君の知らない私がふえてゆくマックのポテトが今日はしょっぱい

引き返す電車はもうない11時倫理の道の片道切符

タップして品定めをすにんげんに許されるのか神でもないのに

干上がった池のほとりを連れられる我は飛べないカモの雛なり

閨の中視界が揺れる午前2時空き缶たちの視線は冷たい

1人百人一首~ラフマニノフピアノ協奏曲第2番第一楽章~

デカダンス未来のこととか不安とか赤い穂先がまぎらわせてる

群青に突き出す筒が見送った私もいつか白い煙に

さよならとここにいてとが潮時の私たちに満ちたり引いたり

これからの2人の世界決めかねてラフマニノフが静かに響く

1人百人一首~いもせ~

ふと伏せた瞳の奥の闇の中狭くて苦しい私の居場所

ぬばたまの紫の紐しめやかに左手で巻く君が弓引く

いつの日か君が振られるその日まで宙ぶらりんの私の愛よ

サヨナラの口づけ交わす夏の恋
君を連れ去る秋風涼し

さざなみの寄る君指を絡めては愛してくれた日々の残り香

雲間から漏れだす梯子くらいには好きで好きであなたが好きで

傷つけて傷つけられておわりなくわたしもあなたも欠陥品

この星は美しと思う

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1人百人一首~匂へよ椿~

あまい罠ながい幻さめる冬耳をすませて匂へよ椿

橘の葉に傷つけられし我の指午後のみぞれにかさぶた冷えぬ

瓶の底指で絡めてとったこと蜜の残りと君のいない冬

あの夏に確かに愛は本物で確かに地球は回っているよ

1人百人一首~願わくば~

甘い飴溶けてなくなる放課後の高鳴る鼓動春風二番

なによりも自分自身がでたらめと囁くみたいな春の夕暮れ

会いたいと思うことの虚しさは季節外れのひまわりみたいに