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主語と述語は読解の基本

主語と述語は読解の基本 なんて,あたりまえだと多くの人は思うはずだ。
当たり前だと思っていると,それで終わってしまってあまり考えないことになる。
しかし,そのあたりまえのことがちゃんとできているか,できるように教えているか,と問うたらどうだろう。

朝日新聞 EduA4月26日号に,「複雑な作りをした一文を読み解く方法とは?」という記事が載っている。
WebのEduAのサイトにも載っているので参照しながら以下を読んでいただくのがよいだろう。


このうち,問題文は次のようになっている。

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「中学受験」というコンセプトなので,やや難しい問題になっているようだ。
この中の

雪がすっかり凍って大理石よりもかたくなり,空も冷たい滑らかな青い石の板で出来ているらしいのです。

という文で,述部「出来ているらしいのです」に対する主語を答える問題が難しいかどうかを,友人の小学校の先生に聞いてみた。
というのも,4年生と5年生の用に係り受け(主語と述語)の練習をするソフトの作成を依頼されて作成したことがあるからだ。次のような練習だ。


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EduAの例文に対しては,「文が長いので難しい」という返答だった。主語・述語について学ぶ小学生(4年,5年)にとっては,これだけの文でも長いようだ。いや,長さというより,一文ではなく二文でできていることだろうか。

この「主語と述語」がなかなかできないから練習用ソフトを作ってくれ,という依頼だったわけだから,「主語と述語は読解の基本」をあたりまえのこと,と見過ごすわけにはいかない。EduAにわざわざ取り上げられていることから考えても,この「基本」は大きな問題であることがわかる。

 さて,これらの問題は,おとなにとってはやさしいだろう。
おとなとこどもで,どこが違うのだろう。

子どもの誤答例が載っている。Web版で見てみよう。

問題1では,「「青い石の板」と答えてしまうお子さんがかなりいます。」
問題2では,「「日本には」と答えてしまうお子さんもいます。」

この2つについては,「主語をさがすときには、「何が?」と問いを立てながら読み返します」という解決法が示されている。問題4もそれでよいだろう。
しかし,問題3では「何が?」ではなく「何をわけるの?」と聞かなければならない。

では,これらの問題にどう取り組むか。
まず,読めていない原因として,問題1では

「青い石の板」と答えてしまうお子さんがかなりいますが、この部分は修飾部になります。まちがえてしまうのは、「板で」の「で」をあまりよく見ていないからだと考えられます。

問題3では

この問題では、「アルミ缶とスチール缶」と答えてしまうお子さんもいますが、「は」や「に」という助詞に注意を向けておらず、文のつくりがみえていない可能性があります。

と分析している。つまり,文の「つくり」に着目しているわけだ。

この記事では,「まとまりにわける」という方法を示している。
問題4でも,

この文を、主部、修飾部、述部に分けてみましょう。その方法については中学・国語の文法で学びますが、小学生のうちは、「原料を輸入しなければならない」のは「鉄鋼業や石油化学工業」だからここまでがひとまとまり、「船での輸送が容易な」のは「海に面した地域」だからここまでがまとまり、というように考えるとよいでしょう。

としている。ところが,最後に

ごちゃごちゃしているように見える文でも、このようにまとまりに分けると整理しやすくなります。
「長く複雑なつくりをした一文を読み解く方法」についてご説明してきました。これは、理科や社会の教科書やテキストでもできます。例えば、社会のテキストを読みながら、「~盛んです」とあれば、「何が?」「どこで?」「どうして?」と確認するのです。

と書いている。
何か違和感はないだろうか。
「何がどうなっている」や「何をどうする」,上の文でいうと,「何が?」「どこで?」「どうして?」は,論理である。文の構造の問題も関係しなくはないが,構造分析をしなくても論理がわかればいいはずなのだ。

 おとなは,構造分析と論理を同時にやっている可能性がある。文の係り方,修飾関係を読み取った上で論理を構築しているわけだ。しかし,こどもにとって「同時」がむずかしいとなると,どちらを優先すべきなのだろうか。
 問題1,2,4はいずれも「何が?」と問い直すことで答えは得られるはずだ。必ずしも構造分析は必要ないのではないだろうか。

 この記事は「中学受験」がターゲットであるが,通常の学校の授業ではどうなっているのだろう。教科書を読むと,5年生できちんと「主語・述語」を扱っているものの,例文があるくらいで,はたしてどの程度練習されているかどうかは疑問である。

 主語と述語は読解の基本。しかし,その基本が,どのくらいきちんと教えられ,できるようになって進級してきているのか,おおいに疑問になった記事であった。