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「読解力」を追って

 授業での「読解力のなさ」を見て,「読解力」についていろいろ調べてきた。
 今までに書いた note をあらためてリストアップしておこう。いずれも,マガジン「高校教師の明日のために」にまとめている。
 スタートは2020年1月13日に書いた「読解力,着眼点とその実情」である。ここから問題を考えはじめ,いろいろな本を読んできた。それらを一度にまとめることはできないので,その都度「ノート」してきたのがこのシリーズである。


読解力,着眼点とその実情

「リーディングスキルテスト」の開発を主導している新井紀子氏が,「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」「AIに負けない子どもを育てる」の2冊の本を出している。リーディングスキルテストが6つの観点で構成されていることや,新井氏のTwitterを紹介。また,教科書を読んで,空欄に該当する用語をいれたり,用語の意味を書くという授業の結果を紹介し,

 今まで漠然と感じていた「なぜわからないのだろう」が,「読解力がないからだ」に落ち着き,さらに「論理的に読むことだけでなく,言葉も意味をちゃんと理解することもできていない」と解釈できるところまでは行った。次は,ではどうすればよいか,だ。

として問題提起をした。このシリーズの出発点である。

読解力,わからないのは言葉か論理か

前回の「読解力,着眼点とその実情」でとりあげた授業例を再掲し,詳しく述べるとともに,論理的に文が読めているかどうかに焦点を当てた。その際,熟語の意味を正しく理解しているかどうかが,文章を正しく読み取れるかどうかに関わっているのではないかとも考えた。

読解力:同義文判定ということ

「同義文判定」すなわち,2つの文が同じ意味かどうかを判定する力についての話。ここでも,授業でやった,きわめて正答率が低かった問題をとりあげている。新しく出てきた熟語の意味を,それを説明する文章から理解できるかどうかという問題である。これは,このあとの「国語教育とは何か(8) スキーマの有無」でもとりあげている。

読解力:それ以前の問題がある

授業で質問をしてきた生徒が,そもそもテキストを読んでいないという事態に遭遇したという話。そこから,「読めていない」のではなく,そもそもテキストをちゃんと「読んでいない」のではないか,という問題。

ことばの教育と大学入試改革問題

「ことばの教育を問いなおす」(鳥飼玖美子,刈谷夏子,刈谷剛彦著 ちくま新書)の紹介。そこから,生徒の「読む力」がどんどん弱くなっているというのが現場感覚であることを述べた。

 次の「国語教育とは何か」のシリーズでは,国語教育で読解力の陽性がなされているかどうかを探ってみた。

国語教育とは何か(1) 疑問と問題提起

センター試験の問題を,大学進学を目指すすべての生徒がこなすべき内容,と考えて読み,正答率はどうだったのだろうという疑問が生じたという話。「国語教育 混迷する改革」(紅野謙介:ちくま新書 2020.1.10発行)」を読んで,新学習指導要領による次期の国語教育に危機感を持つとともに,「国語の授業ってなんだろう」とあらためて思ったという,「国語教育とは何か」のシリーズの導入にあたる。

国語教育とは何か(2) 学習指導要領を斬る(1)

「国語教育 混迷する改革」(紅野謙介:ちくま新書)の内容を紹介しながら,「学習指導要領解説 国語編」を読んでみたら,これが,非常に分かりにくい。悪文である,という話。

国語教育とは何か(3) 学習指導要領を斬る(2)

学習指導要領解説 国語編を読む「国語教育とは何か(2)」の続き。新学習指導要領の科目設定は,中教審答申を受けて検討したというより答申で示された科目をそのまま採用した形になっている。「第3節 国語科の目標」「1 教科の目標」では,国語の学習指導要領であるにも関わらず,表現が重複したり,記述が矛盾していると指摘。紅野謙介の「国語教育 混迷する改革(ちくま新書)」の第3章から,「プラグマティズムのまなざしで見ると,この正規解説本が実に使いにくい。あえて読ませないようにしておきながら,何か言われると「読んでない」と反論するためにこのように分厚くしているかのようです。」を引用。

国語教育とは何か(4) noter たちが考える「読解力」

note で「#読解力」を渉猟して,noter たちが,どのような意味で「読解力」という言葉を使っているか調べてみた。OECDの調査に関してのものは2019年12月初めに多い。『AI vs 教科書が読めない子どもたち』(新井紀子) との関連についても書かれたものがある。「読解力」という言葉がいろいろな意味で使われていることがわかる。

国語教育とは何か(5) 大学入試センター試験

大学入試センター試験の国語をの代わりにマーク模試を使って,どのような設問があり正答率はどうなっているかを見た。センター試験では,結構きつい時間制限の中で解答していくのであるが,はっきり言って,全文を子細に読む必要はない。しかし,受験対策としてこのような問題を解いてばかりいたら,「文章を読む」という本来の意味から外れてしまうのではないか。国語教育の「目標」と,その結果の評価を「試験」で行うことの間には大きな壁がありそうだ。

国語教育とは何か(6)  求めているものが国語教育にない

 高等学校の新学習指導要領では,必修科目として「現代の国語」「言語文化」の2科目,選択科目として「論理国語」「文学国語」「国語表現」「古典探究」がある。このうち,「文学国語」以外の5つの科目には,目標の「思考力,判断力,表現力」の中に,「論理的に考える力」を「伸す」という言葉が入っている。
しかし「論理的に考える力」とは何か,どのように「伸す」のかについては書かれていない。「国語教育 混迷する改革 (紅野謙介:ちくま新書)」でも,「最初の「論理的な文章」とはどのようなものか,活動方法の説明に具体的な表題は書かれていないので不明です。」としている。「論理的な読み方」ができるように指導するというのは,国語教育の目標にはなっていないようだ。

国語教育とは何か(7) 「論理的に考える力」は看板だけか

中学校の学習指導要領にかかれている目標「論理的に考える力や共感したり想像したりする力を養い」についてとりあげた。高校の「情報」でのシミュレーション,「待ち行列」の例を出し,本当に文章が読めているのかを考えた。

国語教育とは何か(8) スキーマの有無

「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (西林克彦 光文社新書 2005年)」の中の,「スキーマ」について考える。ここで「スキーマ」とは,すでに存在しているひとまとまりの知識のこと。既存のスキーマだけでなく,今読んでいる文章から得られるスキーマも使わないと,文章を読み取れないのではないか,という話。暗号の例を再掲。

「書けない」のは「読まない」からではないか

「科学技術文を書くための基礎知識」(深尾百合子著 アグネ技術センター)の内容紹介。話し言葉と書き言葉の違いを認識することが大切であることとともに,助詞や接続詞の使い方など,細かい添削例を多く挙げている。筆者は「高校で教科書をちゃんと読み,教科書の文体に慣れていればそんな使い方はしないでしょう」と書いている。つまり,「読まない」から「書けない」のではないかということだ。

書くことと読むことは表裏一体

「理工系のためのよい文章の書き方」(福地健太郎 翔泳社 2019年)
副題「論文・レポートを自力で書けるようになる方法」の内容紹介とともに,ひとことで「文章」といっても,分野によってスタイルはいろいろあり,「作法」にあたるものもいろいろあることを書いておいた。
 ・読み手を意識して書く
 ・読み手は先を予測しながら読んでいる
 ・助詞や接続詞の使い方
 ・形容詞,接続詞を削る
といった,書くためのノウハウがある。

 次からの「読解力をつける」では,「読解力」を銘打った本を読んでその内容を紹介している。「読解力をつける」といっても,本によってその内容にはかなり違いがある。

読解力をつける(1) 「やさしい 国語読解力」

「やさしい 国語読解力」(後藤武士:宝島社2006年)の内容紹介。小学校高学年から中学生向き。(毎日中学生新聞に連載されていたもの)読解力をつけ,文章を書けるようにするにはとてもよい本だと思う。言葉の使い方(助詞,接続詞,比喩,仮定文,擬人法など)をくまなく例示していて読みやすい。

読解力をつける(2) 小学校全体で取り組む「読書活動」プラン

「小学校全体で取り組む「読書活動」プラン」(府川源一郎編 明治図書 2007)の内容紹介。タイトルの肩に「読解力UP!」とあったけれど,そのノウハウが書かれているわけではなかった。話は「読書活動をいかに進めるか」である。しかし,小学校でどのように教科書が読まれているかを知るにはよい。

読解力をつける(3)  「読む力」はこうしてつける

「「読む力」はこうしてつける」(吉田新一郎 新評論 2010)の内容紹介。国語教育を批判しつつ,七つの「優れた読み手が使っている方法」に基づいて,読書に親しむための方法を書いている。

読解力をつける(4) やりなおし高校国語

「やりなおし高校国語」(出口汪 ちくま新書 2015)の内容紹介。
高校の教科書に掲載されている「名文」を読み解いていく。副題に,「教科書で論理力・読解力を鍛える」がついているが,ノウハウ本ではなく,解説本。

読解力をつける(5) これ一冊で必ず国語読解力がつく本

「これ一冊で必ず国語読解力がつく本」(後藤武士 宝島社 2005)の内容紹介。対象は中学2,3年から高校だろう。高校入試レベル(ただし文章は短い)の文章を読んで問いに答える形式で解説。
 言葉の係り方,抽象と具象,主観と客観の読み取り方などを学べる。

読解力:AIに負けない子どもを育てる を改めて読む

 「AIに負けない子どもを育てる」を読み直してみたら,国語教育の問題点や,新学習指導要領についても書かれていた。いままで調べてきたことと一致する。

読解力をつける(6) 国語教育の現状の一端を見たーその1

 読解力を身につける」(村上慎一 岩波ジュニア新書 2020年3月)を読んで考えたこと。要約の文例で疑問に思ったことを書いた。

読解力をつける(6) 国語教育の現状に一端を見たーその2

 読解力を身につける」(村上慎一 岩波ジュニア新書 2020年3月)を読んで考えたこと,の続き。「「実用的な文書」の読解」,「資料(グラフ)の読解」,「文学的な文章の読解」について。

読解力をつける(7) 小学校の国語教育の例

「お母さんといっしょの読解力教室」(二瓶弘行 新潮社 2014年)の内容紹介。小学校の先生から見た読解力。小学校で目指している国語教育ともいえる。

PISA読解力調査2009と2018 (1) (2) (3)

PISAの読解力調査について,どのような問題が出され,どのような結果が出ているのか,2009年のものと2018年のものを調べる。

このnote は,このあと,新しい記事を書くたびに,目次代わりに追加していくことにする。

 読解力をつける(8) 14歳からの読解力教室

「生きる力を身につける 14歳からの読解力教室」(犬塚美輪 笠間書院2020年4月)を読んだ。認知心理学の立場からの考察。

読解力をつける(9) 既知の読みと未知の読み

「読みの整理学」(外山滋比古 ちくま文庫 2007年10月)を読んだ。外山氏は,本書で「アルファ読み」と「ベータ読み」という2通りの読み方を提示している。

高校入試は中学の国語教育のゴールか

国語教育のゴールの指標の一つとして,高校入試の国語はどうなっているのかを調べてみた。

主語と述語は読解の基本

朝日新聞 EduA4月26日号に,「複雑な作りをした一文を読み解く方法とは?」という記事が載っている。この記事をもとに,主語と述語の関係をみることが論理的な読解の基本であることを再確認する。

読解力をつける(10)

「論理的読み書きの理論と実践」(犬塚美輪・椿本弥生著 北大路書房 2014年)の紹介。読解力をつける(8)の犬塚氏の著書で,学術書。

読解力をつける(11) 

「読む技術」(塚田泰彦 創元社 2014)の紹介。「読書科学」や「不読者」という用語が出てくる。前半は読解について,後半は読書術や読書生活についてのガイド。

読解力をつける(12)

ネットで検索したWebページに書かれていることの正誤が判定できないという問題。これも読解力ではないか。

読解力をつける(13)

複数の箇所を参照して記述の正誤を判断する。論理的思考力が必要だが,そこまでいわなくてもよさそうな簡単な問題でもできないという例。