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【WEB補習】「ゴシック表象文化論——After Bauhaus」講義ノオト

本業ロックンローラー、副業ジャン=リュック・ナンシー研究者(※逆という説もある)柿並良佑先生の招聘により、わが母校・山形大学(中退ですが♨)で特別講義「ゴシック表象文化論」(2020年12月3日)を開催しました。東京から遠いというのもあって「行けなかった悔しい」という声多数だった(と勝手に思う)ゆえ、実際に授業で使用したスライドをお見せしながらいっちょ「WEB補習」をやろうかと思い立ちました。時間不足で扱いきれないスライドも多かったので、当日受講した学生諸君にも新しい発見が沢山あるはずです。

1.はじまりのビリー・アイリッシュ

スライド3

まずはじめに授業の到達目標として「ビリー・アイリッシュはゴスか否か」識別できるレベルまで、というのを掲げました。見せたのは「Bad Guy」のPVでした。皆さんはどう思いますか?

2.「ゴシック」って何?

スライド4

ゴスロックのPVを見せまくってジャンルの支離滅裂さ(※褒めてます)を見せつける授業内容を目指してましたが、ひとまず「ゴス」の前駆携帯としての「ゴシック」の解説をせなあかんと思い『ゴシック・カルチャー入門』(Pヴァイン)の第一章「読む/見るゴシック」を圧縮してお話しました。ようするに我が国で暗黒耽美に矮小化されたゴシックなるものを、「突飛なるものの歴史」(ロミ)のなかに解き放て、とアジった次第です。

3.ストロベリー・ヒルさえ押さえとけば問題なし

スライド5

とにかく高貴でメランコリックで暗黒耽美なプチブル的ゴシック像を解体するため、プチどころではないガチのブルジョワ、ホレス・ウォルポールの暮らしたストロベリー・ヒルの「びっくりハウス」ぶりをレクチャー。ヴィーナスが飛び出しそうなロココ風貝殻ベンチもあるくらいで、グロテスク模様をあしらった蒐集品カタログ本が刊行されるほどの驚異博物館ぶりでした。

4.ゴスロックの始祖、バウハウス

スライド7

トニー・スコット監督『ハンガー』の伝説的オープニングを見せたあと、バウハウスが「ベラ・ルゴシは死んだ」と歌ったルーマニア人俳優、そしてそのルゴシの主演した『吸血鬼ドラキュラ』の監督トッド・ブラウニングについて解説。授業で言い忘れたんですが、『ハンガー』でボーカルのピーター・マーフィーばかり映ってることが原因でメンバー間に軋轢が生じ、バンドは解散しました。

5.ゴスロック亜種 サイコビリー

スライド12

ゴシック~ゴスは「混ぜ合わせ」「蒐集」を原理とする悪趣味文化である、という僕の主張が学生さんたちに理解され始めたのがこのスライドからでした。クランプスは中原昌也さんもお好きだったはずで、エルヴィス・プレスリー的なロカビリーにB級ホラーやSFのテイストを加えたようなキッチュな音楽スタイルです。

6.ゴシック・カントリー&ウェスタン

スライド13

田吾作が三叉をもって不愛想な顔をしているグラント・ウッドの絵画『アメリカン・ゴシック』を徹底分析し、カントリーフォークとゴシックの只ならぬ関係にメスを入れた拙著第五章「鄙びるゴシック」は我ながらエポック・メイキングな章だったと自負していますが、理論が先行して肝心のバンドの数々を紹介しきれなかった嫌いがあります。Heathen Apostlesの一連のMVはゴシック美学と西部劇を組み合わせた面白い世界観で、黒ずくめのカウボーイはホドロフスキー『エル・トポ』以降の展開ですね。Uncle Sinnerなんかが土臭い嗄れ声のゴシック・カントリーで個人的におススメです(R.E.M. の傑作『Automatic for the people』なんかもこのジャンルに入れていいような)


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