どこかの町の高田

@dokokanotakada 詩が好きです。

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抜錨

私の声を聞いてください。私の声を聞いてください。私はきらきら町に住んでいる歌と詩が好きな18歳です。名前は高畑彩です。友達からは綾鷹と呼ばれています。私の声を聞いてください、私の声を聞いてください。私は初めてきらきら町商店街で路上ライブをします。何かが変われると思っています。私はあたらしい倫理を探し出さなければならないのですから。教室は嫌いです。嫌いでした。大学には滑り止めで合格しました。学部は親が言ったところを選びました。私は自分の体からあふれる音楽を否定できない。ランボオ

    • 神さまのために

         神さまのために うつくしい天使は夏の間だけ街に舞い降りて かなしみを背負ったひとに祝福を授けるのです ワンピースを着た若い天使は 生まれたときの その前のことを考えているのです。 心が貧しいことは、いいこと? 埋まらないココロや、食べても食べても満たされないお腹を 抱えながら生きることは、いいこと? 天使さま、子供にも馬鹿にされることは、いいこと? 裏切られたココロは、どこに行けばいい? うつくしい天使は夏の間だけ街に舞い降りて かなしい嘘をつかざるを得なかった微笑みのひとに 安息を授けるのです ワンピースを着た若い天使は 「あなたが生まれたときの その前のことを考えているのですよ そうです、人はひかりながら生まれ ひかりながら死んでいくんです これはナイショの話ですよ あなただけに教えるのですよ 詐欺師じゃないですよ わかってくれるかなあ、、、どうも嘘は苦手だ」 心が貧しいことは いいこと? 埋まらないココロや 傷つけても傷つけても足りない自身を 撫でながら生きることは いいこと? 天使さま、私は生きていくのでしょうが 生きていくことのイの字もわからないのです 望んでいることの九割は叶わないのです あなたの羽が、私には妬ましい うつくしい天使は、すこし困ったように舌打ちします そしてもう一度、セールストークを繰り返そうか迷っています 天使は何を 私に売りたいのでしょう それが安息や 祝福であるのなら 天国色の領収書を、私にください。

      • 盾・剣・薬・毒・夏

        さて、なにから書き始めればいいのでしょうか。今は初夏。強くなり始めた日射しが、あらゆるものを彩度高く染め上げています。風は花の香りを含み、海は鼓動のように浪を高く打ったのです。 ことば、というものについて考えます。ことばは自身や自身の大切な人を守るための盾として用いられることもある一方、自身や他者を傷つけるためのナイフとして用いられることもある。とはよく言ったものですが、さて、詩の言葉とはどちらに属するでしょうか。 まあ、どちらもでしょう。盾や、薬草として用いることもあれ

        • 詩 / 浜辺(マーク2)

          望み遥けき初夏の浜辺に わたしは一つの思想を思い出そうとしていた この詩の主人公は人類です わたしは人類の最新版のひとりです。 土地訛り、トチナマリ、わたしはけったいな言葉で話し出そうとしている あほらしいこと言わんでええねん、ウツクシイことばっか喋ってようや 言葉商いしとりますさかい、掬い出さなあかん、人生を 運命を。ウチは祭りが好きや、祭りだけを信じとります よいどれ船の行く先はどこや!? どっこいどっこいゆらりゆれて オーダー違いの酒ばっか飲んで、愉快

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        • きらきら町のものがたり
          18本
        • 読書日記
          9本
        • 5本

        記事

          詩 / 賭け

          せや、あんた、賭けをしようや いまから夏になるやろう、花が咲くやろう その花を愛や誠というものに変えられたものが、勝ちや。 炎天下、お陽さんはえらい過酷な温度で、人を照らすやろう 沸き立つ血が、汗が、俺たちにあたらしい愛の形を見せるやろう  (そうか? あたらしい愛とはなんや?) ヒマワリひとつ、旗や棍棒のように持って 天使に向かって振り下ろす 花弁が散って散ってきれいやろうなあ! 天使は顔を覆って、笑いながら逃げるやろ? 天と地がサカサマになったみたいな、初夏のひか

          初夏と海と詩と中原に関する雑記

          例えば、好きな作家について書こうとすると、上手くいかない、というより何も浮かばない、ということがあると思います。はて、と頭を振ってみても何かが出てくる予感がない。しかし、その作家について感じていることは、ある。むしろそれが大きすぎるがゆえに、文章としてあらわすことができないというのが実情ではないでしょうか。 初夏となりました。いや、最近の暑いこと暑いこと、参ってしまいます。このようなときには海に行きたいと、思い立ちます。海というのはひとつの人格であるように思います。人格であ

          初夏と海と詩と中原に関する雑記

          詩 / 予言

          ふるえそうな体で以って あたらしい思想を生み出そうとするわたしは せめて生を諦めることはしないと決意して いばらの生い茂った沃野を疾走した。 わたしは 自分の言葉で自分の詩を書こうとして 嘲笑もかまわず生きるつもりでペンを執った 生に対して全面的に肯定的な詩人であろうとして 人間のかなしみを祈りに変えるために生まれてきた。 天使は、すでに顕れていることを信じ 星々の光る月のない夜や 浪のようにゆれる稲穂や 春の光に包まれた町や にんげんのあたたかな心などを

          詩 / ラブ・ソング

          忘れてしまうのでしょう? あなたが生きていたことも 初夏 ガキのように大声で歌い エレキギターを掻き鳴らした夜や 血の傾くのにまかせて まぐわったこと あなたが 生きていたことを。 忘れてしまうのでしょう? 私が生きていたことも 初夏 全霊を賭けて詩を書いた 死者とも繋がれると信じ切って 夜は降霊の時間だった 血の傾くのにまかせてあなたを愛した わたしが 生きていたことを 良いロックからは 宇宙のかおりがすると言って ひんやりとした農道に 飛び出してい

          詩 / ラブ・ソング

          詩 / 神さまのために

          うつくしい天使は夏の間だけ街に舞い降りて かなしみを背負ったひとに祝福を授けるのです ワンピースを着た若い天使は 生まれたときの その前のことを考えているのです。 心が貧しいことは、いいこと? 埋まらないココロや、食べても食べても満たされないお腹を 抱えながら生きることは、いいこと? 天使さま、子供にも馬鹿にされることは、いいこと? 裏切られたココロは、どこに行けばいい? うつくしい天使は夏の間だけ街に舞い降りて かなしい嘘をつかざるを得なかった微笑みのひ

          詩 / 神さまのために

          ラブ・アンド・クリティシズム

          夏が来た。海の音はいっさいの否定を打ち消す。私は愛や、誠実という言葉の意味をかんがえながら、それでいてよこしまな考えにもふけってしまう。ニヤリ、と笑ってみる、トンビの声が高く聴こえる。 遠くでは世音香が波の近くで跳ねてあそんでいる。飛沫のように散っていく波、笑う世音香、彼女は気が付いているだろうか、すでに彼女は人ではない、鹿のように跳ねまわり、天使のように笑う彼女は。 すべてがみな静止した映画のように見えて、その美しさにくらっと来てしまう。人間はかくもうつくしくくるえるの

          ラブ・アンド・クリティシズム

          都美子と梨花

          目に映る景色は、百億の名画にも勝るぜ。都美子はワンカップ片手にもう出来上がっています。梅雨に差し掛かるきらきら町の河川敷は、思うままの光をみせて、ほんとうに美しかったのです。 「なあ、魔法少女ちゃんもそう思うでしょ!? どんより雲も銀幕だと思えば美しいなあ!」 「やめてください、酔っ払い。私、こんなことに付き合ってる場合じゃないんですけど」 「ええ!? いいじゃんいいじゃん、世にも珍しい現代の巫女からのオサソイだよ?」 都美子は魔法少女梨花にウザがらみをしていました。

          批評絶頂感

          明らかな祈りせめて歌になるまで。美香は今日もオヒメサマごっこを続けている。授業で教科書を男子と共有している。美しいものは夢……、ならば生殖は悪? 俺は笹原っていうんだ、男で、大学生で、部活の所属はなし、そんでもって高校生の時に買ったレスポールを後生大事にもっている。尊敬するのは小林秀雄、池田晶子、懐疑しているのは若松英輔。俺は、あたらしい生存の倫理を探している。 明らかな祈りせめて歌になるまで。美香、俺はお前を批評してやろうと思ってるんだよ。お前の祈りや、前世に持っていた

          約束

          失った衛星を探して二十四年、私はどうやらキラワレ者らしい。ということだけが分かった。捨てられてばっかりの人生だ、サヨナラすら言わせてもらいなんてね。口が悪いこと、小手先で隠してたら皮肉屋になっちゃった! 馬鹿らし、虚しいなあ。 失った衛星を探して二十五年、失った衛星ってなに? 分からないものばかり追いかけてたらバカになっちゃうよ? (うつくしいという言葉を禁句にしようよ)どこかでカラスの群れが死んで、シャワーみたいに降ってくる。 言えない、言えないことばかりだから、いつか

          世音香

          しん、と静まった朝に 海は潮を寄せていた。 わたしの舞が永遠に連なると信じて おわらないうたの断片を歌おうと咽にちからを込めた。 (らー……) わたしは力が抜けてしまう。現世からかろやかにはなれ わたしは前世のともだちに会いに行こうとしている 腕をゆるやかに伸ばし、腕はひかれみちびかれ わたしはついにきれいに、はっきょうする。 しん、と静まった朝に 海は春を撫でていった。 わたしは快い感覚につつまれたと思ったら 急に涙があふれだしてしまう。 (これは

          芹川と輝波

          輝波さん、俺は世界に子種を落とそうと思ってる。むろんあなたにも、風にも、木々にも、雨にも、雪にも、万葉集に描かれたすべての自然物にも。そして最後の一人に出会うまで、うつくしい女すべてに。俺はもうさみしくない、何編言ったってさびしくないんだ。本当だよ。 夏が来る。夏が来ると芹川は会いたくなる異性がいる。それはきらきら海浜公園の海だ。春の終わり頃の日に、始めて人気のない海に浸った。抱き寄せられて、射精のように気持ちよかった。それから輝波海とはずっと仲良しだった。春が終わるたびに

          笹原秀雄の現代批評

          言葉にならないくるしみが、笹原を覆いました。なぜ、俺は俺でしかないのか、なぜ、俺は俺の人生しか歩めないのか。笹原は不思議で仕方がなかったし、つよい憤りすら感じていたのです。 笹原は午前2時の人通りも車通りも少なくなった道路で踊る。ゆるやかに身体をひらき、まわし、ときに低く高く唄いました。(俺が、俺がひとつの舞となれば、俺がもはや個人というものから抜け出してしまえば、俺が、他人の心をこのからだにそそいでしまえば、俺はすこしはマシになれるだろ?) なれるだろうか、笹原は懐疑す

          笹原秀雄の現代批評