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国語教育とは何か(1) 疑問と問題提起

 学校での「国語」という授業はなんだろう。
今,手元には小学校の国語の教科書が1年から6年まで全部ある。
友人の小学校教員から寄贈されたものだ。
いや,寄贈というより,資料として渡された,というほうが正しい。
小学校の国語の練習ドリルをパソコンでやるためのソフト作りのためだ。
ドリルなので,やれる内容は,漢字や熟語の問題,係り受けの問題くらいだ。
Webでもできるので,興味がある方はごらんいただきたい。
文章が読めるための基礎体力作りである。
「どのように」文章を読むか,また,書くか,はこれらのソフトではできない。
こういった「基礎体力づくり」は,中学3年生くらいまで続くことになるだろう。
文章中に出てくる熟語が読めて,その意味を知っているのでなければ,文章の内容を理解することはできないからだ。
高校では,これらの基礎体力ができている,という前提のもとに国語の授業が行われる,と想像する。
「想像する」というのは,私は国語教師ではないので,そうだ,と断言はできないからだ。

 では,「何ができるようになればよいか」をテスト問題から考えてみよう,と思って,例として,センター試験の問題を見てみた。これは,大学進学を目指すすべての生徒がこなすべき内容,と考えられる。
 漢字の読み書き,部分的な空欄に適することばを入れる,といった問題はさておき,4ページほどの,かなりの分量の文章を読んで,その中のある一文について,どういう意味かを問う問題がある。マーク式なので選択肢があるが,その一文の前後を読み直して,適するものを選ぶことになる。
 ここで,「その一文の前後を読み直して」ということは,全部を読み直さなくても,ということでもある。つまり,問題文を先に読んで,その前後だけを検討すればよい,ということだ。
 文章全体の趣旨を読み取って答える問題ももちろんある。
 また,文章の構成に関する問題もある。
 ちょっと計算すると,そのような小問が入った大問1つを20分程度で解くことになる。
 たとえば,平成31年度の第1問をざっと見てみたが,これを20分で全問正解できるかというとちょっと自信がない。いや,やってみればできるとは思うが。
 全体の趣旨や構成に関する問題もあるので,当然全文を読んで検討しなければならない。その一文の前後を読み直せばできる問題なら1,2分でできるが,全体となるとそうはいかない。4ページというのは結構な分量なのだ。note 流に文字数で言うなら,4000字ほどの文章である。

 さて,ここまで,問題文を見ながら書いたあと,あらためて,ちょっと本気になって正解の選択肢を探してみた。
 それで思ったのは,問題の善し悪しではなく,正答率はどうだったのだろうか,ということである。

 センター試験の結果については問題別の正答率は公表されない。しかし,模試ならば問題別の正答率が示される。想像するに,全体の趣旨に基づいて判断する問題と,文章の構成に関する問題の正答率が,他に比べて低いのではないだろうか。
 なぜそのように想像するかというと,これらが「論理的に読解する力」に関わる問題だと思うからであり,それが今の生徒は弱いからだ。
 もし,この予想が当たっていたら由々しきことである。テストでは満点を取れなくてもよい。ということは,論理的な読解力がなくても通過してしまう,ということである。
 次に出勤したらちょっと調べてみようと思う。これに関する報告はそれから。

 もうひとつ。この一文を書いたのは,「国語教育 混迷する改革 (紅野謙介:ちくま新書 2020.1.10発行)」を読んだからだ。新学習指導要領による次期の国語教育に危機感を持つとともに,「国語の授業ってなんだろう」とあらためて思ったのだ。この本については,いずれ書くつもりであるが,新学習指導要領解説は文科省のWebページで入手できるのでダウンロードしてちょっと読んでみた。「ちょっと」である。それで思ったのは,これ,悪文ではないかということ。「情報」の学習指導要領解説もダウンロードして読んでみた。こちらはまだまとも。
 国語の学習指導要領解説がかくも悪文でいいのだろうか。それとも,これは悪文などではないというのだろうか。
 詳しくは次回にレポートしたい。