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2022年11月の記事一覧
文字通りつまらない住宅地の全ての家が登場する群像劇ーミニ読書感想「つまらない住宅地のすべての家」(津村記久子さん)
津村記久子さんの「つまらない住宅地のすべての家」(双葉社)が面白かったです。文字通り、つまらない住宅地の一角のすべての家の住人が登場する群像劇。みんなどこか後ろ暗い秘密を抱えているんだけれど、それをうまいこと隠して生きている。そして、普通の顔をして生きて、ご近所の動向に目を光らせる。まさに住宅地あるある。大変な日々をそれでも生きるために、みんな自分が普通だと思いたい。
NHKでドラマ化しているの
好きでも嫌いでも語りたくなるコーヒーの魔力ーミニ読書感想「こぽこぽ、珈琲」(河出文庫)
村上春樹さんや井上ひさしさん、よしもとばななさんなどそうそうたる31人がコーヒーについて語ったエッセイをまとめた「こぽこぽ、珈琲」(河出文庫)が面白かったです。2022何11月20日初版発行。コーヒー好きな作家さんだけではなく、全然コーヒーが好きじゃない人もいる。それでも語りたくなってしまうコーヒーの引力、魔力が感じられる本でした。
村上さんのエッセイのタイトルは「ラム入りコーヒーとおでん」。こ
言葉と連想が弾ける越境青春小説ーミニ読書感想「地球にちりばめられて」(多和田葉子さん)
多和田葉子さんの小説「地球にちりばめられて」(講談社文庫、2021年9月15日初版)が楽しかったです。面白いよりも、楽しい。日本という国が何らかの理由で消滅した世界。デンマークに留学したまま帰る故郷を失った元日本人の女性がさまざま縁で人と出会い、旅をする。この女性は「パンスカ」という独自言語をつくる。この言語が鍵となって、言葉遊びと連想が自由に弾ける。「越境」というのも一つの大きなテーマになってい
もっとみる「聞く」はグルグル回るーミニ読書感想「聞く技術聞いてもらう技術」(東畑開人さん)
臨床心理士・東畑開人さんの「聞く技術聞いてもらう技術」(ちくま新書)が胸に残りました。「言いたい」「発信したい」人ばっかりな世の中だな(自分も含めて)と日頃感じていましたが、実際には「聞いてもらいたい」人ばっかりなんだなと見えてきました。「聞く」は世界をグルグルと回っていて、でもその循環の調子が狂うと、途方に暮れてしまう。「聞けないとき」にどうすればいい?そのオロオロに付き合ってくれる本でした。