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読解力をつける(1) 「やさしい 国語読解力」

 今まで,「教科書が読めない」とか「国語教育の問題」とかを note に書いてきたが,ここからしばらくは,「読解力をつける」というタイトルで,読解力に関する本を読んでいく。

 市立図書館に行って,「読解力」で検索し,とりあえず5冊の本を借りてきた。
小学校,あるいは小学生対象のものから順に読んでいく。
はじめは,「やさしい 国語読解力」(後藤武士:宝島社2006年)
小学校高学年から読める内容だ。

 結論から書こう。この本は読解力をつける,文章を書けるようにするためにはとてもよい。お勧めだ。
何がそんなにお勧めなのかをあげておこう。

(1) 読みやすい
(2) よく整理されている
(3) 言葉の使い方をくまなく,例示してある

(1) 読みやすい
 この本は,毎日中学生新聞に連載していたものに加筆修正してまとめたものだ。したがって,文章は平易。 1節の長さが4ページで,マンガが入っていると本文は3ページだけなので,短時間で読める。全部で49節(回分)あるが,1節が短いのでリズムよく読める。

(2) よく整理されている
 評論文と小説の違い,助詞や接続詞,仮定文,比喩,擬人法など,易しい内容から次第に難しい内容へよく整理されている。

(3) 言葉の使い方をくまなく,例示してある
 言葉の使い方のわずかな違い,たとえば,「と」の使い方。And の意味だけでなく,引用の「と」(・・と書いてあった,など)の使い方の説明もある。
 具体例が豊富で,「読むとき」だけでなく「書くとき」にもおおいに参考になる。

 そればかりではない。次のような例もある。

「センセイ」は〆切りが続いてパニックになってしまっているんだね」
とリョウタが言った。
「でもさ,ゴトウさんっていつも忙しそうにしてるじゃない。」
とユキが言った。「要領悪いんだよ,きっと」
とケイコが言った。

これを,「文章書き慣れていない小学生の作文」として,プロならこうなると例を示す。

「センセイ」は〆切りが続いてパニックになってしまっているんだね」
同情しているのか,あきれているのか,リョウタがぼそりとつぶやく。〆切りっていったってはじめからわかっているんだから,計画的にこなせばいいだけのことだ。あらかじめ余裕を持って仕事をこなすか,無理なスケジュールを抱えないようにするか,いずれにしろ自己管理の問題。行き当たりばったりが嫌いなユキはつい,
「でもさ,ゴトウさんっていつも忙しそうにしてるじゃない。」
ともらしてしまった。冷たいヤツだと思われるかなと一瞬後悔したけれど,ケイコも同じことを考えていたらしい。
「要領悪いんだよ,きっと」,だって。
とケイコが言った。

 ここのテーマは,「台詞の主を特定しよう」だ。前の文は○○が言った,とすべて書いてあるが,あとの文ではそうなっていない。特に最後の台詞は誰が発したのか明確には書いていない。それでも,ちゃんと読めるならば,誰が言ったのかはわかるというわけだ。
 ここでは,このように誰の台詞か明確に書いていなくても読み取ろう,という「読解力」と同時に,味わいのある文章の書き方も示しているわけだ。
「読むこと」と「書くこと」は表裏一体であることを改めて感じる。

 なお,小中学生に難しそうな漢字にはルビがふってある。

 同じ著者の「社会人のための読解力トレーニング」がAmazonプライム会員特典で無料で読めるので読んでみた。こちらは社会人向けだが,「やさしい 国語読解力」と同じような内容になっている。

Amazonプライム会員の方は読んでみるといいだろう。

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