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#私の作品紹介

0809:次なる出版を目指して

0809:次なる出版を目指して

秋からバタバタしていた共著が無事発刊された(書名はナイショ)。発行部数が少ないのと人数の多い共著書ということで印税額はお小遣いレベルではあるが、それでも嬉しいものだ。

公務員を早期退職した翌日に文筆業の開業届を出した身としては、ここで立ち止まるわけにはいかない。次なる出版を目指して、ある原稿の整理をしている。素材情報は十二分に溜まっているのだが、それを書籍として読むに足る文章に整形するのがそれな

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0362:小説『やくみん! お役所民族誌』[5]

0362:小説『やくみん! お役所民族誌』[5]

第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」(5)

<前回>

        *

 食事を終えた休息の時間。和水はラタンの椅子に腰を下ろしている。碧がかったガラスの湯飲みでジャスミンティーをすすり、ほう、と溜め息をつく。
 テーブルの向こう端にテレビのリモコンがあった。少し身体を伸ばせば届く位置だ。
 でも。
 和水はトイレから戻ってきた朗を見上げ、にやりと笑った。 
「オ

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0330:小説『やくみん! お役所民族誌』[4]

0330:小説『やくみん! お役所民族誌』[4]

第1話「香守茂乃は詐欺に遭い、香守みなもは卒論の題材を決める」(4)

<前回>

        *

 みなもの実家は、平成半ばに造成された比嘉今(ひがいま)町の新興住宅地にある。市町村合併によって県庁所在地・松映(まつばえ)市に組み込まれたものの、市中心部にある澄舞大学への通学には、徒歩と電車とバスで一時間あまりかかる。車で直行すれば15分ほどだが、免許を持たないみなもは公共交通機関に頼るほ

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0326:戦争と行政

0326:戦争と行政

 米軍撤退によってアフガニスタンでタリバンが復権しそうだ、という話をSNSでちらほら見掛けるようになったのは、数週間くらい前からだろうか。次第に「年内にタリバン政権が樹立するかも」「秋には」「夏の間は保たない」「二週間で」「数日で」と情報はどんどん短くなり、ついにカーブルが陥落。政府軍の抵抗がほとんどなく、本当に早い展開だった。

 私の世代にとっては、アフガニスタンといえばソ連の電撃的侵攻とそこ

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0311:やくみん覚え書き/掘り出す作業

0311:やくみん覚え書き/掘り出す作業

 小説『やくみん! お役所民族誌』が昨日で三回目のアップとなった。今のところ週1ペースなので、これを維持したいところだ。

 ここまでで約7600字(scrivener表示による)、原稿用紙換算19枚。作品の主舞台となる澄舞県消費生活センターがまだ登場していない(第5回の見込み)。このペースだと、第1話だけで300枚くらい行くんじゃないか。

 想定より展開のペースが遅い理由は、描写が細かくなって

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0293:小説『やくみん! お役所民族誌』連載前口上

0293:小説『やくみん! お役所民族誌』連載前口上

(1)はじめに 小説『やくみん! お役所民族誌』は、架空の自治体・澄舞(すまい)県の消費生活センターを主舞台にした公務員小説です。

 消費者行政という仕事は、法律によって与えられた行政調査・行政処分の権限を武器として悪質業者に立ち向かい、消費者の被害回復を支援する、いわば正義の味方。そこには住民から日々さまざまなトラブル相談が持ち込まれ、その解決に向けてドラマが生まれます。

 筆者は某県庁に2

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0286:やくみん覚え書き/公務員経験を物語として紡ぐ

0286:やくみん覚え書き/公務員経験を物語として紡ぐ

 司法書士試験が終わり、一息ついた。もちろん学習はこれからが本番だし、家業やら何やらやるべきこと・やりたいことはいろいろとある。

 その中でひとつ、新しい動きに取り組みたい。以前から情報を小出しにしてきた小説「やくみん! お役所民族誌」の連載開始だ。絵師「みどりの」さんにお願いしていたスタートアップイラストも整い、まずはマガジンヘッダを設定した。今回の記事のヘッダ画像がそれだ(マガジンヘッダとは

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0274:やくみん覚え書き/公務員の不正

0274:やくみん覚え書き/公務員の不正

 なんだか「やくみん覚え書き」が最近続いている(しかもストーリーの本線ではない補助線関連)。でもネタが降ってくるものは仕方が無い。

 今日は経産省職員の非違行為がふたつ立て続けに報道された。ひとつは国会内での女性用トイレの盗撮事件の犯人が経産省職員であると判明したというもの。もうひとつは、28歳のキャリア官僚2名がペーパーカンパニーを通して家賃給付金を詐取したとして逮捕されたというものだ。

 

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0273:言葉を書き続けること

0273:言葉を書き続けること

 昨日の『メダリスト』第3巻の書評は、3時間ほどで一気に書き上げた。表現のミスや言い足りないところは後で若干の修正・追記をしているが、基本は初稿で完成している。表現したい衝動が自分の中にしっかりとあれば、それを文章の形にすることは、私にとってたやすい。もちろん、それを良いモノに仕上げるのには、努力を要するけれど。

 小学校の半ばくらいまで、文章を書くことは得手ではなかった。読書は好きだったけれど

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0271:やくみん覚え書き/赤木ファイル開示と内部告発

0271:やくみん覚え書き/赤木ファイル開示と内部告発

 ついに赤木ファイルが開示された。森友学園への国有地売却を巡る公文書改竄に関し、近畿財務局担当者の赤木氏(後に自殺)が上からの指示に納得できず経緯を書き残した518ページにわたる文書だ。

 来月から連載開始を予定している小説「やくみん! お役所民族誌」に、この事件を着想の一端とするエピソードが含まれることは、以前に記した。

 元公務員としての実経験からいうのだが、役所の内部で外には出せない不正

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0220:やくみん覚え書き/「凡庸な悪」を描く

0220:やくみん覚え書き/「凡庸な悪」を描く

 今日の『報道特集』で、近畿財務局職員として森友問題の書類改竄に関わったことを苦に自殺した赤木俊夫さんの話が特集されていた。観入った。

 番組では、御遺族(奥様)に赤木ファイル(誰の指示で具体的にどのような改竄をしたかの記録)の存在を打ち明けた赤木さんの上司が取り上げられており、裁判下の組織の要請との板挟みで苦悩する様子が克明に描かれていた。私も27年間の公務員経験の中で様々なものを見聞きしてき

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