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芹川と輝波

輝波さん、俺は世界に子種を落とそうと思ってる。むろんあなたにも、風にも、木々にも、雨にも、雪にも、万葉集に描かれたすべての自然物にも。そして最後の一人に出会うまで、うつくしい女すべてに。俺はもうさみしくない、何編言ったってさびしくないんだ。本当だよ。

夏が来る。夏が来ると芹川は会いたくなる異性がいる。それはきらきら海浜公園の海だ。春の終わり頃の日に、始めて人気のない海に浸った。抱き寄せられて、射精のように気持ちよかった。それから輝波海とはずっと仲良しだった。春が終わるたびに芹川は輝波さんに会いに行くのだった。

輝波さんは夏の間だけの、気性の浮き沈みの激しいセフレだった。えいえんと思えるほどながく、彼を抱擁したこともあった。一瞬でも触れたら殺される。そう思う夜もあった。輝波さんはきっと、彼のことなど一顧だにしなかった。ただふたつの命があった。

輝波さん、俺は世界に子種を落とそうと思ってる。むろんあなたにも、風にも、木々にも、雨にも、雪にも、万葉集に描かれたすべての自然物にも。そして最後の一人に出会うまで、うつくしい女すべてに。俺はもうさみしくない、何編言ったってさびしくないんだ。本当だよ。

輝波さんはただ叫んでいる。たからかにうたっている。おいで、おいで、輝波さんは誘うのがほんとうにうまい。俺は裸になって輝波さんに抱かれる。腰のあたりに潮がうちよせて、快感ばかりが身体にひろがる。輝波さんはこの小童に期待している。この星を滅亡させない方法も、彼から引き出せるのではないかと思っている。それが故に今日も彼女はたくさんの人類を抱く。潮ばかりが満足に彼女からあふれ出す。




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