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読解力,わからないのは言葉か論理か

 読解力とはなにか。
一言で説明するのは難しいだろう。
まあ,「文章を読み取る力」といってしまえばそれまでだが。

 文章を読むとき,その文章のタイプによって読み方は変わるであろう。
ここでいう「タイプ」とは,小説か論説か,説明文か,といったタイプのことである。小説であっても,ミステリーかどうかでも変わるだろう。
大ざっぱではあるがたとえばつぎのように分類してみよう。

 小説:書いてあることから情景を思い浮かべながら読む。
 論説:言いたいことは何かを考えながら読む。
 説明文:文が意味していることを読み取りながら読む

もちろん,これらは完全に区別されてしまうものではなく,比重の問題である。
たとえば,次の文を読んでみよう。

「情報システムは,いろいろなデータをデータベースに保存している。マップであれば,地図や航空写真に加えてー中略ーなど,さまざまな情報を保存しビジネスロジックによって検索,追加,更新できるようになっている。 情報システムのうち,ユーザとの入出力を扱うユーザインターフェース部分と,データを管理す るデータベース部分を除いた残りがビジネスロジックである。ユーザインターフェースからの入力 情報にもとづいて,データベースの情報を用いて処理した結果を,ユーザインターフェースに渡して表示させる。情報システムでなにができるかは,ほとんどこのビジネスロジックで決まる。情報システムの本体とも呼べる部分である。」(社会と情報:第一学習社)

 これは情報システムについての説明文である。何かを主張するもの(論説)ではないし,物語(小説)でもない。
 文章を読みながら,「情報システムとは何か」を構築していくわけである。ここに,さらに次の図があったとしよう。(同上,欄外イラスト)

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 さて,そこで設問。

正しければ○,正しいとは言えないか誤りの場合は×をつけなさい。
( )情報システムの性能はビジネスロジックによって決まる。

次に読み進める前に,読者にもしばらく考えてもらおう。

正しい判断を下すためには,
・情報システムは,「データベース・ビジネスロジック・インターフェース」の3つからできている。
・「性能」とは,何ができるかではなく,どのくらいよくできるかである。
という2つの点が理解されている必要がある。
したがって,情報システムを構成する3つの要素が連携して性能を決めるので,ビジネスロジックだけでは決まらない。すなわち正解は×ということになる。

実施結果は,正答率がわずか4%であった。

  この文中の「情報システムでなにができるかは,ほとんどこのビジネスロジックで決まる。」 を読んで○にしたものと思われる。「なにができるか」を「性能」と考えたのではないだろうか。
 とすれば,熟語の意味を正しく知っているかどうかが,文章を正しく読み取れるかどうかに関わっていることになる。それを,「うっかりした」ということも考えられるが,うっかりで正答率が4%しかないというのはどうみてもおかしい。
 実際,このような場面は多い。熟語の意味を知らないために,言っていること,読んでいることがわからない,という場面だ。
 熟語の意味を知っていることが,文章を読み取るのに必要だということは当たり前のようだが,この例のように「エッ?」と思うことは一度や二度ではない。

 また,この例では,情報システムが3つの要素からなるということをしっかり理解できたかどうかも要素のひとつだろう。図があるからわかる,と思いがちだが,3つの要素からなることの意味までわかっているだろうか。つまり,「性能はこの3つで決まる」という論理的な思考である。
 この論理的な思考は,新しい概念を説明する文章を読み取れるかどうかで多いに関わってくる。その例は別稿としたい。