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どこかの町の高田
2024年4月30日 22:39
明らかな祈りせめて歌になるまで。美香は今日もオヒメサマごっこを続けている。授業で教科書を男子と共有している。美しいものは夢……、ならば生殖は悪?俺は笹原っていうんだ、男で、大学生で、部活の所属はなし、そんでもって高校生の時に買ったレスポールを後生大事にもっている。尊敬するのは小林秀雄、池田晶子、懐疑しているのは若松英輔。俺は、あたらしい生存の倫理を探している。明らかな祈りせめて歌になるまで
2024年4月29日 20:26
失った衛星を探して二十四年、私はどうやらキラワレ者らしい。ということだけが分かった。捨てられてばっかりの人生だ、サヨナラすら言わせてもらいなんてね。口が悪いこと、小手先で隠してたら皮肉屋になっちゃった! 馬鹿らし、虚しいなあ。失った衛星を探して二十五年、失った衛星ってなに? 分からないものばかり追いかけてたらバカになっちゃうよ? (うつくしいという言葉を禁句にしようよ)どこかでカラスの群れが死
2024年4月22日 23:35
しん、と静まった朝に海は潮を寄せていた。わたしの舞が永遠に連なると信じておわらないうたの断片を歌おうと咽にちからを込めた。(らー……)わたしは力が抜けてしまう。現世からかろやかにはなれわたしは前世のともだちに会いに行こうとしている腕をゆるやかに伸ばし、腕はひかれみちびかれわたしはついにきれいに、はっきょうする。しん、と静まった朝に海は春を撫でていった。わ
2024年4月21日 03:58
輝波さん、俺は世界に子種を落とそうと思ってる。むろんあなたにも、風にも、木々にも、雨にも、雪にも、万葉集に描かれたすべての自然物にも。そして最後の一人に出会うまで、うつくしい女すべてに。俺はもうさみしくない、何編言ったってさびしくないんだ。本当だよ。夏が来る。夏が来ると芹川は会いたくなる異性がいる。それはきらきら海浜公園の海だ。春の終わり頃の日に、始めて人気のない海に浸った。抱き寄せられて、射
2024年4月16日 23:28
言葉にならないくるしみが、笹原を覆いました。なぜ、俺は俺でしかないのか、なぜ、俺は俺の人生しか歩めないのか。笹原は不思議で仕方がなかったし、つよい憤りすら感じていたのです。笹原は午前2時の人通りも車通りも少なくなった道路で踊る。ゆるやかに身体をひらき、まわし、ときに低く高く唄いました。(俺が、俺がひとつの舞となれば、俺がもはや個人というものから抜け出してしまえば、俺が、他人の心をこのからだにそ
2024年4月15日 22:54
ぜんらで海にダイブ。私はあたらしい思想を待っている。桜流しの雨がふって、もう季節は動き始めているんだね。私はどこに行こうか。誰も傷つかない国へいこう。私は梨花のようなヒーローにはなれなかった。海はわたしを抱いてくれるから好き。だいすき。わたしを殺してくれるから好き。わたしを生かしてくれるから、すき。潮が、しおが、し、お、が。わたしの血をゆるやかにかたむける。うつくしいものは汚いところからはじま
2024年4月14日 23:10
敵役は変身もせずに、踏切を待っていた。スーパーからの帰りで、家路に向かう途中の踏切だった。敵役こと岩下隆は、今日は暑い春の日だからと、そうめんとキムチと氷を買った。すべて混ぜて、食べるつもりだ。揖保乃糸は買えなかったからなんか似た変な名前のそうめんを買った。まあ別に、ニセモノでも悪くないよな。ニセモノであることを誇れば。岩下隆は、考えていた。そして俺は一生敵役を抜け出せないだろうと、思った
2024年4月14日 23:05
梨花は考えていました。この町を救うにはどうすればいいのかと。魔法のステッキが光っても、ビームが炸裂しても、根本的解決には程遠いと思ったからです。空に浮く、ステッキをかざす。夕焼けのひかりがジュエルにあつまる。私は魔法少女、齢十四歳、大人びてしまった暴力で、だれを助けるの?化物。街を襲撃する彼らは、一様に寂しい顔をしている。いたみを知った美しい顔だ。私はそれに値するうつくしい思想を持つか?
2024年4月9日 22:13
桜、桜、桜、夜の桜はやっぱりいいねえ、都美子はコンビニのシャケおにぎりをほおばりながら言いました。あとは酒だよな、酒。あとでワンカップ買うか。そう言いながら彼女はふらふらとあてもなく夜の河川敷を歩いていました。ライトアップはとってもきれいで、幽玄のようだったのです。都美子はきらきら町ではめずらしい巫女でした。それゆえにどこかで舞おうと思っていたのですが、ふさわしい場所がなかったのです。「あーあ
2024年4月14日 00:52
全部馬鹿らしい。あたらしいものはこれから始まるんだ。そう言って芹川はせせらわらった。歴史は人類の総意できまる、なんて傲慢だ、ぺっ。(あたらしい時代がはじまるときは、春の嵐のような轟音が鳴る、桜が、散る、ちる。いっそのこと俺がひとつの花となるような、そんな生き方を模索する、俺はひとつのダンスである)ああ、全部馬鹿らしい。あたらしい倫理がこれから俺の手のひらの中に育まれる。そう言って芹川はせせらわ
2024年4月11日 20:28
「愛がすべて、すべては愛」そういいながら、歌いながら踊りながらわらいながら、青年はきれいに狂っていった。ほっそりした胸元には柘榴の刺青をして。青年は自らの感性が、もはや時代には適合しないのだと知っていた。出会う女はみなうつくしかった、それがゆえにかなしかった。「滅びることのない倫理をさがしに行こう」彼はゆうれいのように河川敷を歩くことがあった、風がささやいていた。「遠くに行こう、とおくにいこう
2024年4月10日 18:01
わたしの前世はおひめさまでした。おとぎばなしのはじまりは、春の嵐のようなさっそうとした轟音が鳴る。うつくしいものをさがしに行こう、そういって馬に乗って駆けて行った昔の日はかすか。わたしはいまはどーしようもない女子大生です。ひとを欺かないように生きようと思っても、それがとっても難しいということに気が付くのにそう時間はかかりませんでした。傷口をひらくようなとわず語り……わたしは毎夜、ブログを更新す
2024年4月8日 21:57
三笠亮が自転車で空を駆ける。時速70キロメートル、うつくしくもない旅路。「揺らぐことのないものをさがしに行こう」果てしのない空には星が、星の中には過去にたちきえた意思が燃えていた。うわぁぁあああん、うわぁぁああぁぁあん。汽笛のように鳴るこの音は号哭だ。「うつくしいものをさがしに行こう」三笠はニッと意地悪く笑う。さて、眼下には星々を散らしたような夜の街があります。あそこにいるのは巫女の都美子。今
2024年4月7日 23:08
寧音は春の川辺を歩いていました。うつくしいものは損なわれないものであると信じ、きずなが朽ち果てても、それはあらたなきずなの土壌となるのだと信じて。寧音のまんまえから春のあらしが吹いてきて、彼女はなにかを思い出しそうなくらい喜びます。小さい頃いっしょにいた大型犬が抱きついてきたときみたいな、安心感を感じながら。「あーあ、まるで馬鹿らしいことばっかじゃん! 私はもう二十四歳、これからゆるやかに