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国語教育とは何か(4) noter たちが考える「読解力」とは

 いままで,何度も「読解力」という用語を使ってきたし,「読解力とは何か」「高校生の読解力の現状」について,いくつかの note を書いた。

読解力,着眼点とその実情
読解力,わからないのは言葉か論理か
読解力:同義文判定ということ
読解力:それ以前の問題がある

 その後,国語教育について考え,学習指導要領を読み,小学校の教科書を開いて,あらためて「読解力」という言葉の意味が多様であることをきちんと整理しなくてはいけないと考えた。
 そこで,note で「#読解力」を渉猟して,noter たちが,どのような意味で「読解力」という言葉を使っているか調べてみた。
 つぎのようないくつかのタイプがあった。

・タグはついているものの,読解力の議論ではない。あるいは,読解力についての説明がない。何を以て「読解力」としているか不明なもの

 このタイプの記事が多数である。まあ,「読解力」を問題点にしているわけではない note なら当然だろう。

・読解力についての現状を書いているもの

 
創作物と想像力の話
 塾講師のかた。読書読解力の関係を指導体験から,「つまるところ文章の表層をなぞることしか出来ず、その裏にある根本的な内容が理解出来ない」と書いている。

短文文化の中にいる読解力がない人の恐怖
Twitterで,意図が伝わらなかったことを「読解力の問題かと気づいた」としている。

「読解力のない人は地雷である」という教訓
ツイートなどで書いたことが伝わらない例をあげて読解力がない,としている。

透明言葉は、正しく読めない。
意図を正しく把握できないという話。

読解力がなくても、国語の点数は上がります。
国語のテスト問題について書いている。これは,私の「国語教育とは何か」の一つのテーマでもあるが,これを国語教育の問題点と捉えるかどうかは人により意見が分かれるだろう。

現代文で読解力を身につけられなかった話
これも,上と同じような体験談


・その人なりの,「読解力」の定義を書いているもの

現役東大生が見抜く「読解力」の正体
「僕の考える読解力の定義は以下の通りです。」として,「内容を自分の言葉で言い換えられること」。「読解力」の正体が「要約力」である,としている。

読解力から見える今後の日本と「成長力」
「私の思う「読解力は」発生した事象の裏側まで理解する力です」としている。
同じ人の AIに勝てる人間の力とは では,「分かりやすくいうと、書かれていることを正しく読む力」「文脈を読み取る力が高い人です」としている。

「読解力」とは?
美術家教員の一つの見解。「目の前に提示されているテキストから、どのような「意味」を導き出すことができるのか?ということだ」としている。

・OECDの調査に関して(2019年12月初めに多い)

読解力を身につける3つの方法
OECDの定義を引いている。
読解力をあげる方法として
1 読書をする
2 音読をする
3 要約をする
をあげている。

・『AI vs 教科書が読めない子どもたち』著・新井紀子 との関連

文章が読めない
『AI vs 教科書が読めない子どもたち』著・新井紀子 との関連。
「スピーキングは要らない?」を読み違えた話

読解力はボキャブラリーを豊かにすることで鍛えられる
「AI VS.教科書が読めない子どもたち」を読んで,「読解力は、語彙力を鍛えることで培われる」という主張

読解力テスト、をマジメに掘り下げてみる
RSTの例を悪文としており,元の文章を書き換えるとこうなる,という例を示しているが,もとになる「AI vs 教科書が読めない子どもたち」は読んでいないようだ。

・読解力が下がっている理由についての考察

日本の読解力が下がった理由
現役大学生によるひとつの分析

読解力不足
読解力不足の原因を,「長文を読まなくなった」としている。


 このように見てくると,「読解力」という言葉がいろいろな意味で使われていることがわかる。
その「読解力」の多様な定義について,うまく整理されているのが次の note だ。

「読解力」の定義がいろいろあることを分析し,次の3つに要約している。

①日本的読解力
 筆者(他者)に寄り添い、その表現意図を読み取る力。行間を読む力
②PISA的読解力(リーディングリテラシー)
 書き手の意図をくみ取った上で自分の知識と経験も活用して判断する力。日々の生活や実社会に出てから積極的に使える能力。
③「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」的読解力(RST:リーディング・スキル・テスト)
 辞書にあるとおり、文章の意味内容を理解するという、ごく当たり前の意味での読解力

 このうち,私が「読解力:・・・・」で扱ってきたのは③なのである。

 では,国語教育で養おうとしているのはこの3つのうちのどれか。「学習指導要領解説 国語編」には,「読解力」という言葉がでてこないが,小中学校では①,高等学校では①に加え②といってよいだろう。「国語科の目標」として②に重点が置かれていることがわかる。
 これに対して,「教科書が読めない」というのは③なのである。私が授業を通して教科書が読めていないと感じたのが③なのだ。
 
 このあたりの事情を,次回は,高等学校の大学入試マーク模試の結果で見ていくことにする。