後藤護

暗黒綺想家。blueprintより新刊『悪魔のいる漫画史』が刊行(表紙画:丸尾末広)。…

後藤護

暗黒綺想家。blueprintより新刊『悪魔のいる漫画史』が刊行(表紙画:丸尾末広)。『黒人音楽史 奇想の宇宙』(中央公論新社、2022年)で第一回音楽本大賞「個人賞」を受賞。その他の著書に『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン、2019年)。

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2021年9月7日(火)に高山宏先生の書庫を訪問した一大イヴェントについて、機関精神史ホームページに「學魔書庫訪問記——本棚天界篇➊」としてまとめましたが、ここでは番外編的に僕個人で選んだ36冊を公開してみようかと思います。(『兵法三十六計』にハマってるのでこの「36」の偶然は嬉しい。ウータンクランのRZAなど音楽ビジネスの世界に愛読者多数)

まずはでーんと、ブックタワーを屹立させてみました。

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本業ロックンローラー、副業ジャン=リュック・ナンシー研究者(※逆という説もある)柿並良佑先生の招聘により、わが母校・山形大学(中退ですが♨)で特別講義「ゴシック表象文化論」(2020年12月3日)を開催しました。東京から遠いというのもあって「行けなかった悔しい」という声多数だった(と勝手に思う)ゆえ、実際に授業で使用したスライドをお見せしながらいっちょ「WEB補習」をやろうかと思い立ちました。時間

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安倍・黒川の政治的ノンセンスに反対するのは道理というかセンスであろうが、それは当然ながら「強制」されるべきものではない。ある時点から「ひとまず理由はいいから兎角ハッ

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 「切株映画」のファンとして、原因と結果のみを示す四肢切断シーンに不満を感じる。いわば「チェーンソーを振り下ろす」(原因)→「手足がぶった切られる」(結果)という二つの〈カット〉を繋ぐというもので、肝心のシーンが省略されているケース。チェーンソーが手足を切断する瞬間の――いわば切株が〈生成〉する過程の――映像の「テクスチャー」を味わいたい身としては、これは悲しい。

 切株が生成する「プロセス」こ

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ゴスはメインストリームへの反抗、はぐれ者との自己同一化、盲目的な楽観主義への懐疑を、メメント・モリ的手法で表象する。それは前向きで退屈な覇権的文化にとってはメロドラマ的生命(エラン)となる。ゴスは単なるファッションではなく、それは感受性であり、いわばゴシック・パースペクティヴなのである。……では〈アフロゴス〉のようなものはあるだろうか?
リーラ・テイラー『ダークリー』(20ページ)

ぼくが201

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〈綺想異風派〉――80年代/90年代の音楽批評を分かつもの

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以下の引用が80年代地下音楽宣言の精華といっていい。

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境界領域が曖昧な80年代音楽は、歪曲的、超現実的、抽象的で、霊感と感情だけをたよりにマニエリスム世界を表現する。それらの誰とも、どっちともつかぬハイブリッドな《歪曲された遠近法》の中の迷宮世界は、拡大された微粒子間の隙間(空白)のように、ただ無感覚なものだ

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レッグス・マクニール+ジリアン・マッケイ著、島田陽子訳『プリーズ・キル・ミー アメリカン・パンク・ヒストリー無修正証言集』(Pヴァイン)が届いた。拙著『ゴシック・カルチャー入門』の担当編集者・大久保潤さんのニュープロダクト(というか復刊企画)である。

帯文の「ヴェルヴェット・アンダーグラウンドからセックス・ピストルズまで」とか「当事者たちの赤裸々すぎる証言」などからも、本書がアメリカン・パンクの

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佐野亨編『映画の巨人たち スタンリー・キューブリック』(辰巳出版)の読みどころ

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2020年5月28日に発売されたこのキューブリック論考集に「道化・音楽・諷刺――『時計じかけのオレンジ』のキメラ的世界」と題した文章をぼくも書いてるのですが、さっそく読み終わったので寄稿者というより一読者として、感想(場合によっては補足)をまとめてみます。以下ページ順。

さっそく感想をいただきました! (というわけで拙論の解説はこれに代えさせていただきます)

吉田広明「スタンリーは初めからキュ

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メイキング・オブ・『ゴシック・カルチャー入門』①――配管工としての文学者

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発売して半年以上経ったし、拙著について自己切開(アナトミー)したくなった。自分でいうのもなんだが伝説のデビュー作だと思っている。というのも開始一行目に誤植があり、あとがきで実の母の名前を間違えている本など前代未聞であるからだ。

そうしたボケや校正へのあてこすりはさておき、この本に寄せられた感想に多かったのが「文体がヤバい」とか「文章のドライヴ感」とかそういうもの。さぞや「エクリチュール」なのでし

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本の情夫(ヒモ)になる――ボルヘス主義者・高山宏から照射される平岡正明の逆説

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「蔵書を六畳一間に敷き詰めて高さが5cmを越えたものは革命家の資格がない」

と平岡正明が言った言葉の含蓄は深い。裏を返せば、その人の「コア」となる書物の上限が概ねその程度ということで、それ以外はテクストの味付け程度にすぎない。万巻の書を繙いた(ということになっている)ボルヘス主義者・高山宏は、むかし僕に意外な言葉を漏らした――「本棚の写真を見せることの悪趣味」。

たしかにツイッターをのぞけば本

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