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書くことと読むことは表裏一体

「理工系のためのよい文章の書き方」(福地健太郎 翔泳社 2019年)
副題「論文・レポートを自力で書けるようになる方法」を読んだ。

内容を目次で紹介しよう。

第1章 七つの原則
 1 「主題文」をまず書いてみよう
 2 読み手を意識する
 3 大事なことは早く書く
 4 驚き最小原則
 5 読み手は先を予測しながら読んでいる
 6 事実に基づいて,正確に書く
 7 再現性:読み手が同じことを再現できるように書く
第2章 構成を練る
 1 既知の情報から新しい情報へとつなげよう
 2 基本は「導入・本論・展開」の三部構成
 3 三部構成のパーツを組み合わせる
 4 順列型と並列型
 5 本論は「IMR」
 6 「つなぎ」が主張を明確にする
 7 接続詞が文脈を作る
 8 パラグラフ・ライティング
第3章 確実に伝える
 1 厳しい読み手になろう
 2 「なぜ」の不足:理由を補って主題の立ち位置を明確にする
 3 「なぜ」を繰り返す
 4 全体から詳細へ
 5 助詞の使い方を見直そう
 6 文脈をうまく流すには
 7 背景説明は最短経路に絞る
 8 起きたことを時系列で語らない
 9 あいまいな表現を避ける
 10 修飾語と被修飾語の関係を改善する
 11 主語と述語についての心得
第4章 ライティングの実技
 (略)

 改めて思うのは,ひとことで「文章」といっても,分野によってスタイルはいろいろあり,「作法」にあたるものもいろいろある,ということである。
 ここで「改めて思う」と書いたのは,普段はそれを意識していない,ということの裏返しでもある。「今からエッセイを書こう,するとその作法は」とか,「今から評論を書く,その作法は」などと考えてはいない。無意識のうちにそれぞれの書き方をしている・・・ いや,本当にしているだろうか。
 しているとしたら,いつごろからだろうか。少なくとも小中学校の段階では,「作文」の域を出ていないだろう。高校生でも怪しい。高校までに,「理工系の論文の書き方」など,学んだ記憶はない。大学でもそうだ。卒業論文はなかったし,あったとしても数学の論文だから一般性はない。
 すると,その後,いろいろな本を読んで自然に身に付けていったのだろう。

「書けない」のは「読まない」からではないか」という note でとりあげた,「科学技術文を書くための基礎知識」(深尾百合子著 アグネ技術センター 2013年3月)と,この本はいずれも理工系なので,共通しているところは多いし,科学技術系特有のものもある。しかし,次のような事柄は,一般的な文章でも共通しているだろう。

・読み手を意識して書く
「第1章 2 読み手を意識する」では,「読み手は文章を『背景知識』と照らし合わせながら読んでいるから,それを想定する」ということは,対象となる読者層も含めて頭に入れながら書くだろう。本書では「文章は,読者に合わせてデザインされるべき」と表現している。

・読み手は先を予測しながら読んでいる
 これは推理小説でも言えること。先を予測したくなる書き方をしている小説はどんどんのめり込むように読んでいく。理工系の文章でも,そのように書くのがわかりやすいというわけだ。

・助詞や接続詞の使い方
 国語の授業で習っているはずの事柄だが,どちらの本でも節をとって例示している。それほどに,助詞や接続詞は論理展開に重要な役割を果たすということだが,これはどんな文章でもいえることだ。

・形容詞,接続詞を削る
 ざっと文章を書いていくと,接続詞や形容詞を多く使いがち。これを削ることで文体がしっかり形作られていく。

・「読む」ということ
「第3章 1 厳しい読み手になろう」では,「他人の視点から文章を読み直す習慣を身につけよう」として,推敲するときの心得を書いている。「原稿は3日寝かせよう」ともいっている。これも一般的に言えることだが,すると当然「読める」ことが前提となるわけである。「他人の視点でどう読解するか」ということだから,まず自分自身が読解力を身に付けていなくてはならない。

 まさに,読むことと書くことは表裏一体なのである。