ジョナタン

レコードは月1枚まで。

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記事一覧

サミング・アップ(モーム)

 本書は「月と六ペンス」や「人間の絆」などを著作したサマセット・モームの自伝的エッセイである。  モームがどのような人生を送ってきたか。執筆動機や執筆にあたる技…

ジョナタン
4か月前
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一日の始まりに良い音楽を(古くて素敵なクラシック・レコードたち)

 あなたはクラシック音楽を聴いたことがあるだろうか。もちろん、テレビであったり、どこかの場所で流れていたり、あるいは学校などの式典などで聴いたりしたかもしれない…

ジョナタン
6か月前
3

関西の幻想郷、芦屋(自分的に)

 幻想郷のさざ波の音がまだ心の中に流れている。その音を聞いていると、普段の景色も少し違って見える。 ーーーーーー  誰しも普段の道の反対には、何があるのだろうと…

ジョナタン
11か月前
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単語帳、あるいは(短編)

 僕はスポーツ紙を握りしめ、改札を走り抜けた。もはや手に持つこの紙は、読みためのものか汗を拭くためのものなのか分からなかった。しかし電車に乗り遅れることはなかっ…

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とある日のキッチンにて

 人生において、いや人間関係において、影が潜んでいることは周知の事実である。どんなに好印象を抱いた相手であっても、影を覗いてしまうと疑心を拭うことは難しい。  …

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ビール瓶の蓋よ

 こんな嫌になるほど暑い時期の数少ない楽しみとして、ビールを飲むことがあるだろう。日中僕たちがどんなに太陽の日を吸い込もうが、それは全てビールを美味しく飲むため…

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愛する大人たち

 とある日、とある場所でとある人に「ここは何もなくてつまらない」と言われた。確かにそこには目立つものはなかった。決まった観光地はないし、信号は多いし、ホテルのシ…

5

旅の入り口

 僕は旅の目的地に着いた時の空気が大好きだ。自分の暮らしている街と似ているが、ちょっと違う。いや、かなり違う。  この違いは方言の違いによってもたらされるものか…

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サミング・アップ(モーム)

サミング・アップ(モーム)

 本書は「月と六ペンス」や「人間の絆」などを著作したサマセット・モームの自伝的エッセイである。

 モームがどのような人生を送ってきたか。執筆動機や執筆にあたる技法から、人間関係などの大きく人生に対しての考え方までも綴られている。著者の考えがユーモアを交えて分かり易く展開されており、読む者を惹きつけられる。

 特にモーム自身が語る「ユーモア」についての記述には興味が惹かれる。
ユーモアを持ち合わ

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一日の始まりに良い音楽を(古くて素敵なクラシック・レコードたち)

一日の始まりに良い音楽を(古くて素敵なクラシック・レコードたち)

 あなたはクラシック音楽を聴いたことがあるだろうか。もちろん、テレビであったり、どこかの場所で流れていたり、あるいは学校などの式典などで聴いたりしたかもしれない。

 そこで聴いた音楽はどれも退屈だと感じるかもしれない。少なくとも僕には退屈に感じる。聴くだけで偏屈な老人の顔に入った深い「しわ」をなぞっているような感覚がある。

 しかし、世の中にはクラシック音楽はたくさん存在する。そして、その中に

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関西の幻想郷、芦屋(自分的に)

関西の幻想郷、芦屋(自分的に)

 幻想郷のさざ波の音がまだ心の中に流れている。その音を聞いていると、普段の景色も少し違って見える。

ーーーーーー

 誰しも普段の道の反対には、何があるのだろうと考えたことがあるだろう。通勤、通学路で普段使う道。右折するところを左折する。3番線の電車ではなく4番線の電車を待つ。ショートヘアの恋人がいるのに、ロングヘアの女の子と寝る。(面白くない冗談)

 僕も大学の授業をさぼっては、普段行かない

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単語帳、あるいは(短編)

 僕はスポーツ紙を握りしめ、改札を走り抜けた。もはや手に持つこの紙は、読みためのものか汗を拭くためのものなのか分からなかった。しかし電車に乗り遅れることはなかった。

 僕は電車の座席に腰を下ろし、読むことも無くスポーツ紙を開いた。海外で活躍する日本人メジャーリーガーの話や、今週末に走る馬の話が書いていた。

 しかし、それらの内容はあまり頭に入ってこなかった。もちろん元より真剣に読み込むつもりな

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とある日のキッチンにて

 人生において、いや人間関係において、影が潜んでいることは周知の事実である。どんなに好印象を抱いた相手であっても、影を覗いてしまうと疑心を拭うことは難しい。

 外は暑く出かける気も起きない土曜の午前11時。今日は冷蔵庫にあるもので適当に昼食を作ることにしよう。冷蔵庫には昨日作っておいた麦茶がたっぷりとあった。人生において必要な貯えとは、お金なのではなくキンキンに冷えた麦茶なのだ。

 冷蔵庫には

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ビール瓶の蓋よ

 こんな嫌になるほど暑い時期の数少ない楽しみとして、ビールを飲むことがあるだろう。日中僕たちがどんなに太陽の日を吸い込もうが、それは全てビールを美味しく飲むための儀式なのだ。

 さて、風呂も入ったし、そろそろビールでも飲むとしようか。冷蔵庫からよく冷えたビールを取り出す。もちろん瓶に入ったビールだ。瓶ビールは清潔な味がして非常に美味い。

 あまり器用そうではないオープナーを蓋に引っ掛け、力を込

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愛する大人たち

 とある日、とある場所でとある人に「ここは何もなくてつまらない」と言われた。確かにそこには目立つものはなかった。決まった観光地はないし、信号は多いし、ホテルのシャワーも少しぬるかった。その場所は変な例えだけど、血が行き渡っていない足の末端部分のようだ。

 とある人は言った。「京都なら古くて面白いものも多いのに」僕はそれに同意したが、結局はその人の好みなのである。「何もない」と言うが、ホテルの向か

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旅の入り口

旅の入り口

 僕は旅の目的地に着いた時の空気が大好きだ。自分の暮らしている街と似ているが、ちょっと違う。いや、かなり違う。

 この違いは方言の違いによってもたらされるものかもしれないし、地下を通る下水道の違いかもしれない。旅は普段僕たちが見れていないものを見せてくれる。

 僕たちが普段見ていない場所にも当然人がいるし、そこには確かに彼らの暮らしがある。知らない言葉を使い、何か美味しいものを食べる。それは彼

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